Tue 120717 伊勢で豪華な講演会もええじゃないか 駅ホームでサイン会もええじゃないか | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 120717 伊勢で豪華な講演会もええじゃないか 駅ホームでサイン会もええじゃないか

 8月6日、三重県伊勢で講演会。午前10時半博多発の新幹線で名古屋に移動した。焼き肉弁当をハムハムやりながら眺める車窓は、まさに夏真っ盛りであって、なるほど「七月の青嶺まぢかく溶鉱炉」と詠んだ山口誓子どんの気持ちがよく分かる。
 この場合の「溶鉱炉」とは、むしろ太陽そのものことなんじゃないか。そういう議論もあるが、ま、難しい話はヤメにしよう。今のクマどんには「8月の青嶺まぢかく製鉄所」(小倉から八幡方面)であったり、「8月の青嶺まぢかく精油工場(山口県徳山付近)」であったりして、自分でもしばし俳諧師の気分になれる。
 やがて俳諧師クマ蔵の頭上に真っ白い入道雲が湧き上がり、入道雲の真下には不気味なほど暗い一隅が広がった。遠くからでも雷雨の水しぶきが見えるようである。うにゃにゃ、さすが溶鉱炉のような太陽も、激しい夕立に一気に冷やされ、車窓には美しい虹が浮かんだ。
伊勢1
(三重県伊勢で講演会 1)

 こうしてますます俳諧師ぶりを示すクマどんであるが、クマ蔵の場合はむしろ徘徊師といったほうがよくて、猛烈に暑かった一日が終われば、今夜は旨いメシと酒を求めて名古屋の街を徘徊する予定である。
 ただ、問題は「暑かった1日は、まだまだ終わっていない」という事実である。いったん名古屋マリオットホテルにチェックインしたが、これから近鉄電車に乗って1時間半、はるばる伊勢の町まで行って90分の講演をこなしてこなければならない。
近鉄
(近鉄特急、賢島ゆき)

 近鉄特急は、いつ見ても古式ゆかしい電車である。「どうしてこの色彩を選んだんだ?」。京都から奈良に向かうときも、名古屋から四日市/津/伊勢志摩方面に向かうときも、この暑苦しいドレッシング色に感嘆する。
 昭和中期の近鉄職員は、こういうドレッシング色がファッショナブルだと信じ、30年も40年も使用する車体を、「どんな反対を押し切ってでも、この色で塗装しよう」と誓い合ったわけである。蝉時雨の降り注ぐ真夏の田園風景の中、疾走する電車がこの色彩であることに、今井君なんかは驚嘆の念を禁じえない。
虹
(東の空に虹が浮かんだ)

 伊勢到着、17時半。緑の稲田に夏の陽が傾きかけて、虹の空はまもなく夕焼けの色に染まった。あちこちに入道雲が出て雷雨の不穏な予感があるが、幸いなことに伊勢市駅前は快晴。この時間になっても気温はまだ35℃である。余りの暑さに駅前も閑散として、お伊勢参りの観光客は、短パン姿の欧米人グループだけである。
伊勢駅前
(伊勢市駅前の風景)

 岩波新書で「おかげまいりとええじゃないか」を読んだのは、高校2年の頃である。著者は藤谷俊雄。京都大学系のヒトである。おお、そんな本を思い出すから、またまた「文Ⅲで田舎の化け物たちと遭遇したかったのぉ」という昨日の後悔が頭をもたげてくるじゃないか。
 しかし、まあええじゃないか。お伊勢まいりで、ええじゃないか。ええじゃないか、ええじゃないか、ええじゃないか。おかげでな、くるりとな、お伊勢参りで、ええじゃないか。せっかく伊勢にきたんだ。人生の後悔より、今日を目一杯楽しめば、それで十分ええじゃないか。
 立っているだけで汗が吹き出る駅前に、校舎のスタッフと東進スタッフが待っていてくれた。校舎は駅の真ん前。駅前で一番目立つのが東進の校舎で、今日の講演会場は校舎1階のエントランスロビーである。
伊勢2
(三重県伊勢で講演会 2)

 打ち合わせのあと、出していただいたサンドイッチをつまみながら、明日の収録の予習に励む。何と、今夜は講演会のあと速攻で名古屋に帰る。お馴染み「祝勝会」はナシである。なぜ祝勝会ナシかというに、明日15時から吉祥寺スタジオで5時間ほど授業収録があるからである。
 うにゃにゃ、講演会開始前から「祝勝会ナシ」が残念で残念でならない。何しろ今井君としては今日は「おかげまいり」であって「ええじゃないか」であって、「ええじゃないか、ええじゃないか、えじゃないかぁ」の乱舞の気分。でも、予定では21時公開授業終了、21時16分の近鉄特急で名古屋へ。うぉ、超多忙ビジネスマン的なハードスケジュールが組まれている。
 明日の収録は、早稲田大学国際教養学部2012年の問題解説。例の超々長文2問に、日本語要約問題、自由英作文を全て解説し、さらにリスニングの超々難問2問も解説する。解説する講師の予習だって、4~5時間はかかる。これを出張の合間にこなすことになると、やっぱり超々多忙である。
夕焼け
(虹の空は夕焼けに変わった)

 「それなら、もっと前に予習を済ませておけばええじゃないか」と品行方正な先生がたはおっしゃるだろう。先生がたばかりじゃなくて、最近は生徒の中にも品行方正な人が圧倒的に多くなっているから、「プロなんだから、1週間ぐらい前に準備万端整えておけばええじゃないか」とノタマウ人だって現れる。
 しかし諸君、収録授業で一番大切なのは「臨場感」である。あんまり余裕たっぷりの「立て板に水」になってしまうと、NHK教育テレビみたい、おっと間違いEテレみたいになって、試験を間近に控えたピリピリ&バリバリの緊張感を感じなくなってしまう。
 一言で言えば、「眠い」「カッタリー」「チョー、ネミーゼ」な状況に陥りやすいのだ。講師も「たったいま解いてきました」「難問ぞろいでしたね!!」と興奮冷めやらぬ感じを正面に押し出したいのである。ならば「予習は前日」が理想的なのだ。
 しかも今井君の予習は「何を解説しないでサクサク分かりやすく済ませるか」を考える。普通の先生ならおそらく検討しないことまで懸命に考えるから、予習の時間は自ずと長くなる。
講演開始前
(講演会開始前、すでに大盛況だ)

 予習に夢中になっているうちに、いつの間にか講演開始時間がやってきた。驚くなかれ、1階エントランスホールに170名もの生徒が集まって、もう身動きも取れない。
 椅子を確保できなかった生徒たちが、まず2階への階段に並んで講演を眺め、吹き抜けの2階の手すりからも大勢の高校生が身を乗り出して今井君を見おろしている。これはたいへんなシチュエーションである。
 しかし今井君はこういう大盛況が大好き。クマの一挙手一投足が大爆笑を呼ぶんじゃなけりゃ、博多から名古屋、名古屋から伊勢市と5時間もかけて大移動を敢行した甲斐がないじゃないか。
態度の悪いクマさん
(態度の悪い今井君)

 エントランスホールはガラス張りになっているので、公開授業の様子は外からも丸見えである。こりゃ最高だ。駅前を歩く一般のヒトビトも、自然に足をこちらに向け、ガラスの向こうから今井君の熱演に見入っている。思わず生徒たちを忘れ、外に向かってパフォーマンスを始めたくなってしまうところが、まさに動物園のクマさんたちとソックリである。
 「30秒に1回の爆笑」という驚異的なペースを保ったまま、21時ピッタリで終了。今日の今井君には、「エントランスからそのまま鞄をもって駅に向かう」という珍しいフィナーレ付だ。「いったん控え室に戻って」ではなくて、いきなり駅に向かうのである。
 生徒たちはガラスの内側から手を振って見送る。あちこちで校舎の窓が開き、参加できなかった高3生たちが「今井先生、さよーならー」と絶叫する。道ゆくヒトビトが驚いて立ち止まり、「なに、なに?」「今日、何かあったの?」「あれって、誰? 有名人?」と囁きあう。
切符
(伊勢⇔名古屋の特急券)

 伊勢市の駅で15分間、名古屋行きの近鉄特急を待つうちに、家路につく生徒たちが今井君に追いついてきた。こうなれば「サインください」「サインください」の洪水になる。たった10分間かそこらのことではあったが、伊勢市駅ホームがサイン会場になって、長蛇の列が出来てしまった。
 乗り込んだ近鉄特急の車内も、ちょっとざわめいた。クマみたいな中年男が乗り込んでくると、外のホームにズラリと並んだ高校生たちが「さよーならー!!」「ばんざーい!!」とみんなで手を振るのである。車内にも同様に「なに、なに?」「今日、何かあったの?」「あれって、誰? 有名人?」の囁きが飛び交った。
お弁当
(豪華お弁当)

 祝勝会はなかったが、伊勢で豪華お弁当をいただいた。今夜は、名古屋マリオットのお部屋で大人しく、お弁当をおサカナに1人で祝勝会。こういうしっとりした世界もまた、決して悪いものではない。

1E(Cd) George Duke:COOL
2E(Cd) Joe Sample:RAINBOW SEEKER
3E(Cd) Joe Sample & Lalah Hathaway:THE SONG LIVES ON
4E(Cd) Samantha Mumba:GOTTA TELL YOU
5E(Cd) Marc Antoine:MADRID
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