Mon 120716 福岡で講演会 定額タクシー 文科Ⅲ類で化け物たちと遭遇したかった | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 120716 福岡で講演会 定額タクシー 文科Ⅲ類で化け物たちと遭遇したかった

 8月5日、福岡で講演会。朝9時に代々木上原を出て、11時の飛行機に乗った。
 マコトに贅沢な話であるが、代々木上原から羽田空港までは「定額タクシー」のお世話になる。2時間前に予約すれば、渋谷区から羽田空港まで6000円。これに高速代が加算され、6800円で羽田まで連れて行ってもらえる。
 定額ではあるが、タクシーは一応メーターを回しながら走る。レインボーブリッジをちょっと過ぎたあたりでメーターは6000円を超え、羽田空港第2ターミナル到着時のメーター表示は9500円程度である。
 それでも支払う金額は6800円。「定額で予約」をしただけで3000円近い値引きをしてもらえる計算であって、これはなかなかお得感がある。運転手さんには毎回「お得ですね」「スミマセンね」「申し訳ありませんね」とヒトコト言ってからタクシーを降りる。
福岡1
(福岡で講演会)

 もちろん、新宿からリムジンバスに乗れば1200円で済む。地下鉄→山手線→モノレールと地道に乗り継げば、約800円で羽田空港だ。それに比べればホントにホントに贅沢な移動だけれども、諸君、この猛暑の夏だけは許してくれたまえ。
 特にクマどんは「講演はスーツで」がポリシー。駿台講師時代、超大御所の奥井潔先生に
「人前にスーツ以外で出て行くのは3流である!!」
「人前で話す時にスーツを着るのは最低限のエチケットなのである!!」
「どんなに暑くても上着を脱いではならないのである!!」
と、大正時代独特の「である」調連発で厳しくお説教された。だから、どんなに暑くてもスーツ。もちろんネクタイを緩めたりするのは、3流であり、4流である。
福岡2
(福岡での講演会 みんなよく笑っておるね 1)

 こういうガンコな大正的発想だから、8月上旬の猛暑の中、弱冷房の小田急線や山手線に乗ったりすれば、おぞましい汗みどろになることは必定だ。ワイシャツは汗みどろ、下着のシャツも汗みどろ。ネクタイもビショビショで、結び目が解けないほど。こりゃ、あまりにおぞましいじゃないか。
 何としてでも節電&節電の世の中に、こんなガンコなオヤジが棲息しているのは迷惑な話かもしれないが、今日だって昨日だって、東京電力管内では消費電力予測は最大82%となっている。何だ、ケッコ余裕あるじゃないか。
 こういうわけで、今井君はチャンと自腹で定額タクシーに乗り、定額だから3000円も自腹負担が減って、気持ちよく飛行機に乗り継いでいく。空港で1時間も余裕があって、ラウンジでブログ記事を書き、時間の余裕がありすぎてついついA4版3枚書きまくり、「文章が長過ぎて、とてもオレには読めねえ」という読者に迷惑をかける。
福岡3
(福岡での講演会 みんなよく笑っておるね 2)

 福岡着、13時。お昼の時間帯のプレミアムクラスだから、お弁当が出る。お酒なしでお弁当は若干つらいけれども、講演会前ならもちろんそれもやむを得ない。ダイエット中でもあり、米のメシはちょっと遠慮。豪華なオカズをじっくり咀嚼して骨の髄まで味わってあげる。オカズちゃんたちも、大急ぎで飲み込まれてしまうんじゃ、悲しすぎるだろう。
 14時、ANAクラウンプラザホテルにチェックイン。東進講師の皆さんは余りにも忙しいので、正式名称「ANAクラウンプラザホテル」をなかなか覚えられないようである。みんな「クラウンホテル」または「ANAクラウン」で済ましてしまう。
 かく言う今井君は大正的ガンコ一徹だから、今でも「全日空ホテル」と呼ぶ。タクシーの運転手さんにも「全日空ホテル」と告げる。「ANAホテル」と言うと、まず確実に「は?」と聞き返され、「は、APAホテルっすか?」とゾンザイな口調で尋ねられる。「全日空ホテル」なら、「かしこまりました」という丁重な答えが返ってくるのである。
福岡4
(福岡でも、盛り上がって語りに語る)

 福岡での講演会、18時半開始、20時終了。出席者130名。会場は「ももちホール」。「百道」と書いて「ももち」と発音する、マコトに九州らしい地名である。直前にザアッと夕立があったけれども、何とか開始1時間前には上がってくれた。
 昨年も同じ時期にこの場所で講演をした。今日は昨年の出席者も少なからず来てくれている。話が昨年と完全にかぶると申し訳ないから、滅多にしない話もたくさん散りばめ、「60秒に1回の爆笑」という今井スタンダードも確保できた。大成功である。
肉の勉強屋
(福岡、「肉の勉強屋」)

 終了後、会場近くの焼き肉屋で祝勝会。お肉屋さん「肉の勉強屋」が経営するお店である。「勉強屋」という看板を見ると余り高級感を感じないが、中は完全個室の高級焼肉店であって、稀少部位を含むたっぷりの肉を七輪の炭火で焼いて食べる。5人前とはとても信じられないほどの量が出てきて、肉食系のクマ蔵も度肝を抜かれるほどである。
 格闘技、特に打撃系が大好きという女性職員も参加。さすがに格闘技系であって、お肉は大好きの様子。古代ローマ帝国の歴史について話すうちに、酒はビアから焼酎に変わり、目の前の肉の脂にも酔って、何だかクラクラするうちに「昔ボクは文科Ⅲ類に行きたかったんですよ」という打ち明け話になった。
 「東京大学文科Ⅲ類にはどんなにたくさん化け物がいるか」「自分が化け物だと確信する化け物は、どれほど文科Ⅰ類ではなくⅢ類を目指すべきか」「理科系の化け物は理Ⅰでしょう。医者になりたくないヒトが理Ⅲに入るのはおかしいと思いますよ」など、話は予期せぬ方向に向かっていく。
お弁当
(翌朝、新幹線の中でも焼き肉弁当を平らげた)

 高校生時代の今井君はどうしても文科Ⅲ類に入りたくて、「文科Ⅰ類以外、絶対に受験させない」という両親と連日連夜バトルを繰り返した経験がある。「文Ⅲとか理Ⅰとか、そういう学部を出ても就職は全くないぞ」というのが両親の言い分。「就職のために大学に行くんじゃない」が若きクマ君の言い分。親子で真っ向から対立して、この解決は東大の数学の問題より難しかった。
 「何としてでも国家公務員か国鉄職員になってほしい」。両親の思いは、分からないでもない。しかし夢と進路を混同し、進路なり就職なりのために夢を後回しにする結果になるのは、若きクマ蔵としてどうしてもイヤでござる。
 文Ⅲで全国から集まってきた化け物たちと交流するのが、当時の今井君の夢の第一歩。300名だか400名だか、ほぼ全員「そんなところに行っても就職はないぞ!!」と絶叫する親を口説き落とし、教師や友人を論破し、就職や進路より化け物との出会いを求めてやってくる学生ばかりなのだ。そりゃ学部4年間、さぞかし面白いだろう。
お弁当中身
(焼き肉弁当、その中身)

 高校生の今井君が理解しがたいと思ったのは、17歳や18歳で「国家公務員になろう」と決意するヒトビトの心の内である。
「何を求めているんだ? 安定した人生? 立身出世? わずか17歳にして、どうして法律に関心を持ったの? 民法や刑事訴訟法や労働法の条文を通読したことでもあるの? 行政法の初歩でも学んだの?」
 法律に対して、若干の憧れがないこともなかった。三島由紀夫が東大法学部卒で、刑事訴訟法の体系を「どんな芸術より美しい」と形容したことは、当時の高校生の間では有名。「法律が、そんなに美しいものかねえ?」といぶかりつつ、「三島由紀夫に楯突くとは、言語道断」という空気は→「法律に憧れないと、アホに見えるかも」と、要するにビクビクしたのである。
徳山
(山口県徳山付近の車窓。工場萌えになる一瞬である)

 あの頃のボクチンにとって、「文科Ⅱ類」という選択はもっと不思議だった。当時の経済学部って、マルクス経済学が花盛りだったころである。「ソ連こそユートピア」とまだ臆面もなく信じていらっしゃる教授もたくさんいらっしゃった。
 今井君の周囲では、そろそろ労働組合運動が破綻しはじめ、「スト権スト」という概念矛盾の嵐が吹き荒れ、「どうもマルクス主義は終わりらしい」とウスウス皆が感じはじめていた時代である。
 ま、むしろその分、文Ⅱにも化け物が集まりそうな気配は漂っていた。「文Ⅱでマルクスを、経済学ではなく社会学または宗教学として、むしろオカルトとしてやろうじゃないか」というなら、文Ⅲでも文Ⅱでも同じような化け物は集まったはずである。
入道雲
(夏らしい入道雲。関ヶ原付近の車窓から)

 翌8月6日、昨夜のお酒はしっかり醒めたが、頭の中は「あーあ、やっぱり文Ⅲに行くんだった」という後悔が渦巻いていた。文Ⅲをあきらめてから、すでに数百年が経過しているのにである。太古の昔の苦い後悔は、消えることがないのだ。諸君、後悔のない受験勉強に励みたまえ。そしてくれぐれも、夢と進路と、夢と就職とを混同しないように気をつけたまえ。
 クマ蔵は博多から名古屋へ新幹線で移動する。6日夕方から三重県伊勢で講演会があるのだ。名古屋への移動は飛行機でもいいが、中部国際空港から名古屋までの移動が面倒。そんなところでオロオロしているヒマがあったら、新幹線1本で気楽に弁当でも食べていったほうがいい。
 博多で、焼き肉弁当を購入。昨夜の祝勝会であんなに肉を食べたのに、クマどんは飽きもせずまたまた焼き肉にかじりつく。新幹線の窓から真っ白い入道雲を眺め、「おお、夏休み真っ盛りでござるね」と実感。どこの予備校でも、いまや夏期講習たけなわの頃である。

1E(Cd) John Coltrane:IMPRESSION
2E(Cd) John Coltrane:SUN SHIP
3E(Cd) John Coltrane:JUPITER VARIATION
4E(Cd) John Coltrane:AFRICA/BRASS
5E(Cd) Bill Evans:GETTING SENTIMENTAL
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