Thu 120712 ついに1499回 河口湖合宿を締めくくる 祝杯とコンサートと肉ワシワシ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 120712 ついに1499回 河口湖合宿を締めくくる 祝杯とコンサートと肉ワシワシ

 こうして、河口湖合宿最終日の朝がくる。昔の生徒たちは、朝7時まで完全徹夜をやりたがったし、今井君も朝7時まで教室に残って生徒に付きあった。

「どうせここまで来たら、1時間とか1時間半とか中途半端に眠るよりも、完全徹夜のほうがまだ楽だ」。生徒もそう考えるし、ホンの4~5年前までは、若いスタッフも「完全徹夜しろ」「徹夜で最後までやり抜くんだ」と生徒を煽ったものである。

 今井君が初めて合宿に参加した8年前には、生徒の半分ほどが朝5時の段階で部屋に眠りに戻ったことに、悔し涙を流すスタッフがいた。「オレたちが燃焼しきれなかったせいだ」と彼は唇を噛んだ。「今年は、失敗だった」と、彼は断言するのだった。

 クラス閉講式の挨拶でも、彼は「オレはぁ、悔しいんだよぉ」と呻いた。「あと少しで最後までやりきれたのに、5時で寝にいくヤツが半分もいたじゃないか」「なんで、最後までやりきれなかったんだ?」というのである。たった8年前を振り返っても、この合宿は勢い任せのもっと泥臭い世界だったのだ。

 クマ蔵は「ワッショーイ!!」も覚えている。どうしても完全な徹夜を貫きたくて、班別に集まって「ワッショーイ!!」「ワッショーイ!!」と掛け声をかけるのである。6年前だったが、さすがに今井君は嫌悪感を催し、「そういうバカなことはヤメるべきだ」とスタッフにも生徒にもハッキリ言ったものである。
1期クラス閉講式
(第1期、クラス閉講式)

 諸君。最終日の朝、1時間だけの短い睡眠をとる努力をするのも、実際には合宿の仕上げとしてたいへん重要な訓練なのだ。窓には青い朝の富士、富士を映す美しい河口湖。周囲は、暗い地中から這い出てきたばかりの、若々しいセミたちの声が溢れている。

 その爽やかな蝉時雨を耳にしながら、ふと気を失うように深い眠りに落ち、眠りの中でも例文220を音読する夢をみる。「英語で夢をみる」という初めての経験だ。生まれて初めて英語で夢をみて、しかも夢は例文のレベルに留まらず、世界のどこかで英語を駆使して活躍する夢だったりすることもある。

 1時間ちょっとの睡眠は、「ちょっと気を失っていた」という程度のものかもしれない。しかし目覚めは予想以上に爽快であって、「さて、では修了判定テストにチャレンジしますかね」と、当面の目標に向かって全力を尽くす心の準備ができている。
クラス閉講式1
(第2期、クラス閉講式 1)

 何度も同じことを繰り返すようだが、冷静に考えれば「合宿修了判定テスト」など、余りにもクダラン、余りにも些細な目標である。「そんなもんで好成績とったって、何にもならないじゃないか」と言い放つこともできる。「テストの点数なんかで、オレたちは燃えないぜ」である。

 しかし「じゃ、いったいキミは何に燃えるんだ?」である。目の前にある全てのハードルを1個1個クリアする気のない者が、「もっと大きな目標を」などと発言するのは、オトナの目から見れば、ただの噴飯ものにすぎない。

 1打席1打席を大切に戦って、10年も15年も地道にヒットを積み重ねる闘志がなければ、2000本安打は決して達成できない。イチローどんは「他人の記録を破るのは8割か9割の力で出来るが、自分の記録を破るには10割以上の力が必要」と喝破した。達人のおっしゃることはさすがである。
富士最終日
(最終日の富士)

 修了判定テストで満点をとるのは、きわめて困難である。初見の長文読解問題が出題され、大量の文法問題と語法問題(Mac君の変換は「ご訪問だい」であるが)も解かなければならず、しかも制限時間は45分。強烈な睡魔に襲われながら、これらに正確に対処するのは容易なことではない。

 しかし諸君、それでも満点をとる猛者(もさ。むかし「もうじゃ」と読んだ生徒がいたので、念のため)が存在するのである。第2期、「東京医科歯科大が志望です」という男子が、ものの見事に200点満点を獲得した。しかも、表彰式の場でも非常に謙虚。精神年齢ではすでに今井クマ蔵を上回っているかもしれない。

 確かに医師という仕事は、どんなに疲労していても、どんな悪条件のモトでも、常に満点を要求される仕事である。少なくとも患者は、目の前の医師が間違いを犯すとは予測していない。ケアレスミスの可能性は常にゼロであることが前提だ。

 5日間の睡眠時間が合計21時間、前日の睡眠は1時間。そんな悪条件でも200点満点をとってみせた彼は、医師候補生として、お世辞でなく立派と言ってあげていい。
クラス閉講式2
(第2期、クラス閉講式 2)

 10時、クラス閉講式が始まる。たった4泊5日ではあったけれども、生徒とスタッフの間にはマコトに微笑ましい強烈な信頼関係が生まれていて、講師として遠くから眺めていても羨ましいぐらいである。

 80人を6班に分け、1人のスタッフが12~13名の指導に努めた5日間である。20代のスタッフが1人ずつ前に立って挨拶、心のたけを語りだすと、担当してもらった生徒たちの多くが涙をこらえきれない。

 スタッフ1人1人を「隊員」と呼び、クラス全体を統括する責任者を「隊長」と呼ぶ。なかなかキュートな呼び方である。隊員の挨拶で号泣した生徒たちは、最後に隊長の挨拶が始まると、もう涙をどうすることもできない。隊長だって30代になるかならぬかの若者だ。この場に学園ドラマが生まれないはずはない。

 一応、講師として今井君も挨拶に立つのだが、これは「蛇足」の見本のようなものである。せっかく感動が頂点に達しているのに、クマみたいな講師がノッソリ余計な話で笑わせて、感動をぬるま湯で薄めてしまうのは、ホントに申し訳ない。

 ただし、「帰りのバスの中でも音読」「しかも、テキストを見ないで音読」「今日中に校舎に立ち寄って、校舎スタッフや後輩の生徒の前でも音読」「しかも、見ないで音読」というアドバイスだけは、欠かすことができない。昔から小学校の先生が口を酸っぱくして「バスを降りるまでが遠足です」と言っていたのと、全く同じことである。
閉講式
(全体閉講式)

 12時半からの全体閉講式は、締めくくりのセレモニーに過ぎない。クラス別の閉講式で、ホンモノの締めくくりは全て終わっているのである。合宿参加者約2500名のうち、ホテル美富士園に割りふられた250名が、懐かしい大広間に集まり、スタッフ代表と講師たちの挨拶を聞くのである。

 講師としては、ここは「短ければ短いほどいい」。今井君の挨拶は15秒。他の先生がたも1人15秒。講師4名で1分かかるかかからないかぐらいである。

 クマ蔵がステージにあがると、クマ蔵が担当した80名の生徒たちが一斉に立ち上がる。250名のうち80名が立ち上がるのだから、他のクラスの生徒たちは「何だ? 何だ? 何が始まるんだ?」と驚いてしまう。

 しかしこれは前もってクマ蔵がクラス全員に言い含めておいたこと。「たとえたった5日でも、世話になった教師が壇上に上がったら、生徒もダラしなく座ってないで、全員立ち上がって敬意を示すものだ」「その姿勢を全生徒に示す、模範になってくれ」ということである。
バスで帰っていく
(地域ごとに、バスで帰っていく)

 ステージ上の今井君に声を合わせ、250名全員で雄叫びを上げる。雄叫びは、心の底から&腹の底からであって、手加減は一切許さない。最初が「タアーッ!!!!!」であり、それに続いて「ポンッ!!」である。

 クマ蔵が「タアアアァーーーッ!!」、250人が「タアアアァーーーッ!!」。続いてクマ蔵が「ポンッッッッッッ!!」、250名が「ポンッッッッッッ!!」。その声は河口湖を震撼させ、セミたちも一瞬静まり返る迫力である。富士山でさえ、思わず苦笑を浮かべるほどであるに違いない。

 これで、年に1度の合宿はすべて完了である。生徒はバスに分乗して地元に帰る。今井君の生徒たちは、バスの中でも「テキストを見ないで音読」を続けることになっているが、それはあくまでタテマエ。心地よいバスの揺れの中で、猛烈な睡魔が襲ってくれば、この5日間の疲労と「ついにやり遂げた」という安堵感がどっと押し寄せて、あっという間に気を失うに決まっている。
ふじやまビール
(河口湖駅、「富士山ビール」で一人祝杯をあげる)

 かく言う今井君には、まだやらなければならないことが2つ残っている。まず河口湖駅の売店で「富士山ビール」1杯500円をグイッとやって、ひとりで10日分の祝杯をあげる。これもこの5~6年変わることのない、一種のセレモニーである。

 もう1つ、帰京してすぐにコンサートを聴きにいく。今年はサントリーホール。ブラームスとR. シュトラウス「アルプス交響曲」を聴いて、合宿の締めくくりとする。「帰っても、気を抜くなよ」と、あれほどしつこくダメを押した手前、自分自身「帰ったから、ドッと気を抜く」などというダラしない行動をとるわけにはいかない。
サントリーホール
(サントリーホールのチケット)

 サントリーホールの帰り、ついでだから西麻布「トラジ」に立ち寄って、「ヒレカク、3人前」をやって帰る。「は? 3人前ですか?」と店員さんは度肝を抜かれるが、間違いなく3人前、ペロリと平らげて帰る。

 3人前なら、まだマトモなのだ。つい1ヶ月前には「3人前+3人前+1人前」=7人前を平らげて悠然と帰った。合宿明けだから3人前で遠慮しておくが、脂身の少ない肉肉したこの肉がクマ蔵の大好物。ワシワシ噛んで、ワシワシ飲み下し、「近いうちまた来るから、覚悟しておきな」という勢いで、23時すぎ、ようやく懐かしの代々木上原に帰還した。

1E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES⑤
2E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES⑥
3E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES①
4E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES②
5E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES③
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