Tue 120710 いよいよ合宿最終日 午前5時まで個別学習が続く(カウントダウン3) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 120710 いよいよ合宿最終日 午前5時まで個別学習が続く(カウントダウン3)

 さて、2012年の河口湖合宿も、いよいよ最終段階に入る。最終講「仮定法」の授業の最後には、どの先生もとっておきの感動的な鉄板エピソードを語り、生徒たちは狙い通り感動&感激して、思わず号泣してしまう者も少なくない。

 若くてカッコいい先生が担当したクラスなんかでは、感激の渦は鳴門の渦潮よろしく激しくグルグル渦巻いて「学園ドラマも何のその」な涙&涙の光景が展開される。マコトにマコトに残念なことであるが、今井君はすでにそういう感動のドラマを演じる年齢を過ぎた。穏やかに、ごく平凡に、当たり前に仮定法の話をするだけである。

 カメラマンも教室を訪れる。もちろん東進のカメラマンであって、合宿大詰めの深夜の生徒たちを写真に収め、校内紙やホームページに掲載して、来年の生徒たちの参考にしてもらうわけだ。老練なクマ蔵は、カメラマンとも軽妙なやりとりをして、生徒たちの緊張をほぐしてあげることを忘れない。
クラスで音読1
(深夜の音読 1)

 11時、授業が無事終了する。経験の少ない講師だと、ここでまだ教室に残って感動の続きを味わうことに、思わず未練タラタラになってしまうかもしれない。だって、何しろ学園ドラマそこのけの感動だ。これを振り払ってサッサとお部屋に戻ってしまうのは、あまりにももったいないじゃないか。

 しかし、そこはそれ、超ベテランの今井君だ。「あれれ、そんなにあっけなく帰っちゃうの?」と、生徒たちが呆気にとられるぐらいカンタンに帰ってしまう。

「じゃ、がんばってね」
「出来れば全員、朝5時まで教室に残って、個別学習に励んでね」
「スタッフの言うことをよく聞きなさいね。完全に徹夜すると、明朝の修了判定テストに悪い影響があるから、5時には部屋に戻って1時間でもいいから寝るようにね」
「私は、朝4時か4時半ぐらいに教室に来るかもしれません」
「来ないかもしれません」
「4時の教室に今井が顔を出すのは、ただ単に顔を出すために来るのであって、質問を受けたり人生相談を受けにくるのではありません。ここからは、諸君が完全に独立して個別学習に励む時間であって、講師は一切関わりません。スタッフに100%任せます」
クラスで音読2
(深夜の音読 2)

 以上、何だかホントに冷たいようだが、10代の生徒たちと20代のスタッフの成長を促すには、老いたクマとして、この態度が最も相応しい。デレデレ&ベタベタ、いつまでも生徒にくっついているようでは、講師としてまだまだ3流の域を出ない。

 一流の親になるには「子離れ」が必要なのと同じように、講師も成長すると自然にサバサバした「生徒離れ」が出来るようになるものだ。今井君が「教え子」というコトバをつかわないのは、キチンと、かつサバサバと、子離れがしたいからである。
最終日のボトム
(最終日、今井君のボトム。いくらかマトモに戻っている)

 講師が部屋に帰ってしまうと、いよいよ待ちに待った「徹夜の個別学習」が始まる。日付が変わる頃、第11講「仮定法」の確認テスト。それが終われば、午前5時まで約5時間にわたって、延々と個別学習が続く。

 この時間帯は、原則として何をやってもかまわない。ただし、テキストからは絶対に離れてはならない。持参した参考書や問題集を開くのは厳禁であって、ひたすら220の例文を「英文を見ないで、しかも高速で音読できるようになること」が目標である。

 理想を言えば、合宿中に授業で扱った11問の長文問題も「見ないで高速音読」を達成したいところだが、あんまり理想ばかり絶叫していても始まらない。生徒たちは廊下に出て大声で音読に励み、音読に疲れると教室に戻って英文を書きまくる。書いて書いて書きまくって、記憶をさらに強固なものに定着させるのである。

 大昔の今井君は、この時間帯もずっと教室に残って、午前5時まで生徒たちに付き合ってみせたものである。午前5時どころか、午前7時まで教室をうろついて、「5時までなんてケチなこと言うな。せっかく5時までやったなら、7時まで完全に徹夜して大きな達成感を獲得したほうがいい」とか、まあそんな意味の演説もした。

 5~6年前までは、この時間帯に質問も受け付けた。生徒の長い列ができ、場合によっては暖かい談笑の輪が広がったりして、シロートが見れば、教師と生徒の間にいかにも微笑ましい信頼関係が構築されつつあるように見えたかもしれない。
早朝の黒板
(早朝の黒板。スタッフによる諸注意が列挙される)

 しかし、それはあくまで「シロートの目から見たら」である。状況をキチンと理解できている講師としては、まず「談笑なんかしているヒマがあったら、英文を20でも30でも音読できるだろう」であり、「安易に質問して講師の助けを求めるんじゃなくて、自分で考えて自分で答えを出す努力をすべきだろう」であって、「今は甘えた質問は厳禁。すべて自分でやり抜く訓練なのだ」である。

 質問の生徒が長い列を作るのは、講師としても嬉しい。生徒たちとじゃれあって談笑の輪に加わるもの、やっぱり講師の幸せである。しかしでござるね、ここは講師の「子離れ」の訓練なのだ。すべてスタッフに任せ、生徒たちが講師である自分より遥かにスタッフになついていく様子を遠くから寂しく眺めながら、心の中で「よしよし、頑張れよ」とエールを送るのが正しい態度である。
最終日の富士
(第1期、最終日早朝の富士)

 スタッフも、徹底的に工夫を凝らす。ただ単に「個別学習です」「マジメに自習してください」と言い放つだけでは、普通の高校生なら1時間も続かない。今井君の高校生時代なんか、忍耐力の「に」の字もなかったし、集中力の「しゅ」の字もなかったから、もしも「集中しろ!! 朝までやり抜くんだ!!」とか怒鳴られたとしたら、一人でサッサと部屋に戻ったに違いない。

 もちろん「言われた通り、集中して睡眠に励みました」「朝まで、睡眠をやり抜きました」など、言ってはいけない小学生レベルの屁理屈がオマケでついてくる。今井君は、ホントにダメなコドモであった。だからこそ分かるのだが、高校生80名を5時間テキストに集中させるには、次から次へと新手の工夫を繰り出して、意地でも飽きさせてはならないのだ。

 クラス全員で立って音読。ついでだから、椅子の上に立って音読。ネイティブ録音の音声を聞かせて、ディクテーション方式。自分たちで作成した小テストや、明朝行われる修了判定テストの模擬試験。確認テストで間違いの多かった問題を切り貼りしたプリントで、またまた小テスト。

 30分に1回ぐらいの頻度でこれらの工夫を繰り出せば、ほぼ全員が「午前5時まで個別学習」を何とか達成する。1人か2人が体調を崩し、やむを得ず部屋に帰ってカラダを休めることになるが、部屋に帰らされる時、彼または彼女は例外なく号泣する。「どうしても朝までやりたかった、そのために合宿に参加したのに」と号泣されて、スタッフもまた思わず声が詰まってしまう。
富士山2期
(第2期、最終日早朝の富士)

 それでは、部屋に帰った今井君は、ダラしなく口を開け、ヨダレでも垂らしながら高イビキなんだろうか。もちろん、そんなことは絶対にない。その証拠に、今井君は午前4時半の教室に再びノッソリと姿を現すのである。

 もちろん、質問なんか受けにきたんじゃない。熱い激励や大演説で、生徒たちを泣かせるためにきたのでもない。むしろ、勢いにまかせて午前7時まで完全徹夜しようとする生徒たちに、「ここで1時間だけでも睡眠をとる努力をしなさい」と、なだめにきたのである。

 Go get some sleep。合宿をキチンと締めくくるには、その冷静さが大切。カッカとどこまでも熱くなって、興奮のあまり眠ることもできないのでは、あまり進歩がなかった証拠だ。「冷静に睡眠をとりにいきなさい。ただし私語は厳禁」と諭せばと、生徒たちは見事なほど素直に従うものである。
河口湖
(早朝の河口湖)

 7月下旬の午前5時。彼ら彼女らは粛々と部屋に向かう。起床は6時だから、ホントに睡眠時間は1時間。ホンの4~5年前まで、「1時間でもいから睡眠をとりなさい」と説得するのは至難の技だったが、いまではわざわざ今井君が説得しなくても、若いスタッフが一言そう言っただけで、生徒たちは驚くほど素直に指示に従う。

 粛々と教室を出て行く彼ら彼女らの背中を見ながら、涙もろい今井君の胸は熱くなり、熱い涙が込み上げてくるのを抑えきれない。まだまだ、クマ蔵は未熟なのかもしれない。夜はすでに完全に明けて、湖面には青い富士の姿が映り、山ではおそらく地中から出てきたばかりのセミが盛んに鳴いている。

1E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES⑥
2E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES①
3E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES②
4E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES③
5E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES④
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