Mon 120618 自分の独り言に驚愕 旭川ラーメンの「すがわら」 旭川での大講演会 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 120618 自分の独り言に驚愕 旭川ラーメンの「すがわら」 旭川での大講演会

 昭和の小説の主人公は、よく独り言を言ったものである。「ひとりごちる」という動詞までごく一般的につかわれていて、「ヒロシはひとりごちた」「ヨシヒコはひとりごちた」、小説を読む限りにおいては、クマみたいなヤツも、サトイモみたいなヤツも、そこいら中でブツブツ独り言を言っていたようだ。
 自分に向かって話しかける、または自分に言い聞かせるという形式の独り言も多かった。例えば、手許にある三島由紀夫を一冊開いてみよう。「沈める滝」、ダム建設技術者が主人公である。彼の名前は、城所昇(きどころ・のぼる)。彼なんかは、自分に語りかけるどころか、しばしば自分に向かって説教を始める。
「いいか、城所昇。お前はいま...しようとしているんだぞ」
「あいかわらず駄目だな、お前は。城所昇よ。そもそもお前は…」
この調子で、お説教型の独り言を繰り返す。
旭川1
(7月12日、北海道旭川で大講演会 1)

 してみると、今から半世紀前どころか、ホンの四半世紀前の日本人にとって、独り言というのはごくありふれた行動形式であって、街中で「いいか、今井宏。お前は何だかサトイモに似てきたぞ」と一人呟きながら歩いていても、特に奇異の目で見られることはなかったことになる。
 考えてみれば、21世紀にはその呟きがツイッターなんかに進化したわけで、次々とツイートされる独り言の膨大な分量をみれば、昭和の昔、日本国中が独り言の呟きで騒然としていたのかもしれない。
沈める滝
(三島由紀夫「沈める滝」新潮文庫)

 何故いきなりこんな感慨を書き始めたかと言うに、もちろん理由のないことではない。実は今朝(7月12日)、旭川グランドホテルの部屋でシャワーを浴びながら、今井宏はホントに久しぶりに独り言を呟いていたのだ。独り言の中身は、
「こんなに恵まれてて、ホントにいいのかねえ」
である。静まりかえった部屋にしばらく余韻が残ったぐらいだから、呟きのボリュームは相当大きかったに違いない。おやおや、ゴツいクマ蔵もついつい油断したものであるね。
駅
(旭川駅で 1)

 しかし、思わず独り言を言うぐらいに、昨日の今井君は恵まれていたのである。まずは旭川到着後に偶然入ったラーメン屋「すがわら」。「ちょっとその辺をブラブラしてくるかな」という程度で、ラーメンを食べるかどうかさえ決めていなかったのだが、表通りから閑散とした裏通りに深く入ったところで、この店を発見した。
 諸君も行ってみれば分かるが、予備知識ゼロで歩き回って遭遇できるような、派手な店ではない。事前に「旭川ラーメンで、旨い店はどこ?」で検索し、クチコミやなんかも目一杯読みこみ、「旭川についたら絶対ココ!!」と鼻息が荒くなるほど意気込んで、裏通りを30分も迷い歩いて、まだ見つからない。そのぐらい目立たない店である。
駅で
(旭川駅で 2)

 もし事前に情報をつかんでいったなら、その店構えを見た時に「ええーっ、ホントにこの店なのぉ?」と不安にもなるだろう。「やっぱ、ヤメとく?」「今井宏よ、お前は本心からこの店を選ぼうとしているのか?」のような昭和の独り言が始まったかもしれない。
 しかしとにかく今井君は、看板の陰から香ってくる昭和なダシの香りに矢も盾もたまらなくなった。この20年世の中を席巻した濃厚トンコツスープにはそろそろ飽き飽きしているから、透き通ったカツオダシ、煮干しダシ、ドンブリの底まで見通せるようなスッキリしたラーメンが食べたい。
 濃厚じゃないのに、心の底まで温まる。北海道のヘソに位置する極寒の旭川の人々だからこそ、濃厚より淡麗なスープのほうが身体を芯から温めてくれることを熟知しているのだ。塩、醤油、どちらでも、構わない。この日の今井君は醤油な気分であった。
すがわら
(看板は、意外に派手だった)

 60歳代後半のオジチャンとオバチャンが2人でやっている店である。午後3時、中途半端な時間だったから、お客は他に中年オジサン1人しかいない。明らかにヨソ者のクマがノッソリ入ってきたのに驚いて、中年オジサンもサッサと帰ってしまった。
 午後3時のガラガラのラーメン店で、物静かなオジチャン&オバチャンに見守られながら、透き通ったスープのラーメンをすするのは格別である。塩ラーメンなんか、スープはほとんど白湯のように透明であるらしい。
 「見守られながら」とは言っても、さすがに北海道のヒトであって、あくまで控えめである。「どうだ、旨いだろ?」「旨くて当たり前だ」「これが旨くないヤツはラーメンなんか食う資格がネエんだ」みたいな、乱暴で押し付けがましいところは一切ない。
 こっちを見てはいるが、見ていないフリ。視線が合いそうになると慌てて視線をそらすけれど、しかしクマが黙って旨そうに食べているのが満足な様子。「旨そうに食べますね」と声をかけそうになるが、イザとなるとやっぱり恥ずかしくて言い出せない。そういう雰囲気がたいへん微笑ましい。
チャーシューメン1
(チャーシューメン)

 ラーメンの味については、シロートの今井君が口を出すべきではなさそうだ。札幌の新千歳空港には「ラーメン道場」というものもあって、すでにラーメンは柔道や居合道や空手道みたいな、一種の厳しい修業か修行みたいになっている。
 シロートは、黙って旨そうに食べていればよくて、「背アブラの甘みが絶品!!」「麺にスープがよく絡むゥ♡」みたいなことは、道を究めた達人の皆さんにお任せすることにする。
 しかしハッキリ言えるのは、クマ蔵が「すがわら」のラーメンが大好きだったこと、ラーメンだけではなくて店の雰囲気も大好きだったこと、この店のラーメンは修業や修行とは一切関わりなく、シロートでも誰でもホンノリ暖かく迎えてくれるはずだということである。
 さすがに旭川だから、滅多に来ることはできないが、もしこの店が近所にあったら、今井君は1週間に2回は必ず訪れる。3回かもしれない。4回かもしれない。しかも決して常連ぶらない。
 いや、1杯600円の醤油ラーメンを食べるためだけに旭川を訪れてもいい。そして黙って、一言も言わずにスープまで飲みつくし、すぐに飛行機に乗って東京に戻る。そういう究極的に贅沢な昼飯だって、あっていいはずである。実はクマどんは、実際にそれをやりそうで自分がコワい。
チャーシューメン2
(チャーシューメン。何故か画面にシマシマが入っちゃった)

 あれれ、今井君。旭川での感動は、ラーメン屋だけだったの? 三島由紀夫まで引っ張りだして、「こんなに恵まれていて、いいのかねぇ」の独り言を釈明しておきながら、肝腎の講演会については一言も触れないで終わっちゃうの? それって、ありですか?
 「いいかい、今井宏。よく聞け。そんなことじゃ駄目なんだ。予備校講師として大切なことは、ラーメンへの感動じゃないはずだ。講演会はどうだったのか。それでどう感動したのか。いいか、今井宏。ブレちゃ駄目だ。そこをしっかりさせなくちゃ」であるね。
旭川2
(7月12日、北海道旭川で大講演会 2)

 旭川での講演会、18時半開始、20時終了、出席者290名。1ヶ月前の予定では200名となっていたから、スタッフの皆さんの奮闘努力によって予定から100近く増え、300名に迫る勢いになった。この出席者数もまた「こんなに恵まれていて、いいのかねぇ」という独り言を誘発した原因である。
 講演スタイルはいつもと同じ。笑えば笑うほどヒトは進歩し、進歩するたびにヒトは爆笑する。今井君のモットーは、ラーメンに感動した後でもちっとも変わらない。これだけの人数が爆笑を繰り返すと、進歩の総量は気が遠くなるほどだ。今日もまた「30秒に1回」の爆笑頻度を確保。最高の講演会になった。
 終了後、数人の高校生たちと会話を交わすチャンスがあった。わざわざクマ蔵への手紙を持参した双子の姉妹もいて、そのあまりのソックリぶりに感動。2人とも道内屈指の高校に通い、今井君の授業を毎日大爆笑しながら受講中とのこと。将来が楽しみである。
 「兄が一橋大生です」という理系の弟は、東大志望。これからオーストラリアだったかニュージーランドに短期留学するので、大いに張り切っていた。その友達は「まだ志望が決まっていない」とのことだったが、ま、高校生だ、そんなに急いで志望を決めなくてもいいじゃないか。
旭川3
(7月12日、北海道旭川で大講演会 3)

 さてこの後が、大成功の講演の後には必須の「大祝勝会」である。今井君を含めて総勢18名がした参加した旭川大祝勝会こそ、翌日のバスルームで「こんなに恵まれていて、いいのかねぇ」とクマ蔵が大声で呟いた最大の原因なのだが、今日はその詳細を書くことができない。
 だって、もう合計4枚目に入ってしまった。おお、長すぎる。おお、詳しすぎる。詳細は明日に譲らなければならない。しかし諸君、間違えないでくれたまえ。大祝勝会が「こんなに恵まれていて、いいのかねぇ」を誘発したとしても、それは「旨いものタラフク食った」「高い酒を痛飲した」「ああ、贅沢した」の類いのことではないのだ。
 じゃあ、何? もちろん、熱心な校舎スタッフ諸君との出会いである。出席18名中、オジサマは今井君を含めて6名。残り12名は、旭川医科大学と北海道教育大学の大学生諸君である。彼ら彼女らとの3時間にわたる熱い熱い語り合いについては、明日の記事に詳しく描写したい。明日を楽しみにしてくれたまえ。

1E(Cd) Luther Vandross:SONGS
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5E(Cd) David Sanborn:INSIDE
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