Mon 120521 オジンバラとギャランドゥ 魚貝をむさぼるクマ(スコットランド周遊記14) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 120521 オジンバラとギャランドゥ 魚貝をむさぼるクマ(スコットランド周遊記14)

 というわけで諸君、久しぶりにスコットランド滞在記に戻るが、9月3日午後、今井クマ蔵はとうとうスコットランドに侵入した。ダブリンからアイリッシュ海、リバプールから湖水地方と、ずいぶんと手間取った割には、余りにもカンタンにスコットランドの首都エジンバラを陥落させるに至ったのである。
 「エジンバラ」と言いながら、今井君みたいなオジサンが嬉しそうにニタニタ笑って自分のお腹を指さしていたら、これはもう「オヤジギャグ注意報」発令。注意報などというのは甘いので、オヤジギャグ警報、警戒警報発令、それぐらいの切迫感が必要である。
 いいかね諸君、オヤジが自分の腹を指さしてニヤニヤしつつ「エジンバラ」。その段階で「それは、オジンバラ。オジンの腹で、オジンバラでしょ?」とニコニコorニヤニヤ呆れ返ったように笑ってあげるのが、長く日本経済を支えてきたオジサマたちに対する礼儀である。
魚貝の風景1
(エジンバラ最初の晩飯は、海の幸のプラッター)

 オヤジとかオジンとか、短足とかサトイモとか、そう言ってオジサマたちをバカにするのは若い諸君の特権であって、今井入道もその特権を奪おうとは思わない。かつて遠い太古の昔、今井君にも若い日々があって、オヤジを遠巻きにして笑うことだけに人生の価値を見いだしていた。
 しかしでござる。オヤジなりオジンなりの税金が、経済を支え、財政を支え、したがって政治と地方自治を支えているのだという認識だけは、決して忘れていただきたくない。所得税も住民税も、文句一つ言わないで喜んで払う。自動車税も重量税も、一刻の躊躇もなく支払う。ゴマカシは全くしたことがない。
大聖堂
(エジンバラ大聖堂)

 だからまあそのぶん、せめてオヤジギャグぐらいは相手にしてほしい。エジンバラに到着して、自分のお腹を指さしてニヤニヤすれば「それはオジンバラ。エジンバラとは違うでしょ?」と、イヤそうに顔を歪めて、せめて冷笑ぐらいはしてほしい。スルーするのは、礼儀知らずである。
 ましてや、あと3日で「父の日」である。日本全国「父の日」であり、世界一律で父の日だ。父の日に必要なことは、菅野美穂がサントリー角瓶を掲げて「飲もうか、お父さん?」と笑ってくれることではない。オヤジギャグをスルーしないで、イヤそうでかまわないからクスリと笑ってくれること。またはせめて一言「オヤジぃ、ヤメてくれよぉ」と、相手にしてくれることである。
アダムスミス
(エジンバラ アダム・スミスの像)

 さてと、今井君はこうして無事にオジンバラに到着。今井君のオジンバラには胸毛ならぬ腹毛が生えていて、風呂上がりなどフサフサの腹毛が渦を巻いてなかなかの壮観であるが、まあ想像しないほうが身のためかもしれない。
 しかしでござるね、欧米諸国では「ギャランドゥ」と言って、腹毛は男性の力強さの象徴である。「ヘソ毛」と呼んでもいい。実社会の仕組みを熟知したマコトに頼もしい男性の魅力はギャランドゥにこそ現れると、欧米の人々は感じるのだ。
 今からちょうど30年前の1982年、西城秀樹どんは「悔しいけれどオマエに夢中。ギャランドゥ、ギャランドゥ」と連呼した。作詞:もんたよしのりである。もっとも、以上のギャランドゥ説にはいろいろ異論があるので、あくまで「一説には」ということに過ぎない。
ヒューム
(エジンバラ、ヒュームの像。あらら、ヒュームどんもギャランドゥ自慢なのかね?)

 9月3日、今井君は以上に述べたような「男性の力強さの象徴」→腹毛ないしヘソ毛を撫でながら、昼メシ兼晩メシを食べに、オジンバラの街に出た。午後3時、すでにスコットランドの空は夕暮れの色に変わり、スコットランドオヤジがスカート姿で演奏するバグパイプの音も、たいへん物悲しい。
 エジンバラは、アダム・スミスやヒュームを生んだ知的な街である。イングランドとの確執は長く、イングランドの抑圧を排除し独立を勝ち取ろうとするウィリアム・ウォレスとロバート・ザ・ブルースの活躍は、映画「ブレイブ・ハート」に詳しい。
 V字形の谷をはさんで、谷の北側が18世紀以降の平和な時代に建設された新市街。エジンバラ・ウェイヴァリー駅が谷底にあって、南側がエジンバラ城を中心にした旧市街。ここに名所旧跡が集中する「ロイヤル・マイル」がある。
 まず何としてでもお腹いっぱいにメシを詰め込もうと思ったクマ蔵は、旧市街エジンバラ城から至近の有名店「ウィッチェリー・バイ・ザ・キャッスル」を訪れた。植え込みの樹々の葉が鬱蒼と生い茂り、ここがレストランの入り口だとはなかなか気づかないほどである。
ロイヤル・マイル
(ロイヤル・マイル)

 ためらいながら奥へ奥へと入り込んでいくと、強烈なスコットランド英語のオジサマ・ウェイターが待ち受けている。案内されて地下に降りると、おお、「これは間違いなく高級レストランだ!!」と誰もが認める難しい空気が漂っている。
 何しろこの一週間、マトモなものを食べた記憶がない。もともと美食にはほとんど興味のない今井君でさえ、ダブリンからウィンダミアまで、ヌルくてボソボソでメトメトな料理にすっかりウンザリしていた。ここはホントに久しぶりに、旨いものをタップリお腹に詰め込むチャンス。ギャランドゥだって、中身の充実をひたすら求めているはずだ。
 注文したのは「海の幸のプラッター」。これがフランスなら「コキヤージュ」と呼ぶところであるが、要するに、生のカニとエビと、牡蠣その他ありとあらゆる貝のセットが、大っきなお皿に載せて運ばれてくる。それが今日の記事の冒頭の写真である。
 で、今井君は生の魚貝の1皿に猛然と攻撃を開始した。白ワイン1本を味方につけたから、魚貝の諸君は喉に詰まってジタバタすることもなく、潔くクマ蔵の胃袋に収まっていく。約30分後には、下の写真のように綺麗サッパリ胃袋行きになったのである。
魚介の風景2
(あっという間に平らげる)

 ただし、隣のテーブルの若いカップルが、きわめて冷たい視線を今井君に浴びせている。生のエビ、生のカニ、生の魚貝、そういうものに対するイギリス人の視線は驚くほど冷たい。映画「Mr.ビーン」のシリーズに、生の魚貝を食することに対する嫌悪感が滑稽に描かれているのがあったから、探して観てみたまえ。
 「若いカップル」は、今井君の右隣である。彼氏は大学生か大学院生。彼女の若さはほとんど言語道断であって、おそらく高校生である。あらら、家庭教師と生徒の関係かな? こんなところでデートなんて、わー、いけないな、いけないな。そういう2人である。
 彼氏も彼女も、注文したのはステーキである。「火を通した肉以外、食べるのは非常識。生の魚貝なんか、不道徳」。そういう教育を受けてきたに違いない。今井君が生の魚貝を次々と口に運ぶのを横目で見ながら、まず彼女が「ウゲっ」と叫び、次に彼氏が「ウギャッ」と喉を鳴らした。
ポスター
(ジェイソン・ビューン。もちろん、映画「ボーン・アイデンティティ」のヒーロー、ジェイソン・ボーンのパロディ。タイトルも「ビューン・スプレマシー」だ)

 何を言ってんだ、自分たちのステーキだって、ナイフで全然切れないような、ガンコなシロモノじゃないか。諸君、クマ蔵が観察したところでは、2人のステーキは甚だ難しいお肉であって、ナイフでいくらギコギコこすっても、ちっとも切れないらしいのだ。
 しかも、どうやら2人は初デートなのである。そんなの、経験豊富なギャランドゥオジサンは雰囲気ですぐに察知できる。ギャランドゥを見くびってはイケナイ。大学院生の家庭教師と、高校生の彼女。コッソリ午後のレストランでデート。それなのに、2人ともステーキが切れなくて、にっちもさっちもいかない様子。彼氏は「Shit!!」と叫び、彼女はもう泣きそうだ。
 それを横目に、今井君はどんどんカニをムサボリ、エビを噛みちぎり、次々と牡蠣を吸いつくして、白ワインを豪快にグビリとやる。うぉ、気持ちいい。東洋のクマを見くびってはイケナイ。
 第一キミたち、若いのにこんな高級レストランなんかでデートするから、そういうつらい目に遭うのだ。若いうちは、マックかバーガーキングにしておきたまえ。
 見事に完食したクマ蔵は、意気揚々と引き上げることにした。若いスコットランドの彼氏と彼女は? 2人はその15分前、気まずそうに店を出て行った。見ると、2人のテーブルには食べかけのステーキが2枚。彼女はほとんど全部を食べ残したようだ。あらら、可哀想なことをしたでござるね。

1E(Cd) Mravinsky & Leningrad:SHOSTAKOVICH/SYMPHONY No.5
2E(Cd) Maggini String Quartet:ELGAR/STRING QUARTET in E MINOR & PIANO QUINTET in A MINOR
3E(Cd) Barbirolli & Hallé:THE BARBIROLLI ELGAR ALBUM 1/2
4E(Cd) Barbirolli & Hallé:THE BARBIROLLI ELGAR ALBUM 2/2
5E(Cd) Elgar & London:ELGAR/SYMPHONY No.2
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