Wed 120418 マドリード最後の夜の混沌 ラストにもう1軒(サンティアゴ巡礼予行記31) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 120418 マドリード最後の夜の混沌 ラストにもう1軒(サンティアゴ巡礼予行記31)

 5月11日もまた大いに楽しい飲み会があって、「どうしてボクチンはこんなに恵まれているんだろう」「日頃の行いがそんなに良いワケじゃないのに、知人や友人にこんなに恵まれるなんて、神様に感謝するしかないな」と思うのである。
おうちでおとなしく1
(おうちで、おとなしく 1)

 ただ、さすがに少々グロッキー気味だ。考えてみれば最近ちょっと頑張り過ぎで、特に4月下旬からは書斎の席の温まるヒマもない。収録だ、飲み会だ、芝居だオペラだ美術館だ。そんなふうに外出ばかり続いて、読書や語学研鑽が疎かになっていないこともない。
 そこで、12日と13日はヒッソリ書斎で読書に励み、生徒諸君からもらったお手紙に返事を書いて過ごすことにした。「武蔵小杉の東進に通って、秋田大学医学部に合格しました」という嬉しい手紙もきた。C組→B組→A組と受講して、英語が大好きになってくれたようである。
おうちでおとなしく2
(おうちで、おとなしく 2)

 そうやって代々木上原あたりで大人しくしていても「今井先生ですか?」の出会いはあるので、宅配ピザのバイクから降りてきた青年が「千葉の東進ハイスクールで授業を受けてました。いまは明治大学政経学部に通っています」と、嬉しそうに頭を下げてくれた。
 「よかった&よかった。まさかこんなところで出会うとはね」であるが、今井君以上にバイクの青年のほうがずっとビックリしたはずだ。ビックリしすぎてバイクからこけたりしたらたいへんだから、今井君はあんまり外を出歩かないほうがいいのかもしれない。
おうちでおとなしく3
(おうちで、おとなしく 3)

 さて、そろそろ久しぶりに旅行記に戻って、マドリード最終日のクマ蔵どんが何をやっているか、覗いてみることにしよう。確かクリスマスイブイブのマドリードはどこもかしこも混雑の極み。朝の山手線や休日午後の渋谷駅前スクランブル交差点もなんのその、まさに足の踏み場もないアリサマだったはずだ。
 12月23日夕暮れ、中途半端に飲み食いして「ボティン」を出ると、マドリードの街の大混雑はいっそう拍車がかかっている。ここまで混雑が激しくなると、混雑というより混乱であり、混乱というより混沌であって、大都会の夕暮れに危険なカオスの香りが立ちのぼりはじめている。
 座る場所のないグループ、しゃがむ場所のない家族連れ、立ち止まる空間すらないカップル。それでも路上にフェイクのバッグを並べ、混乱と混沌に乗じて商売を続けようとする移民たちの姿も目立つ。
もう1軒のシードラ
(マドリードでもう1軒 結構旨かったシードラ)

 警察官がたくさん出て人の流れの整理に当たっているが、ここまで混沌のレベルが上がれば、もう大した効果は期待できない。移民のバッグ売りもそれを見透かして、警官が背中を見せたスキに売り物のバッグを広げ、警官がこちらに顔を向けた瞬間、魔法のように全てを隠してしまう。どこでそのワザを磨いたのか、それとも元締めが指導するのか、みんな同じ仕掛けで見事に警察官の裏をかく。
 もちろん、そんな涙ぐましい努力をしても、ヒトビトはフェイクバッグなんかに興味を示さない。いま人が求めているのは、座る場所、しゃがむスペース、立ち止まって息を吸う空間、それだけだ。
 だから、バッグ売りの努力はあまりにも空しく見える。スバシコク商品を広げ、スバシコク商品を隠し、警察官の目は見事にくらましているが、そのせいで肝腎のお客の目にも商品は触れないのだ。本末転倒というか、ムダな努力というか、結局は道をふさいでヒトビトの激しい舌打ちの対象になっているだけである。
店内風景1
(マドリードでもう1軒 店内の風景1)

 今井君は、このまま終わってしまうのが悔しくなって「もう1軒行くぞ」と決意した。もうお腹はいっぱい、お酒もそんなに入らないが、とにかく何だか悔しいのだ。
 押し合いへし合いしながらソル広場から東に5分ちょっと進むと、右手の薄暗い隅っこの店の中に空席がいくつか目についた。ヒトビトがあんなに夢中で求めている空席が今そこにあるのに、みすみす見逃してはバチが当たる。
 入ってみると、店は何の変哲もない飲み屋。田舎臭くもないしオシャレでもない。旨そうでもマズそうでもない。要するに「何の欠点もないが、何の取り柄もない店」である。そういう店を昔のヒトは「毒にも薬にもならない」と表現した。
店内風景2
(マドリードでもう1軒 店内の風景2)

 しかし今井君としては、今は別に毒も薬も求めていない。毒がいらないのは当たり前だが、薬が必要な状況でもない。座りたかっただけ、「これで今回の旅のマドリードは終わり」という悔しさを晴らしたかっただけである。ならば、毒にも薬にもなくてマコトに上等なわけだ。
 パエージャを1皿と、シードラを1ボトル注文。毒も薬もいらないなら、注文も平凡でいい。リンゴ酒もパエージャもすぐに運ばれてきたが、さすが毒にも薬にもならない店であって、特にパエージャの平凡さはあまりにも期待通りである。旨くもなければマズくもない。冷凍のヤツをチンしても、これほどの平凡さにはなかなか到達できるものではない。
もう1軒のパエージャ
(マドリードでもう1軒 あまりにも平凡なパエージャ)

 それでもさすがに2軒目を出るころには「助けてくれ、これ以上食べたらお腹が破裂する」「これ以上飲んだらお酒がキライになっちゃう」というアリサマ。そこいら中のホテルから溢れ出てくるパーティー帰りの酔っぱらい集団をかき分け&かき分け、ホウホウの態でホテルリッツのスイートに戻った。
 さて、こうしていよいよ巡礼予行の目的地サンティアゴ・デ・コンポステラに向かう日がやってきた。23日は深夜までパトカーと救急車が走り回る気配があり、とてもゆっくり休養できるような一晩ではなかったが、飛行機は12時過ぎだから、朝9時にはホテルをチェックアウトしなければならない。
スイートのドア
(偶然宿泊したスイートルームの観音開きとも、これでお別れだ)

 せっかくのスイートルームなのに、朝9時にチェックアウト。それを考えただけで、悔しさに歯ぎしりするほどである。しかし諸君、目的を取り違えてはならない。今回の目的はあくまでサンティアゴ・デ・コンポステラ巡礼の予行であって、12月24日、クリスマスイブのこの日のうちに、間違いなくあの大聖堂前に立たなければならない。
マドリード12月
(12月末のマドリード市街)

 ホテルからタクシーに乗って、バラハス空港へ。イベリア航空の窓口に立ち寄って、28日のサンティアゴ→マドリード便のチケットを買い替えておこうと思う。
 帰国の日はサンティアゴ→マドリード→フランクフルト→成田というキツい乗り換えになる。予約した便だと、マドリードで1時間半しか余裕がないのだ。飛行機3つ乗り継ぎもキツイが、何と言ってもこの広いマドリード空港で90分しかないのは致命的な感じである。
 PC1台あれば自分でもカンタンにできることだが、せっかく空港に立ち寄るんだ。専門の係のヒトにお願いして、キチンとやってもらったほうがいいに決まっている。それがどんな結果になるかは、明日の記事で詳しく読んでくれたまえ。
 バラハス空港着、10時。空は快晴で、ここまでは何もかも順調だった。

1E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES①
2E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES②
3E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER④
4E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER①
5E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER②
total m97 y595 d8490