Sat 120407 連休のヒマなオジサマになりきる 土田世紀、死去 モーニングの記憶 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 120407 連休のヒマなオジサマになりきる 土田世紀、死去 モーニングの記憶

 今井君の仕事は忙しい時にはメッタヤタラに忙しくて、2か月間マトモに自宅の書斎で過ごす時間がなくなるが、逆にいったんヒマとなると仕事はウンともスンとも言わなくなって、まるまる2週間ほとんど外出さえしなかったりする。
 もちろん芝居や美術館に出かけたり、恐竜時代から続く友人たちとの会合に出たり、そういう外出なら頻繁にある。しかし、キチンとスーツにネクタイに黒革靴で「さて、仕事に行ってくるか」と張り切る一瞬がオジサマには必要なので、それが2週間も全くないと、何だか寂しくてションボリして、ヒマであることが鬱陶しくなってくる。
 こういうふうだから、大型連休だゴールデンウィークだと世の中が騒いでいても、クマ蔵にはほとんど関係がない。6月初めからはまた忙しくなりそうだから、大型連休のうちに大いにヒマをコイていたほうがいいのかもしれない。
だんだん眠くなる
(だんだん眠くなってくる)

 そこで素直にヒマをコクことにするのだが、概してオジサマというものは、ヒマのコキ方のレパートリーが少ない。問題は特に午前中なので、テレビをボンヤリ眺めながら新聞をペラペラめくるぐらいが関の山である。若い読者諸君のパパたちも、おそらく連休中の状況はほぼ同じではないだろうか。
 気がつくと同じ新聞を3度もめくっていたりする。3度めくって溜め息をつき、時計を見ると10時45分。「早いけど、連休なんだ、まあいいか」と知らず知らずに五七五でつぶやきながら立ち上がって、冷蔵庫のドアを開ける。そこには「ビール」という強烈な誘惑が待っている。
ますます眠くなる
(ますます眠くなってくる)

 男子というものは、子供の頃もオジサマになっても、うんにゃ、オジーサマになっても、ちょっと叱られて、それにムクれて反発してみせるのが大好き。叱ってくれるのは、ママでも姉妹でも彼女でも、奥方でも娘でもマゴムスメでも構わない。
 「悪い子ね」「オニーチャン、汗臭いシャツ着ないでよ」「いけないヒトね」「また昼間からビール?」「パパ、汚い食べ方ヤメてよ」「オジーチャン、チャンと歯を磨かなきゃダメだよ」。年代別に並べれば、まあこんなところかね。
 何をしても無視され、放置されるのに比べれば、ほとんど至福の瞬間と言う男子もいるはずだ。「うぜ」「いいじゃん」「うるせえよ」「かまわん」「いいんじゃよ」、そう言い放ち、横を向いてニヤリと笑う。女子には理解しがたいだろうが、男子はこんなことが楽しいのだ。
 そういう瞬間を求める気持ちもあって、雨でゴルフにも行けない連休の11時前のオジサマは、冷蔵庫のビールに手を伸ばす。ビール瓶にグラスを片手に席に戻って、4回目の新聞をめくりはじめ、テレビのニュースショーが始まる。連休中のパパはニュースに異常に詳しいのだ。
もっと眠くなる
(もっともっと眠くなる)

 今井君にとって一番ショッキングなニュースは「スペイン、4人に1人は失業者」であった。確かに失業率24.4%ということは、4人に1人が失業中という計算になる。格付け会社が「待ってました」と格下げを発表して、火に油を注ぐ。
 しかしクマ蔵の感じだと、それほどヒドい危機的状況がイベリア半島を襲っているとは思えない。この5年、スペインとポルトガルの相当な田舎町まで歩き回ったが、どうしても日本の6倍近い失業率に喘ぐ国とは見えないのだ。
 道路や鉄道のメンテナンスも、地下鉄建設も好調。ゴミの散乱もなく、多くの店が繁盛し、人々の表情も暗くない。マドリードやバルセロナのような大都市ばかりがそうなのではなくて、地方の小都市でも「失業者が街に溢れ」という様子は感じられなかった。
熟睡1
(熟睡の図 1)

 一方5月2日付けの朝日新聞によれば、日本にも「4人に1人」があって、それは「自殺を考えたことのあるヒト」である。日本の失業率4.5%は、スペインの1/6に過ぎない。それなのにオトナの4人に1人が「真剣に自殺を考えたことがあります」と回答したとすれば、それはたいへんなことである。
 まあ、統計の数字にいろいろ問題があって、「ホントの失業率はもっとずっと高いのだ」と主張するヒトは多い。失業と自殺の間に相関関係があると考える必然性もない。訳知りなヒトは、いかにも訳知り顔にそう言うかもしれないが、「4人に1人」はさすがに心配である。
 社会が性急すぎるんじゃないか。「数字だ数字だ、数字をもってこい」が横行しすぎなんじゃないか。「来月までに成果をあげろ」「すぐに結果を出せないヤツはタダメシ食いだ」の類いのパワハラ的性急さで、窮屈にギューギュー絞り上げられ、世の中がとっても生きにくいんじゃないか。
 今井君が心配しても何にもならないのかもしれないが、せめて楽しく爆笑が連続する授業を心がけて、少しでも若いヒトたちの心を軽くしてあげられたらと思う。楽しくて、90分間に90回も笑えて、しかもその日の授業内容が120%理解できる授業をたくさんして、その授業を1人でも多くの受講生に聴いてもらいたい。
熟睡2
(熟睡の図 2)

 早すぎる死のニュースも、この2~3日の新聞に相次いだ。水泳のダーレオーエン選手、漫画家の土田世紀氏、電子顕微鏡の開発者でノーベル賞候補だった外村彰氏の3人である。
 ダーレオーエン選手については詳細が分からないので、今ここに何か書くのは遠慮しておく。外村氏についても、何せ今井君は理系音痴、物理も化学も秋田高校3年の学年末テスト以来、ほとんど触れたことがない。何も書かないほうがよさそうだ。
 しかし土田世紀氏については、秋田県出身の同郷である。秋田市立南中から新屋高校という経歴を見ると、どうしても何かキチンと書いて、それを追悼としたい。43歳、肝硬変。これからもっともっと活躍してほしい漫画家だったと思う。
 とはいうものの、土田世紀の漫画を愛読していたわけではない。もともと今井君は漫画というものをあまり読まない。それでも土田氏を記憶していたのは、週刊「モーニング」の表紙に大きく名前の出ているのを、本屋の店先で見かけたことがあったからだ。
 1980年代、なかなか人生がうまくいかなくて疲れ果てていたころ、今井君は本屋でよく漫画週刊誌に手を伸ばした。ネコが主役の「What’s Michael」だけが目当てだったのだが、それが「モーニング」である。
空を飛ぶ夢1
(空を飛ぶ夢 1)

 「What’s Michael」は余りに気に入ったので、吉祥寺の古本屋で単行本を全巻購入したほどである。しかし1980年代当時の「モーニング」には他にも多くの有名作品が連載中で、「クッキングパパ」「右曲がりのダンディー」「ツヨシしっかりしなさい」「代打屋トーゴー」「逮捕しちゃうぞ」「課長島耕作」「夏子の酒」「ハートカクテル」など。「ショムニ」はもう少し後の時代である。
空を飛ぶ夢2
(空を飛ぶ夢 2)

 あまり有名ではなかったかもしれないが、当時の今井君の大のお気に入りは「ドトウの笹口組」「大正野郎」の2作。いやはや、一時はこの2つを読むためだけに、モーニング発売日にドキドキしながら本屋に走ったものである。「モーニングに救われた日々」だったのかもしれない。
 「大正野郎」のほうは今もなおクマ蔵に影響を与えていて、今井の第2ブログ「ウワバミ文庫」の表紙写真はまさに大正野郎のイメージ。大正なコートに大正な表情、出来ればステッキを両手に持ちたいほどだったが、ビニール傘で我慢することにした。
空を飛ぶ夢3
(空を飛ぶ夢 3)

 こんなに「モーニング」発売日を待ちこがれ、人生が思うようにいかなくて鬱々としていた日々を、モーニングに救われたことのある人間なのだ。10年が経過して、もう漫画週刊誌に手が伸びなくなっても、本屋で表紙を見ればそれだけで心が和んだ。その表紙に土田世紀の名前が大きく印刷されていて、クマの記憶に残ったとしても、何の不思議もないだろう。
 彼の活躍の舞台は、むしろ「モーニング」以外の雑誌であることのほうが多かったようだ。しかし、もし時代が20年ずれていたら、今井君は彼の漫画に救われる巡り合わせになっていたのかもしれない。冥福をお祈りする。

1E(Cd) Ann Burton:BLUE BURTON
2E(Cd) Duke Ellington: THE ELLINGTON SUITES
3E(Cd) José James:BLACKMAGIC
4E(Cd) Sonny Clark:COOL STRUTTIN’
5E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER④
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