Sat 120331 どうせオカネはチョまらん もう1度ポサーダ(サンティアゴ巡礼予行記26) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 120331 どうせオカネはチョまらん もう1度ポサーダ(サンティアゴ巡礼予行記26)

 「グラナダ総復習」というなら、アルハンブラ宮殿を出た後で、もう1つどうしてもやらなければならないことがある(スミマセン、昨日の続きです)。もちろん「アルバイシンをもう1度大爆走」であるが、これもまた「火山活動発生!!」と心で叫ぶうちに、あっという間に終わってしまった。
 市庁舎のそばでアルハンブラ・バスを降り、最後まで見残しておいた「カテドラル」「王室礼拝堂」に回った。しかし、うーん、少なくとも今の今井君にとっては、この2つは別にグラナダでわざわざ時間を割くほどのことはないような気がする。
カテドラル
(カテドラル)

 もちろんガイドブック的には「必須」であり「星3つ」であって、堺正章が狂喜しながら「頂きましたっ!!」と絶叫するシチュエーションである。確かに、レコンキスタを完成させたイザベラとフェルディナンドの墓所があるとすれば、歴史的な価値は認めざるを得ない。
 しかし、この2日間のアルハンブラ&へネラリーフェを通じ、ついでに連日連夜のアルバイシン大爆走(諸君驚くかれ、「だいばくそう」に対するMac君の変換は「台場臭う」である)を通じて、今の今井君は完全にイスラム贔屓、ナスル朝の味方。こんな可愛く美しい街に1万も2万もの軍隊で押し寄せ、無理無体に踏みにじってみせた王様&女王様なんか、大キライだ。
カテドラル前の広場
(カテドラル前の広場)

 「放っておいてあげればよかったじゃないか」とボクチンは思うのだ。花は咲き乱れ、働きバチが唸り、蜜が流れ、家畜が駆け回る。庭園では澄んだ水が涼やかに流れ、しぶきは冷たく輝き、疲れきった王侯貴族が悲しい微笑を浮かべつつ、朝の散歩とささやかな音楽を楽しみに生きている。それだけの小国だ。遠巻きに放置して、何か実害があるとは思えない。
 庶民を虐待したり搾取したりし続けたわけではない証拠に、庶民まで参加して街の防衛に励んだじゃないか。アルバイシンとアルハンブラが肩を寄せあって、可愛く無害な小国を作り上げていたじゃないか。レコンキスタ完成という単なるプライドのために、小国の人々の笑顔を踏みにじる必要なんか、ちっともなかったのだ。
シエラネバダ
(市街からシエラネバダ山脈を望む)

 「ベー、だ。フン、だ。へん、だ。キライだよ」。いきなり幼児並みの感情をむき出しにして、今井君は「カテドラル」も「王室礼拝堂」も写真を1枚お義理で撮るだけで終わりにしてしまった。
 カテドラル前にはたくさん店の並ぶキレイな広場があったが、閑散として客の影もほとんどない。「これも、自業自得だね。フンだ」。幼児性もここまで来ると、幼児というよりむしろ乳児に近い。
パラドールで1
(パラドールで 1)

 さて、総復習のための最後の仕上げは、気に入ったレストラン再訪である。となれば当然、グラナダ初日に入った「闘牛士たちも頻繁に訪れる、元闘牛士がオーナーの店」しか考えられない。
 あの田舎臭さ。21世紀的オシャレなんか一切考えない懐かしい昭和の雰囲気。あの古色蒼然とした豆だらけの豆スープ。ホントに豆だけでお腹いっぱいになって、お腹の中でジャックが豆の木に登りはじめるほどの豆だらけ。あの余りに豆豆しい、豆っとした田舎スープを食べずにはマドリードに戻れない。
コルテのにゃご
(ショーウィンドウにニャゴロワどんを発見)

 夕闇せまるクリスマスのグラナダで、「メシはコルテ・イングレスにちょっと立ち寄ってから」ということにした。コルテ・イングレスは日本で言えば「昭和の頃のイトーヨーカドー」という感じの、日の出の勢いを感じる大型店舗である。
 準急や快速停車駅の駅前に、イトーヨーカドーとダイエーとジャスコと西友が軒を並べて覇を競っていた昭和バブルの時代が懐かしい。あの時代の日本の中小都市は、「イトーヨーカドーなしには夜も明けない」「ダイエー休業日は、街全体が休業日」という雰囲気だったが、21世紀のスペインは「何をするにもコルテ・イングレス」なのだ。
パラドールで2
(パラドールで 2)

 夕暮れのグラナダでわざわざコルテ・イングレスに入ったのは、前日見つけたYANKOの財布を買おうと思ったから。今井君はYANKOの靴の大ファンで、もう10年も昔からYANKOを履いている。高すぎず、安すぎず、一見履きにくそうに見えるのに、あっという間に不思議に足に馴染む。
 靴がよければ、お財布だっていいだろう。何しろ、「長い財布を持っただけでお金持ちになれる」という本を買うヒトがいる妙竹林な世の中だ。わざわざスペインの田舎町でイトーヨーカドーみたいな店に入り、バーゲンで財布を買ったらさぞかしオカネが貯まるだろう。
パラドールで3
(パラドールで 3)

 「貯まる」という文字をみると、今井君はどうしても「チョまる」と発音してしまう。「ポイントが貯まる」は「ポイントがチョまる」。「マイルを貯めよう」は「マイルをチョめよう」。この日のコルテ・イングレスでも「YANKOの財布ならオカネがチョまるな」と頭の中で繰り返しながら、売り場のあたりを相当長い間ウロウロした。
 しかし結局、買うのはヤメにした。100ユーロも出して買うほど気に入ったお財布は見つからなかったし、やっぱり何よりも「何でグラナダでバーゲンのお財布?」というバカバカしさが、吐き気の喉の奥からこみ上げてきた。「どうせオカネはチョまらんよ」「ああ、チョまらん」。「チョまらん」とは、もちろん「ツまらん」からの転訛である。
部屋からのライトアップ
(パラドールの部屋から、ライトアップされた宮殿を望む)

 午後4時、閉店ギリギリの時間帯になって、目指すポサーダ・デル・ドゥエンデPosada del Duendeに入った。もちろん「閉店」というのはランチの話であって、午後8時にはディナーの営業が始まるのであるが、スペインの店員さんは料理人まで含めて、ランチが終わればいったん店を閉めて帰宅するようである。
アボカドサラダ
(アボカドだらけのサラダ at ポサーダ・デル・ドゥエンデ )

 他のお客がみんな帰ってしまった閑散とした店で、クマ蔵が注文したのは「アボカドだらけのサラダ」「お腹が豆でパンパンになる豆だけのスープ」「固くて薄いステーキ」の3種。ホントに豆だけで満腹するから、薄いステーキはデザートみたいなものである。
ステーキ
(デザート代わりのステーキ)

 中年になりかけのウェイターにロゼワイン1本開けてもらい、お客の誰もいない店に午後5時近くまで居座った。さすがにこんなクマみたいなヒゲの東洋人だ。ウェイターはチャンと覚えていて、食後のエスプレッソに旨いリキュールをサービスしてくれた。
エスプレッソとリキュール
(エスプレッソとリキュール)

 帰りはタクシー。うーん、ドライバーはかなり回り道をしたようである。まあいいか、これだけ楽しい4日間を過ごした後だ。ちょっとぐらいタクシーの運転手がズルいことをしても、チップをたくさん出すつもりで大目にみて、別にバチは当たらない。陽気にガハガハ笑っているうちに、クルマはパラドールの門に着いた。
バスルーム
(パラドール バスルーム風景)

 こうして、グラナダのパラドールで過ごした4日間は終わりである。部屋に戻ると、シャンペンが1本(もちろん無料で)サービスされている。チャンと氷に入れて冷やしておいてくれた。こりゃいいね。さすがにパラドール・デ・グラナダでござるよ。
 清掃係のヒトの「Muchas Gracias」のメモ書きも発見。小額のチップに対するお礼だけれども、このたった一言で、チップを置いた側も、ふと浮き足立つほど嬉しくなるものである。
グラシアス
(ムチャス・グラシアス)


1E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER④
2E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER①
3E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER②
4E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES⑥
5E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES①
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