Thu 120329 苦一派グレ グラナダの完全ジモティ店で夕食(サンティアゴ巡礼予行記24) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 120329 苦一派グレ グラナダの完全ジモティ店で夕食(サンティアゴ巡礼予行記24)

 12月20日午後、アルハンブラ・バスでアルバイシンを2周し、高速の「火山活動発生!!」「火山活動発生!!」が気に入ったクマ蔵は、「行け、行け、行けぇ!!」の絶叫を心の中で繰り返し(スミマセン、ここまでが昨日の記事の復習です)、すっかり満足してグラナダ中心街に降り立った。
 気がつけば、すでに午後3時を回っている。スペイン独特のランチの時間帯は14時から16時だから、まもなく「ラストオーダーの時間です」になる。ディナータイムは午後8時からが原則。いま急いで店に入らないと、ここから4時間にわたって「オマンマの食いあげ」「食いっぱぐれ」になる。
ホテルカルメン1
(グラナダ中心部の4つ星「ホテル・カルメン」。一度泊まってみたい、懐かしい20世紀の風情と風格がある)

 昭和の終盤まで、「オマンマの食いあげ」や「食いっぱぐれ」という言葉は、まだ立派な日常語として生きていた。しかしさすがに「バブルはじけて20年」。激しかった昭和の記憶、花々しいバブルの記憶、日の出の勢いだった日本の記憶は、はるか遠くに弾け去った。
 時代は変わって、もう取り返しがつかない。我が友Mac君に「くいっぱぐれ」と打ち込んでも、どうしても変換は「苦一派グレ」。何度トライしても「苦一派グレ」、意地でも「苦一派グレ」、何が何でも「苦一派グレ」としか変換してくれない。
 しかし諸君、これは何もMac君のガンコさを憂うべき話ではない。ホントに苦一派グレ=「苦しんだ一派がグレちゃう」という、そういう時代なのかもしれない。かく言う今井君だって、グラナダ市庁舎前の広場に立ち尽くして「あと4時間、空きっ腹をかかえて苦一派グレ」という困った事態が迫りつつあった。
夜のグラナダ1
(グラナダのクリスマス・イルミネーション)

 慌てた今井君は、昨日の失敗の記憶も生々しい、横丁の安い飲食店街に踏み込んでいった。昨日は、「この店もいいな」「この店も悪くないな」と目移りしているうちに、「もっといい店を」「もっといい店を」という浅ましい欲望に取り憑かれてしまった。
 その欲望を裏返せば「ここもダメだ」「ここもイヤだ」と全てを否定して、優柔不断のスパイラルに陥ったことになる。おお、マコトに苦々しい経験だ。そういう優柔不断こそ、まさに「苦一派グレ」の正体なのだ。
夕暮れのアルバイシン
(カルロス5世宮殿から見る夕暮れのアルバイシン)

 今日の今井君の決断は早かった。昔は「電光石火」と表現したが、これもまた死語でござるか? いまは「すかさず」とか「なにげに」とかでござるかい?
 うんにゃ、クマ蔵の行動はやっぱり電光石火という形容しか正確ではないので、自分でも気づかないうちに、ある一軒の店に入ってしまっていた。「あれれ、もう入っちゃった」「ボク、いつの間に入ったの?」と自分自身で呆然&愕然&唖然とするような、ハヤワザ中のハヤワザである。
薬局ポスター
(横丁の薬局で。「シラミですか?」は、なかなか激しいですな)

 普通なら、外国旅行中にレストランに入るには、もっともっと緊張して優柔不断になるべきところである。しかし諸君、旅の超ベテラン今井クマ蔵は、この5年だけで260日の海外滞在、訪問した街の数も5年で100を超える。電光石火にもすっかり年期が入って、一言も言葉を交わさずにテーブルを獲得するハヤワザを会得している。
店外観
(超ハヤワザで店を決める)

 クリスマス直前のレストランは、昼間からカウンターで酒に酔ったジモティのオジサマで大混雑している。「立錐の余地もない大繁盛」という演出である。シロートや、経験の浅い旅人なら、「ダメだこりゃ」「オレなんか相手にしてもらえない」「やっぱり予約してから来なきゃダメだな」と早合点する。
 もっと悪いのは「やっぱり海外旅行はツアーに限る」「誰かガイドさんを頼まなきゃ」と、内向き&消極的になって、旅行それ自体をキライになったり、友人どうし睨み合いになったり、仲間割れや夫婦ゲンカに発展することである。「ダメねアナタ、これじゃゴハンも食べられないじゃない」「オレが悪いんじゃないだろ」などという言い合いは、まさに最悪だ。
店
(店内の風景)

 こういう時は、遠慮なしにズイズイズイッと店の中に踏み込んでいくことである。大混雑しているのはエントランスのカウンターあたりだけ、入り口付近の立ち飲みスペースだけである。店の奥、日本人が大好きなテーブル席は、どうせガラガラなのだ。
 しかも今井君は今や、指先だけで会話ができる達人の域に達している。「このテーブル、空いてるか?」「空いてるよね」「座っていいですよね」の質問を、人差し指1本と、クマ的サトイモの笑顔1つでこなすし、店のヒトもおそらくそのほうが面倒がなくていい。顔こそ、世界共通語なのだ。
豆料理
(注文したマメ料理)

 席についてみてから、田舎によくある「アットホーム過ぎて居心地の悪い店」だと気づいた。店主や店員のコドモたちが、平気でテーブルについて楽しく遊んでいるのである。小学校低学年のコドモたちが、お菓子を食べたり、店員からオヤツをもらったり、東洋からきたクマの顔や行動をマジマジと遠慮なしに眺めたりするので、居心地はあんまりよくない。
 料理は、「当たった」と笑顔にもなれないが「外れた」とも断言できない程度の、まあちょうどいい感じ。マメ料理を頼んだらマメだらけ、口はマメを咀嚼するのに精一杯、マメを詰め込んだ腹を「マメ蔵」に改名したくなるほどのマメだらけだったが、中途半端な創作スペイン料理よりは、こっちの方がずっといい。
ワイン
(ワインの冷やし方)

 ワインの冷やし方も、なかなか度肝を抜いてくる。確かに「ice bag」の札がついているから、どこかのスーパーかスペイン版100均で購入してきたのだろうが、ビニール袋に氷水を入れて、ズボリとボトルを突っ込んでみせる力ワザには、まさに脱帽。プールに通う夏休みの小学生が、タオルを突っ込んでいく袋に似ているでござる。
 この店には、4時半までいた。まずコドモたちが家路につき、その後を追って店主や店員のパパたちが店を出た。今井君も彼らと一緒に外に出て(だって仕方ないじゃないか)、暗くなったグラナダの市街を散策した。クリスマスのライトアップが美しい。マドリードが少し地味過ぎたから、グラナダの方が派手なぐらいである。
夜のグラナダ2
(クリスマス直前のグラナダ。左は大型店舗コルテ・イングレス)

 いったんパラドールに戻って、午後7時ごろ、「もう1度アルハンブラ・バスで『火山活動発生!!』な夜のアルバイシンを満喫しよう」と、ムックリ&ノコノコ起きだしていったのは、昨日の記事に書いた通りである。
 確かに夜の方が、狭く暗い急坂を急上昇&急降下するスリルは大きかった。ダウロ川の谷をはさんでアルバイシンの反対側には、ライトアップされたアランブラ宮殿。車窓に一瞬美しく姿を見せるだけだが、これはこれでいいのだ。
夜のアルハンブラバス
(何だかワケが分からないだろうが、夜のアルハンブラバス。石壁ギリギリに疾走する。左に白く見えるのが、その石壁)

 「アラブ人街や裏町の小さな飲み屋に入って深夜まで」という選択肢もあるが、それはまた明日のことにしよう。明日もう1日グラナダが残っているから、気が向けばそういうこともするだろうし、気が向かなければしないだろう。それだけのことである。

1E(Cd) Pešek & Czech:SCRIABIN/LE POÈME DE L’EXTASE + PIANO CONCERTO
2E(Cd) Ashkenazy(p) Maazel & London:SCRIABIN/PROMETHEUS + PIANO CONCERTO
3E(Cd) Ashkenazy(p) Müller & Berlin:SCRIABIN SYMPHONIES 1/3
4E(Cd) Ashkenazy(p) Müller & Berlin:SCRIABIN SYMPHONIES 2/3
5E(Cd) Ashkenazy(p) Müller & Berlin:SCRIABIN SYMPHONIES 3/3
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