Fri 120323 旅行記のブックマーク 子供がクマに怯える(サンティアゴ巡礼予行記18) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 120323 旅行記のブックマーク 子供がクマに怯える(サンティアゴ巡礼予行記18)

 この3日ほど身辺雑記にうつつを抜かし、その間スペイン・グラナダの旧市街にクマ蔵を放置しておくことになったが、クマさんはどうしているだろう。またどうせ何かつまらないイタズラに励み、くだらないオヤジギャグを連発しているだけだから心配はいらないけれども、3日も放置するのは余り好ましいことじゃないだろう。
 もちろん旅行記だって紛れもなく身辺雑記の一部だから、要するにブログ自体が身辺雑記の集積にすぎないのであるが、右のアーカイブ欄にふと目をやると「アーカイブがもう意味をなさないな」と深く実感するほど、4年の集積は膨大なものになった。
アルハンブラの夕焼け
(アルハンブラ宮殿の夕焼け)

 3年も4年も前の記事を、好き好んで読むヒトは少ないだろう。しかし特に旅行記には「チャンと順番に読んでみたい」「全部キチンと読み直したい」という需要があり、「でもまとめて読もうとすると、ブログというシロモノは非常に扱いにくい」という意見もある。
 ならば、書きためてきた者の責任として、何とか読みやすく扱いやすいものにしたい。そこで3年前まで使ったBiglobeウェブリブログのブログを利用し、「ウワバミ文庫」と名づけ、整然と目次を配列して、目次をクリックしていけばテーマ別に&順番どおりに読めるようにした。
 せっかくだから、このブログの右欄にもブックマークをつけ、読みたい旅行記をクリックすれば、ワンクリックでその旅行記に飛んでいけるようにした方が親切だ。というわけで、先週末ちょっと時間をかけて、その作業を完了した。
 こうしてまとめてみると、旅行記だけで11編を書ききったことになる。「よく頑張ったな」という自己満足に浸りつつ、ちょっとPC画面を撫でてみながら「12編目のサンティアゴ巡礼予行記もしっかり書き切らなきゃな」と心を引き締めた。
夜景のアルバイシン
(アルハンブラから、アルバイシン方面の夜景を望む)

 しかし旅行記を書くには、実際に旅行しければならないという厳然とした前提があって、この4年で今井君がどれほどたくさんの旅に出たか、どれほどたくさんの旅から無事に帰還したか、どれほどたくさんのバカげたマネを重ねてきたか、そういうことにも思い及ぶのである。
 まだ書いていない旅行記(我が友Mac君の変換は「海底内旅行記」だ)が2つ。「2010年ミュンヘン滞在記」と「2009年ダブリン/エジンバラ周遊記」である。すると、たった4年の間にクマ蔵は2週間ずつ14回の旅を敢行したことになる。海外での滞在日数は200日に及ぶ。
ライトアップなカルロス
(ライトアップされたカルロス5世宮殿)

 ビジネスマンの海外赴任6ヶ月とか、大学生の留学6ヶ月とか、もちろんそれも素晴らしいことで、そういう6ヶ月なら無我夢中であっという間に過ぎてしまう。しかし旅の6ヶ月には全く別の重みがあって、根なし草の存在としての6ヶ月、所属する世界から短期間にせよ逃亡した存在としての6ヶ月は、ヒトが考える以上に孤独なものである。
 孤独な世界にこんなに頻繁に飛び込んでいくのは、普通のヒトならちょっと耐えられないと思う。もちろん今井君は普通の人間じゃなくて、里芋アタマのクマさん。図太く無神経もいいところである。知らない外国をワサワサ乱暴に歩き回っても、別に孤独を感じることはない。
アルハンブラの坂道
(旧市街からアルハンブラに向かう坂道)

 旅は好き好んでするものだから、「よく頑張ったな」という自己評価も妙であるが、ここはあえて「よく頑張ったな」と自分をナデナデしておくことにする。予備校での仕事だって怠けずにチャンとこなしながら、200日に及ぶ旅をこなし、1500回のブログ更新を一定のクオリティを維持しながら継続するなどというのは、まあ滅多な努力でできることではない。
 ぜひ諸君、ヒマな時間をまとめてとれる週末や連休に、1つの旅行記をまとめて一気に読み通してみてほしい。ニューヨーク滞在記を除けばヨーロッパばかりだけれども、イタリアにスペインにポルトガル、ドイツにオーストリアにイングランド、ギリシャにハンガリーにチェコ、まさによりどりみどりに揃っている。
ライトアップのアルカサル
(グラナダ、アルカサルのライトアップ)

 12月19日夕暮れのクマ蔵は、迷いに迷ったあげく最終的に「前日に目星をつけた店」に入った。しかし、うーん、イマイチである。「迷いに迷う」とは一般に「あっちもイマイチ、こっちもイマイチ」というマイナス評価の積み重ねであることが多い。
 「あっちもいいな、こっちもいいな」というプラス評価が重なって、そのせいで迷いに迷うというケースも考えられないことはないが、その場合は迷っていないでサッサと両方とも試してみれば済む。どれもこれもダメでどれにも決め手がないこそ選択が困難になるのだ。
タコの江戸風
(タコ、江戸風)

 入った店は、外見はオシャレだし内部もそれなりにスマートだが、やっぱり中途半端な「創作スペイン料理」である。昨日の闘牛士のポサーダみたいな潔い田舎臭さに欠ける。観光地のメシ屋は、田舎臭いのがベスト。いっそのこと、この日も昨日の闘牛士のポサーダに行けばよかったのだ。
 注文したタコ料理なんか、驚いたことに「江戸風」なんだとさ。普通に茹でたタコの切り身に、醤油の皿がくっついてきた。噛みしめてみると、まさにタコ&ワサビ醤油であって、和風総本家もタジタジな創作日本料理。でも、これって別に、日本人がグラナダにたどり着いて食べる必要は全くないでござるね。
エスプレッソ
(エスプレッソも、スマートで平凡)

 こういうふうで、今井君は注文したものだけトットと食べて、トットと帰ることにした。こんなにたくさん旅をして数えきれないほどのバルやパブや食堂に入れば、「ハズレ」ということだってある。ハズレた時は、大人しくエスプレッソを啜って、素直にネグラに帰るに限るのだ。
 シーズンオフの夕暮れの閑散とした道をトボトボ歩いていくと、ほとんどお客のいないバーにホノボノと灯りがともって、ホノボノとクマどんを誘う。まだ午後6時、「もう1軒」にはちょうどいい時間帯だ。
 長いカウンターが1つ、カウンターと反対の壁際にテーブルが3つ。お客は地元のオジサマ2人だけで、バーテンダーと会話をボソボソ交わしている。「景気が悪いねえ」「お客が来ないね」「経済危機だしね」「起爆剤はないのかねぇ」みたいなヤツだ。
カウンター風景1
(カウンターにはオジサマ2人)

 こういう店でいきなりカウンターは照れくさいから、ひとまず壁際のテーブルに座って、ビールとグラス赤ワインを注文。店のサービスだったかオカネを払ったのか記憶が曖昧だが、種を抜いたオリーブ1皿をかじるうちに、ゆっくりと時間が流れた。
 地元のママが一人、4~5歳の女の子を連れて入ってきた。彼女たちも常連らしい。もちろんお酒を飲む場所だから、「幼児を連れたママが常連」と言っても限度がある。女の子にジュースを頼んで、バーテンダーとちょっと話し込んだだけで、ママはすぐに帰るのである。
カウンター風景2
(カウンター、拡大図)

 その女の子と今井クマ蔵の視線が、ふとしたことでピッタリと出会ってしまった。ヨーロッパの田舎町でも、クマ蔵はコドモたちの人気があるのだ。泣いているコドモでも、駄々をこねてムクれたコドモでも、クマ蔵と目さえ会えば、とにかくしばらくは大人しくなる。クマ蔵を夢中で観察せずにはいられないのだ。
 「人気」と言って悪ければ「あのゴツい生き物はなんだろう」「クマさんかな、サトイモさんかな、それとも大っきなキウィフルーツかな?」と、コドモがジッと見つめずにはいられなくなるような、そういう怪しい魅力である。
カウンター風景3
(カウンターに並ぶママと女の子。バーテンダーが嬉しそうだ)

 グラナダの女の子は、ママと手をつないで店を出る前に、おずおずとクマ蔵のテーブルに近づいてきた。こういう時は、キャンディとかキャラメルをあげるのがオトナとしての礼儀なのだが、残念ながら今井君はキャンディや一口チョコを日常的に持ち歩くような生物ではない。
 テーブルにはオリーブがあるけれども、まさか「はい、オリーブだよ」「塩辛いよ、食べてごらん」では、トンデモナイ表六玉。仕方がないから愛想よくニコニコ笑って、スペイン語会話を試みた。「おなまえは?」「いくつでちゅか?」の類い、「¡Qué mona! ¿Quántos años tienes?」である。スペイン語では疑問文と感歎文の冒頭に、逆さまのクウェスチョンマークや逆さまのビックリマークをつけるのだ。
 いきなり変な動物に話しかけられて、彼女はもちろん度肝を抜かれた。まさかこんなクマが、スペイン語っぽい言葉で話かけてくるとは思わなかったのだ。泣き出しそうに顔を歪め、ママの足にしがみつき、ママは申し訳なさそうに彼女の名前と年齢を呟いて、大慌てて店を出て行った。

1E(Cd) Rilling:MOZART/REQUIEM
2E(Cd) Jochum & Bavarian Radio:MOZART/THE CORONATION MASS
3E(Cd) Kremer:MOZART/VIOLINKONZERTE Nos. 2 & 3
4E(Cd) Jandó:MOZART/COMPLETE PIANO CONCERTOS vol.1
5E(Cd) Jandó:MOZART/COMPLETE PIANO CONCERTOS vol.2
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