Tue 120306 王宮 グランヴィア マジョールのクリスマス市(サンティアゴ巡礼予行記5) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 120306 王宮 グランヴィア マジョールのクリスマス市(サンティアゴ巡礼予行記5)

 さて、こうしてバスのチケットも無事に手に入ったし、12月15日はあくまで初日であるから、夕食前にマドリード基本コース回りをキチンと終えてしまいたい。閑散として「クマとヤマモモ」さえ見当たらないソル広場から、マジョール大通りを西に向かって徒歩15分、まずアルムデーナ大聖堂と王宮とに挨拶に行かなければならない。
 東京に着いたら、まず皇居。ロンドンに着いたら、まずバッキンガム宮殿。モスクワなら赤の広場とクレムリン、イスタンブールならハギア・ソフィア。そういう常識をあえて破らなければならないほど、コムズカシイ考えに捕われる必要はない。
アルムデーナ
(スペイン王宮前、アルムデーナ大聖堂)

 つい忘れがちだが、スペインには国王さまがいらっしゃって、正式国名は「スペイン王国」である。あらま、「では王様のお名前は?」と尋ねられると、今井君はあっという間に無知をさらけ出し、グーグル先生に頼らざるを得ない。おお、ホアン・カルロス国王である。そういえば記憶の彼方に霞んで、いつかどこかでそのお名前を聞いたことはある。
 グーグル先生はさらに、ホンの30年前に軍事クーデターがあったことまで教えてくれる。40年前まではフランコ将軍独裁の軍事政権。国連加盟も1955年。この国は、ヨーロッパの中でも際立って、つい最近まで波瀾万丈をやっていた。今井君が立っている王宮前なんかも、ついこの間までは怪しいアジアグマの来ていい場所ではなかったのだ。
 しかし王宮前もやはり閑散としている。冷たい風が吹き荒れて、観光客もほとんど見当たらない。途中のマジョール大通りは、マドリードの目抜き通りとしてグランヴィアと1or2を競うはずなのだが、クリスマスの飾り付けもきわめて質素。この国の経済財政危機の深刻さがありありと伝わってくるようだ。
王宮
(閑散としたスペイン王宮)

 グランヴィアと聞けば、日本人ならみんなJR西日本が経営するホテルチェーンを思い出すはず。今井君は大嫌いだが、京都に仕事のあるビジネスマンなら、ブライトンでもウェスティンでもなく、まずグランヴィアを選択する。
 そのホテルチェーンの語源が、おそらくこのマドリードのグランヴィアである。スペインは戦前独特の漢字表記なら「西班牙」。ドイツは独逸、フランスは仏蘭西、トルコは土耳古、メキシコは墨西哥、アラビアは亜剌比亜。アメリカとメキシコの戦争は米墨戦争、アメリカと西班牙の戦争は、もちろん米西戦争である。
 つまり、西=西班牙=スペインなので、JR西日本としては、「西」を代表する地名グゥランヴィアをホテル名にしようと発想しても不思議ではない。別にチャンと調べたんじゃなくて「今井君はそうニラんでいます」というだけのことだから、このクロクマは大いに無責任なのだ。
マジョーレ広場
(マジョーレ広場。上の輪っかがイルミネーションになる)

 しかしついでに諸君、こういう古くさい呼び方、そろそろヤメにしませんか。オーストラリアをわざわざ豪州と呼ぶ必要はない。何だか変に強そうじゃないか。独じゃ、孤独そう。仏じゃ、ホトケそうだ。
 ツール・ド・フランスが、新聞のテレビ欄ではわざわざ「ツールド仏」に変わる。何だか、仏像探訪の旅みたいだ。ポルトガルって、葡萄牙? 何でブドウにキバがあるの? そのブドウ、何だか口に入れると痛そうじゃないか。日葡辞書って、どんな辞書なんだ?
 ロシアの扱いについては、新聞各社もいよいよバラツキが出始めた。読売新聞は、意地でも「露」。何だかアラワな感じで「日露」「米露」「中露」と攻めてくる。
 対する朝日新聞は「ロ」。さすがかつて日本社会党の機関紙みたいだった先進的新聞であって、「日ロ」「米ロ」「中ロ」で攻める。どうしてアメリカは米でフランスも仏なのに、ロシアだけロなのか、整合性が感じられないけれども、「ロシア革命前は露西亜、ソ連崩壊後はロシア」と区別をつけたいらしいのだ。
 うーん、この問題について、今井君はいちおう朝日の肩を持ちたいと考えるけれども、とにかく一番いいのは、英露米仏独伊西葡墨土墺印みたいな前近代的な慣行を早くヤメにすることである。
マッジョーレのクリスマス市
(マジョール広場のクリスマス市。アジアからの観光客ばかりが目立つ)

 2008年のマドリード滞在で、今井君が1度だけコワい思いをしたのがグランヴィアである。「コワい思い」と言っても、暴漢に襲われたとか、後ろからいきなり首を絞められたとか、そういう物騒な話ではない。
 ちょっとクマの外見と迫力を見てみたまえ。この迫力ある毛もじゃら生物に暴力で対抗しようという勇気は、投げやりな暴漢生活を送るヒトビトにも、なかなか起こるものではないだろう。第一、こんなに断捨離寸前な服装で固めたクマなんか、襲って成功してみたところで、大した金品を奪うことは出来そうにない。
 では「コワい体験とは何か」であるが、グランヴィアの薄暗い裏町にズラリと居並んだド派手な女性たちと、その用心棒たちの光景である。
 ド派手な女性たちがどういう職業のヒトビトかは、そのド派手さと、用心棒のオニーサンたちの風体&鋭い眼光から、誰でも一目で察しがつく。諸君、スペインのド派手女性がどれほど濃密か、スペインの用心棒の眼光がどれほど強烈か、想像してみたまえ。
 現代の日本では滅多に見かけない「19世紀末的な退廃」が突如として眼前に現れたのだ。誰だって「あれれ、タイムスリップしちゃったかな?」という心の震えに見舞われるだろう。ああいう退廃の風景を、もう目の当たりにしたくないから、2012年の今井君はあえてグランヴィアを避けて歩くことにした。
クリスマス市
(マジョール広場のクリスマス市。サンタさんも寂しそうだ。我がMac君が「さんたさん」→「三田サン」と変換したことも書き加えておく)

 ソル広場と王宮の中間地点にマジョール広場があって、クリスマス市の真っ最中である。たいへん品行方正な広場で、四角い広場の4スミはほぼ全て90°の直角。小学校で初めて習った長方形のお手本みたいな、落ち着いた風情の広場である。
 しかしそのクリスマス市は、ドイツや中欧・東欧のものほどの盛り上がりはないようだ。もちろん経済危機ということはあるだろうが、何と言っても「雪が積もっていないこと」「凍てつくような寒さがないこと」が決定的である。
 雪もなく、痛いほどの寒さもないのでは、「こりゃ殺人的に寒いや」と余りの寒さに苦笑いしながら、ホットワインの温かい湯気を顔に感じることも出来ない。こんなに日が長くて、夕方5時すぎても夕陽がまだ高いところに残っているんじゃ、コドモたちがクリスマス・イルミネーションの下で歓声を上げることもない。クリスマス市は、圧倒的にブダペストのほうが楽しいようである。
不思議な生き物
(クリスマス市には、フシギな生物も現れる)

 あんまりクリスマス市が閑散として寂しいから、クマ蔵は「では、そろそろメシにするか」と考えた。何しろクリスマスが近い。ボヤボヤしているとどの店もみんな満席になって、「ホテルの部屋で夕食」という憂き目を見ることになりそうである。

1E(Cd) Preston:BACH/ORGELWERKE 1/6
2E(Cd) Preston:BACH/ORGELWERKE 2/6
3E(Cd) Preston:BACH/ORGELWERKE 3/6
4E(Cd) CHOPIN FAVORITE PIANO PIECES
5E(Cd) Preston:BACH/ORGELWERKE 4/6
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