Sun 120304 早寝、早起き、朝ゴハン いよいよアトーチャへ(サンティアゴ巡礼予行記3) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 120304 早寝、早起き、朝ゴハン いよいよアトーチャへ(サンティアゴ巡礼予行記3)

 12月15日、目を覚ますとすぐに「おお、またマドリードに来たな」という感慨に包まれる。窓の外にはプラタナスの大木が並び、茶色い枯れ葉が強い北風に吹かれて、カサカサ乾ききった音を立てている。スペインの冬は夏以上に乾燥するらしく、枯れ葉には湿り気が全く感じられない。靴で踏めば、あまりにもたわいなく粉々に砕けてしまう。
 昨日も書いたように、旅行のしすぎですっかりステイタスの上がってしまった今井君は、リッツみたいな超高級ホテルに泊まっても、確実に朝食は無料である。すると何しろ意地汚いクマ蔵だから、「ボクは朝食を食べると調子が悪くなる」と経験則で分かっていても、ついつい朝食会場に足を運んでしまう。
 こういうときの言い訳は「早寝、早起き、朝ゴハン」。日本中、空港や駅のポスターでも、テレビでも新聞でも雑誌でも、とにかく「朝ゴハンを食べてれば立派」「食べてなければ怠け者」と断ずる風潮。すると朝食を拒絶する今井君なんか、「講師の風上にも置けない下らないヤツ」「最低最悪」ということになって、普段はたいへんつらい思いに悩んでいる。
クリスマスツリー
(ホテルリッツ、エントランス前のクリスマスツリー)

 だって、朝食をとると、2時間後ぐらいにピンチに襲われるのだ。今みたいに収録授業ならいいが、生授業とか講演会とかで「お腹の大ピンチ」「お腹の急降下」「爆撃機に変身!!」という悲劇は、絶対に避けたい。
 旅行中も同じことで、特に南ヨーロッパのトイレ事情は日本とは比較にならない状況。だから無理して朝食なんか詰め込めば、その先の行方は目に見えているのである。
 しかし、それが「無料」「超高級ホテルの朝食がタダ」「もしオカネを払って食べれば4000円相当」という事実にさらされると、「いえ、食べると調子が悪くなりますから」とツンと済ましている余裕がなくなる。
 この辺が、ダラしなくて、意地汚くて、食いしん坊のクマ蔵の限界である。「早寝、早起き、朝ゴハン」「真央は食べてる。みんなは食べてる?」みたいなポスターだか標語だか合言葉だかが、強烈な一斉攻撃をかけてくるのはまさにその時である。
 早寝、これは全く縁がない。早起き、10日に1回ぐらいはするかもしれない。今井君もよく「生まれかわって、朝型人間に」と決意し、その決意は1日ももたずに崩壊して、モトの超夜型人間に戻る。こんなにダラしないんだから、仕方ない、旅行中だけでも神妙に朝ゴハンぐらい食べるか。まあそういう思考経路である。
プラド
(プラド美術館、エントランス)

 こういうふうで、クマ蔵はダラしなくヨダレを垂らしながら、エントランス近くの朝食会場に降りていった。幸いロンドンのホテルリッツと違ってドレスコードはない。断捨離寸前のセーターに、断捨離直前のズンボ、カカトが異様に擦り減ってその傾斜が30°にもなろうとしている安靴、こういう3種の神器でも、何の文句も言われずにテーブルにたどりついた。
 向こうのテーブルでは、朝食を前に早くもビジネスミーティングが始まっている。スーツ姿の男性2名といかにもエリートな雰囲気の30歳代女性。3人で穏やかに打ち合わせに励んでいる様子。朝9時からこんなに熱心に働いているなんて、とても南欧とは思えない。
 反対側のテーブルには、日本の上品な中高年夫婦。マドリードとロンドンのホテルリッツを比較し、「どのぐらいロンドンが優れていたか」を1つ1つ確認しては、熱心に頷きあっている。
 聞き耳をたてながら、それにはクマ蔵も同意見である。2年前に宿泊したホテルリッツ・ロンドンの朝食には圧倒的な高級感があって、いま思い出しても目が乾き、肩が凝り、首が痙攣するほどだ。ウーン、ロンドンはやりすぎ。マドリードは普通すぎ。ま、朝食はこの程度の方が良さそうだ。
プラド脇
(プラド美術館正面。ベラスケス像がある)

 マドリード初日のプランは、
① バスターミナルまで行って、グラナダ行きのバスチケットを購入、出来れば明日のサラマンカ行きのチケットも手に入れたい。
② マドリード基本コースの総復習。初日に「総復習」というのも奇妙な話だが、2008年11月のマドリード滞在からすでに丸3年経過している。最初に基本コースを復習して、マドリードについての「我が家感」を確保した方が、旅行全体に落ち着きが出るだろう。
 朝食会場から部屋に戻り、ゆっくりお風呂につかり、お風呂の隣の小部屋で「お腹の具合は大丈夫」であることをじっくり確認してから、午前11時、快晴のマドリードの街に出た。
アトーチャ
(アトーチャ駅)

 ホテルはプラド美術館のお隣だから、最寄りの地下鉄駅は「バンコ・デ・エスパーニャ」である。しかし乗り換えの便とか今後の小旅行などを考慮に入れると、徒歩で15分南下したアトーチャ駅を基本の駅とした方がいい。何と言ってもアトーチャはマドリード最大のターミナルである。
 ただし、昨年の経済危機以来「日本人を専門に狙う首絞め強盗」がマドリードに再び多発していて、ついこの間もアトーチャ駅付近の裏町で日本人が襲われている。最初はオッカナビックリなぐらいがちょうど良さそうだ。旅の序盤で被害にあっては、サンティアゴ巡礼予行演習も何もあったものじゃない。
地下鉄
(マドリード地下鉄。このデザインが大好きだ)

 3年前のガイドブックをみると「マドリードが一番危険」「首を絞められた」「ナイフで手を切られた」「空気がヤバすぎる」など、切迫感のある投書がたくさん掲載されている。しばらくナリを潜めていた強引な犯罪に、どうやら復活の兆しがあるらしい。
 ましてや「バスターミナル」ということになると、治安の悪さも、犯罪発生率の高さも、鉄道のターミナル駅以上。世界中どこへいってもその事情は変わらない。クワバラ&クワバラである。
 これからの道中の無事をくれぐれも祈りながら、さて、いよいよイベリア半島4回の旅を締めくくる「サンチャゴ巡礼予行」が始まる。オッカナビックリながら、大いに爽快な気分でプラタナスの枯れ葉を仰ぎつつ、アトーチャに向かってマドリードの街を南下していった。

1E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES③
2E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES④
3E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES⑤
4E(Cd) CHOPIN FAVORITE PIANO PIECES
5E(Cd) Casals:BACH/6 SUITEN FÜR VIOLONCELLO 2/2
total m20 y359 d8254