Tue 120214 吉本隆明、死去 黄昏れた気分と300系 トサカとソフトクリームとトンビ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 120214 吉本隆明、死去 黄昏れた気分と300系 トサカとソフトクリームとトンビ

 さすがに少し疲労がたまってきたのか、3月16日の今井君は何だか黄昏れた気分で1日を過ごした。もともと、1週間前の山口美江さん急死にショックを受け、気分はチョイ黄昏期に入っていたのだ。
 朝刊を広げて、いきなり「吉本隆明死去」のニュースが飛び込んでくる。吉本隆明については、今井君自身それほど好きでもなかったし、影響を受けたわけでもないが、高校や大学の友人たちには彼を神のように崇拝する人々だって少なくなかった。時代のスターの死去は、ヒトやクマを黄昏れた気分にして当然だ。
くちこ
(3月15日、我孫子からの帰りに寿司屋に寄った。「くちこ」が旨かった)

 知多半島の半田市で夕方から講演会があったので、昼の新幹線で名古屋に移動する。すると今度は「300系のぞみ、ラストラン」の文字が目に入る。「おっ、昼飯でも食うか?」。それはレストラン。いま問題にしているのはラストラン。一人でボケてみるとますます黄昏れてくる。咳をしても、一人。しかし「ボケてみても、一人」は寂しさがイヤ増すものである。
 のぞみ300系が走りはじめたのは20年前。昭和の大スター「夢の超特急ひかり号」を押しのけて90年代始めに登場した、精悍な顔のニクいヤツである。だって「ひかり」は、東京オリンピックの年から30年以上も日本のトップスターだったのだ。それを押しのけて、いきなりトップに君臨しようとするアイツが、今井君は何となくキライだった。
 テレビCMも記憶している。オジーチャンとオバーチャンが首を長くして待つ田舎に、かわいいマゴがパパやママと手をつないで旅立とうとするのである。「のぞみで行くからね」「のぞみで行くからね」。マゴの声でゆっくり力強く歌われる歌に、思わず涙が流れそうになった。
断捨離
(長年つきあった服を一着、断捨離)

 あれからたった20年。アイツの人生はどれほど惨めだっただろう。より精悍な風貌の後輩たちが次々と現れて、アイツを追い抜いていく。500系。700系。N700系。追い抜かれるたびに、かつてあれほど花やかだった彼の活躍の舞台は、のぞみからひかりへ、ひかりからこだまへと移っていく。
 地道に各駅に停車し、降りるヒトも乗るヒトもマバラな田舎町で日だまりのそよ風に吹かれていると、先輩のかつての栄光を忘れ去った後輩たちが高速で追い抜いていく。自分のあとを受け継いだ後輩のぞみの通過の衝撃で、左右に大きく車体を揺すぶられながら、「こういう地道な存在だって世の中には必要なのだ」と、吐き捨てるように呟いてみる。
 300系の後半生がそういう苦渋に満ちたものであったならば、クマ蔵は「20年間ありがとう」という程度の感謝の言葉で別れを告げることはできない。つらかっただろう。悔しかっただろう。アイツは、今でもなお後輩たちに負けないスピードで東海道と山陽道を疾走できるのだ。またどこかで花々しく活躍できる場を見つけてあげたい。
雨の名古屋
(名古屋は雨模様である)

 そうやってますます涙もろくなって名古屋に到着すると、名古屋は卒業式と謝恩会の嵐が渦巻いている。15年ほど前に「名古屋嬢」というものが流行したのを思い出す。名古屋嬢とはもちろん「名古屋のお嬢様」の略称であるが、ファッション誌のキーワードにもなった名古屋嬢は、卒業式&謝恩会の季節に花々しく復活するらしい。
 念には念をいれ、モトモトの顔が消えちゃうぐらいのメイク。それ以上に念を入れて高く盛り上げ、天井につっかえそうなヘアメイク。和服に袴にブーツ。そういうたくさんの名古屋嬢が、名古屋駅周辺を竜巻のように席巻。褐色や栗色に染めた髪を盛り上げられるだけ盛り上げた姿は、ダブルかトリプルのソフトクリームも顔負けである。
 「男子はどこへ行ったんだ、男子は?」であるが、男子たちは薄暗い隅に追いやられ、みんな同じ黒いスーツとニワトリのトサカみたいなヘアスタイルで、すっかりフテくされている。ボクチンは叫びたい。「男子よ、もっと勇気をもって、前面に出てきたまえ」である。
控え室で自分撮り1
(知多半田の控え室で自分撮り 1)

 名古屋嬢の大集団がマリオットホテルのロビーまで席巻し、怯えたような顔の男子が隅っこに固まっている様子を見ると、やっぱりクマ蔵も男子の端くれだから、悔しくも寂しくもなり、寂しさは悲しさに変わり、悲しさは黄昏れ気分をますます高めてしまう。
 こういう時はホテルの最上階の部屋から下界を眺め、無責任に絶叫でもすれば気分も切り替わるのだが、あらら、今日に限ってマリオットの部屋は28階である。ついこの間は49階だったから、28階から下界を見ても何だか「低層階」な感じで意気上がらない。しかも、Mac君にも茶化される。「ていそうかい」で「貞操会」はないだろう、キミ。
低層からのながめ
(低層階からの眺め)

 部屋でしばらく休んで、夕暮れの名鉄名古屋駅から知多半田に向かう。知多半島にも渥美半島にも行ったことはないから、これが初知多&初渥美である。夕方になっても名古屋は女子大生のソフトクリームてんこもりだし、隅っこでは相変わらずトサカが渦巻いて、まさに足の踏み場もない。
 特急電車は満席。座席指定は「最後の1席」が奇跡的に手に入って、知多半田まで約30分、ギューヅメの指定席で突っぱらかって我慢する。マコトに不思議なもので、こうして気分が黄昏れていくと、暗くなった外では冷たい雨が降りはじめた。
控え室で自分撮り2
(知多半田の控え室で自分撮り 2)

 駅前でスタッフと待ち合わせ、講演会場までタクシーに乗る。マコトにマコトに不思議なことに、黄昏れた気分で乗るタクシーの運転手さんは、ご機嫌斜めであることが多い。いきなり「は? …ホール? そんなん、歩いていったほうが早いですよ」と軽く舌打ちして、ありえないほど不承不承にハンドルを握ってみせた。
 会場までのルートがまた何とも不思議である。まず駅前で大きく1つ円を描く。ありゃりゃ、円を一つ描いて駅前にまた戻ってきた。踏切をわたって、その先でまた1つ円を描く。ありゃりゃりゃ、円を描いてまた踏切に戻ってきた。
 ちょっと行って巨大ホールが見えてくる。今日の会場はあれである。すると、ありゃりゃのりゃ、タクシーはいったんホールの先まで行って、それからもう1度小さな円を描いてホールの玄関に着いた。大小3つの円を、小学生のコンパスか秋の盛りのトンビみたいに、クルクル&クルクル楽しく円を描き、ようやく到着したわけである。
豪華控え室
(豪華控え室)

 さっそく、豪華控え室に入る。大ホールの控え室だから、有名タレントさんも使用する広々としたお部屋。演歌歌手さんも、お笑い芸人さんも、クラシック界の有名人も、知多半田を訪れれば必ずこの控え室を使うのである。控え室内に洗面室もシャワーもあって、要するにここに宿泊だって出来る。うにゃにゃ、こりゃ豪華だ。
 で、肝腎の講演会であるが、今日はもう長く書きすぎた。黄昏れているときは、ヒトはとかく文章が長くなりがちである。これじゃ読まされるほうがタイヘンだ。今日はこのぐらいでヤメておこう。いや、ヤメにしてあげる。知多半田大講演会の模様は、明日の記事で読んでくれたまえ。

1E(Cd) Bill Evans & Jim Hall:INTERMODULATION
2E(Cd) John Dankworth:MOVIES ’N’ ME
3E(Cd) Duke Ellington: THE ELLINGTON SUITES
4E(Cd) Stan Getz & Joao Gilberto:GETZ/GILBERTO
5E(Cd) Keith Jarrett & Charlie Haden:JASMINE
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