Mon 120213 電車の中での読書について 千葉県我孫子でのクマえもん講演会 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 120213 電車の中での読書について 千葉県我孫子でのクマえもん講演会

 3月15日、大阪→長崎→神戸の連続出張が一段落し、久しぶりに東京の自宅で目覚めた今井君ではあるが、今日も今日とて千葉県我孫子で講演会がある。明日からは再び名古屋→京都→神戸であって、まさに息つく暇もない。
 今日の我孫子は、近いようで遠い。代々木上原から始発の「常磐線直通・我孫子行き」地下鉄千代田線に乗れば、1度も乗り換えなしで我孫子に着くけれども、そのためには1時間15分ほど、例の地下鉄の窮屈な座席でつっぱらかっていなければならない。
 「いいじゃないか、1時間半、だれにもジャマされずに読書に励めるじゃないか」と、マジメなヒトなら言うに違いない。小室直樹博士でも、今井勉教授でも、今井君がこの半月ぐらいで話題にしてきた貫徹タイプのセンセイなら、地下鉄の1時間半は恰好の読書の場であるはずだ。
 加藤周一は名著「読書術」の中で、「電車で本の読めないヒトは…でしょう」と喝破した。小林秀雄も同じ表現をつかっている。…部分はちょっと厳しすぎる言葉なので、クマ蔵ブログでは伏せ字にしておく。どういう表現か知りたいヒトは、図書館に走るべし。光文社カッパブックスか岩波現代文庫で読めるはずだ。
我孫子1
(我孫子での講演会 1)

 しかし諸君、21世紀の電車は「恰好の読書の場」とするには騒音が多すぎる。もう何度も書いたことだが、特にヒドいのは京王線と東京メトロとJR。車内アナウンスがあまりにもご丁寧で、ヘッドフォンの音楽さえマトモに楽しめないほどである。
 東京メトロの場合、始発駅を発車した途端に「お待たせいたしました。この電車は…」という電車君の自己紹介から始まって、途中駅や乗り換えの案内、電車とホームの間が広く空いているから気をつけなければならないこと、発車間際の駆け込み乗車は危険であること、ただいま春の交通安全運動が実施中であること、その他の諸注意が延々と述べられる。
 もう5年以上になると思うが、東京都民にはすっかりオナジミのアニメ声。「何でそんなにカワイコぶるの?」である。アニメ声の日本語が終わると、間髪を入れずに英語アナウンスに変わる。英語のほうもまたたいへん特徴的で、まあ今井君は余り好きじゃない。乗り換え案内の前置詞「for」が奇妙なほど強調されるのが特にイヤ。英語に混じる日本語の地名だけ、発音が完全に日本語なのも耳に障る。
我孫子2
(我孫子での講演会 2)

 駅に着けば駅に着いたで、強い切迫感のある差し迫った駅アナウンスが耳につく。ドアが開くたびにピンポンピンポン&ピンポンピンポン鳴り響くし、発車が迫れば音楽とクレッシェンドの笛が鳴るし、「ドアが閉まります。ご注意ください」だし、「発車間際の駆け込み乗車はおヤメください」であって、停車は息つく暇ないマナー講座の趣がある。
 それでも意地でも駆け込み乗車をしたいヒトは後を絶たないので、ドアは何度か開いたり閉まったりする。すると、発車直後にイライラした車掌さんの声で生放送が入る。「ドアが閉まりかけての駆け込み乗車は危険です。絶対におヤメください」と、よほどムカついたのか、ほとんどタタキつけるような強い口調で、車内の乗客全員が厳しく叱られる。
 厳しい叱責のあとは、同じスピーカーからおなじみアニメ声。アニメ声が終われば英語日本語まじりの英語アナウンス。たった1分かそこらでまた駅が近づけば、「電車とホームの間が広く空いております」。繰り返されるこの騒音の中では、たとえ読書が出来なくても加藤周一や小林秀雄の両先生に…と呼ばれるのは許してもらえそうである。
我孫子3
(我孫子での講演会 3)

 今井君の学部生時代は千葉の松戸から大手町経由で早稲田まで通っていたから、電車の中を読書スペースにして、毎日往復約2時間の読書を楽しんだものである。18歳の今井君は東洋文庫に夢中。あの4年で読破した東洋文庫には「耳袋」「今古奇観」「元曲五種」「ミリンダ王の問い」や南方熊楠「十二支考」などがある。
 そういえば「甲子夜話」も読んだ。諸君、こりゃ長過ぎる。何巻あるか、調べてみたまえ。今井ブログも開始以来4年近く経過し、これまでに書いたブログをまとめて本にすれば文庫本にして20冊の分量があるが、「甲子夜話」の長さはそれに勝るとも劣らない。
 江戸時代のブログみたいなものだから、もちろんすべて近世の古語である。いやはや、今井君だって若い頃は電車の中をキチンと読書スペースとして活用していたのだ。これから浪人するヒトと始め、高校生でも大学生でも、このぐらいのことは是非ともしてほしいものでござる。
ケーキ
(我孫子で出してくれた春っぽいケーキ)

 しかし前段に書いた通り、東京の電車車内はアナウンスが激しすぎて、集中力の強くないヒトにとっては読書に不向きな場所になりつつある。難しいものやカタいものは読みにくいから、ついついフザケた本や困った本を携帯するヒトが増える。
 我孫子に向かう千代田線の中で、今井君の隣の席に座った60ガラミのオジサマは、早速鞄から文庫本を取り出した。「おお、読書家であるね」と感心し、「どんな本なのかな?」と好奇心が湧いて、チラッと覗いてみると♨何と何と♨おやおや、である。
 諸君。たった数行見えただけで、どんな本なのかクマどんは完璧に見抜いてしまった。しかも今井君の記憶力は今もなお抜群。一瞬見えたその数行を、いまここにそのまま書き出すことが出来るが、ブログにも品位というものがある。品位&品性が極めて高い今井ブログとしては、とてもここに書けるような数行ではない。
 ま、肉体のある特定の部分をストレートに指し示す単語が、わずか数行の中にまさに目白押し。「どうすればそんなに入るの?」という、アメ玉かアサリのつかみ取りみたいな、その種の小説なのであった。電車の中だ、何をするのも自由。しかし隣にコドモや女子高生も座るのだ。「オジサマ、60近くにもなって、何て本を読んでらっしゃるの?」である。
我孫子4
(我孫子での講演会 4)

 我孫子には18時に着いた。3月15日の首都圏とは思えない冷たい強風が吹き荒れて、各地で「架線にビニールが引っかかったため運転見合わせ」が相次ぎ、船橋方面からくる武蔵野線も止まってしまった。この数日、大きめの地震も相次いで、電車がストップすることが多い。講演をする人間としては大いに不安である。
 我孫子での講演会、19時半開始、21時終了、出席者105名。写真で見る通り、「完全にこれで満杯」「これ以上は1人も入らない」「出来れば吊り革が欲しいぐらい」という大盛況。いつも通り湯気があがり、酸素欠乏の1歩手前に迫り、格安航空の機内よろしく膝が前の席につっかえて、身体の大きい高校生が可哀想なほどだ。
我孫子5
(我孫子での講演会 5)

 そこへ今井講演ならではの爆笑の連続攻撃が始まるから、「こりゃたまらん」である。格安航空なら90分間おとなしく狭さに耐え忍ぶだけだから何とかなるが、この状況で90分に約150回、腹を抱えて笑わなければならないとすれば、こりゃたいへんだ。
 「ひえ、もう助けて」であり「ホント、もうヤバい」であって、90分後に教室から解放されるころには、ほぼ全員が生まれ変わり、ほぼ全員の人生が力強く前進しはじめている。ドラえもんのポケットからは何でも出てくるが、クマえもんの講演会はむしろ、クマえもんのポケットの中に詰め込まれて爆笑を繰り返すうちに、スンバラシイやる気の魔法をかけられるような、そういうシロモノなのである。

1E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER③
2E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER③
3E(Cd) CHOPIN FAVORITE PIANO PIECES
4E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER③
5E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER③
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