Fri 120210 長崎の果物屋でザボンを買ってみる 3月11日、長崎市で講演会 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 120210 長崎の果物屋でザボンを買ってみる 3月11日、長崎市で講演会

 3月10日、佐世保の講演会に向かう前の昼下がり、春のそよ風が暖かい長崎の街を徘徊していると、大きく「さぼん」の看板を掲げた果物屋さんを発見。棚にはたくさんのザボンがキレイに並んでいる。ザボンって? まあ、巨大な夏ミカンと思えばよろしい。
 ポルトガル語でサイダーを表すzamboaからの転訛という説があるらしい。おやおや、すると「かつてポルトガルの支配を受けたアフリカのザンビア共和国とも関係あり?」と思うが、今日の今井君は忙しすぎてそれを調べている余裕がない。
 「バレーボールの大きさ」と言えば少々大袈裟だが、ソフトボールよりは明らかにデカイ。ソフトボールの約2倍な感じ。値段は1個800円から3000円前後まで。大きくなるに従って値段も高くなる。店のオバサンが出てきて、食べ方まで丁寧に教えてくれた。
ざぼん
(スマホで撮影する鏡の中のクマ蔵と、ザボンvsペットボトル)

 クマ蔵としては、「特選」の札が貼られた2500円のものが欲しかった。贅沢な特選ザボン君は、お顔も黄色くテカテカ光り、「わしゃ、バレーボールなんかに負けんよ」と強烈な負けん気を感じさせる。見た目の弾力も、「誰にも負けん」という内に秘めた闘志のようなものも、特選の名にふさわしい。
 しかし今のクマ蔵は5泊6日の長期出張中の身。食べるとしてもホテルの部屋で寂しく皮を剥かなければならない。店のオバサンは「ホテルのフロントに頼めばよろしか」と、いかにも無邪気に微笑んでくれたが、佐世保から帰るのが午前1時を過ぎる御前さま状況が確定している状況で、「すみません、ザボンの皮むいてください」とはどうも言い出しにくい。
果物屋さんのざぼん
(ザボンの実の並んだ棚。壮観だ)

 思考と逡巡の迷路の果てで迷いに迷ったクマ蔵は、何とも中途半端な1000円のザボンを購入。すぐ近くのスーパーで300円の果物ナイフも購入。ホテルの部屋に戻って、佐世保に出発する時刻が迫る中、ザボンと格闘することになった。
 「もし気に入れば、長崎から東京に戻る12日の午前中にまたこの店にきます。その時はもう少し高級なのを選びます」とオバサンに約束した。ホントはデカイのを買って帰って、ニャゴロワとナデシコをビックリさせてやりたいのだ。
 臆病なナデシコは、この黄色いカタマリを見た瞬間にパッと後ろに飛び退くに違いない。例の真っ黒な丸い目を見開いてザボンを見つめ、3秒後には大急ぎで物陰のネグラに退散、しばらくは出てこようともしないだろう。そういうネコである。
ナデシコとザボン
(ナデシコとザボン)

 大胆不敵で好奇心旺盛なニャゴロワは、おそらく「オマエなんかに負けないよ」という面構えで、ザボンの至近距離にゆっくり腰を下ろすだろう。「何だ、オマエは?」と激しくガンを飛ばすに違いない。
 一昨年12月に判明した腎臓病で、獣医さんには「100日で死ぬかもしれません」とまで冷酷に宣言されたが、400日以上経過しても、死ぬどころかビクともしない。「ちょっぴり気が弱くなったかな」と感じることはなくもない。しかしライバルに対する意気軒昂ぶりは威風堂々の形容も大袈裟ではない。
ニャゴロワとザボン
(ニャゴロワとザボン)

 おそらくニャゴは右手を鋭く尖らせて、ゆっくりと何度かザボンをつついてみるのである。もちろんザボン君の反撃も予想して、緒戦は「つついては、すぐ撤退」というジャブの応酬になるだろう。
 ところが、ザボン君は何の反撃も試みない。4度、5度、ニャゴは次第に居丈高になって、ザボン君への攻撃は激しさを増す。「なんだオマエ、反撃の勇気もないのか?」「意気地なしだな」と、ヒゲを震わせて軽蔑の表情を作ってみせる。しばらく至近距離からガンを飛ばし続けるが、やがていきなり興味を失い、長いシッポを垂直に立ててネグラへと悠然と去っていく。クマ蔵はその後ろ姿が見たいのだ。
(2匹とザボン)
(2匹とザボン)

 YouTubeを検索すると、小畑実「長崎のザボン売り」にヒット。1972年の映像だが、曲自体は1948年のものらしい。作詞:石本美由起である。Macくん、「いしもとみゆき」で「医師も富之」とか、そういうフザケた変換するのヤメてくれないかな。
 諸君、戦後直後の長崎には、ザボン売りの娘がたくさんいたらしいのだ。長い格闘の末、ついに手に入れた酸っぱいザボンの実をかじりながら、今井君がYouTubeから書き取った石本美由起の作詞は以下のようなものである。

鐘が鳴る鳴る マリアの鐘が 坂の長崎 ザボン売り
銀の指輪は どなたの形見 髪に結んだリボンも可愛い 
可愛い娘 あゝ長崎のザボン売り

風がそよそよ 南の風が 港長崎 ザボン売り
呼べば見返る頬笑みかける 誰も見とれるエクボの可愛い
可愛い娘 あゝ長崎のザボン売り
(ザボンの実と小畑実)
(ザボンの実と小畑実)

3月11日、長崎市で講演会。高校入試を終えて5日後の合格発表を待つ中3生と、その保護者が対象である。中3生120名と保護者が20名。合計140名が出席して、長崎新聞本社ビル2階の会場は満員の大盛況になった。
長崎1
(長崎市での講演会 1)

 14時開始、15時半終了。この講演が決まった時からずっと「14時46分になったら、全員起立して1分の黙祷を捧げることにしよう」と決めていた。保護者の皆さんが講演対象になっているとは予想もしなかったが、14時45分までに講演の前半をキチンと終わり、司会者にお願いして「全員起立」の号令をかけてもらった。
 場所は長崎市中心部であって、この黙祷には一層深い意味があったと思う。1分間、粛然と黙祷して、犠牲者の冥福を祈り、再び着席して講演の後半に入った。
長崎2
(長崎市での講演会 2)

 もちろん、前半も後半も講演自体のペースはいつもの講演と同じである。3月11日に手放しで笑いこけているわけにはいかない。しかし「笑うたびに前進し、前進するたびに笑う」という前進の精神も、やはり忘れてはならない。
 相手が中3生であるから、ほぼ全員が初対面。マジメな生徒が大部分で、「エラい先生の公開授業なのに、ホントに爆笑とかしていいの?」だったのだろう。最初10分ほどは必死で笑いをこらえている様子だったけれども、10分過ぎて一度笑いが弾けてしまうと、もうニッチもサッチもどうにも止まらなくなってしまった。
 特に激しく反応していたのが保護者の皆さんである。この日は「生徒は前、保護者は後ろ」と座席指定をしてあったから、後方の2列に40歳代ぐらいのパパとママがズラリと並んだ。最初に大爆笑が始まったのは、その2列である。
 顔を真っ赤にして必死でこらえるお父さん。涙を何度も拭いながら前後に身体を大きく揺らして爆笑するお母さん。生徒たちが「いったい何の騒ぎなんだ?」と怪訝な表情で保護者席を振り返るほどの、悲鳴に近い爆笑が続いた。
長崎3
(長崎市での講演会 3)

 午後5時から、長崎西洋館の「かがりや」にてお食事会。今日だけは「祝勝会」という言葉は避け、懐石料理で穏やかに語り合うことにした。お酒も控えめに。去年の今頃は、富山で講演会をして、特急のすべて止まってしまった北陸本線を、薄暗い各駅停車で金沢に向かっていたのだった。

1E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER③
2E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER③
3E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER③
4E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER③
5E(Cd) CHOPIN FAVORITE PIANO PIECES
total m58 y222 d8117