Sun 111218 ナバジャス三昧が終わりを告げた理由 9月の雷雨(バルセロナ滞在記12) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 111218 ナバジャス三昧が終わりを告げた理由 9月の雷雨(バルセロナ滞在記12)

 だって、「海老大王」に長居することになるのは、どうにも仕方ないだろう(スミマセン、昨日の続きです)。噛みしめなきゃいけないのは、生ハムだけじゃないのだ。最初のうちは「生ハム、食む食む」とか、のんきにバカバカしいことを言って浮かれていたけれども、やがて噛みしめなければならない食材は「イカ」「タコ」「ナバジャス」へと増えていった。
 実は、最初のころはむしろナバジャス(Navajas)に夢中だったのである。語源は「navajazo:ナイフ一刺し」。「navajero:ナイフ強盗」というのもある。英語名razor clamまたはrazor shellだから、やっぱりこの貝はナイフを連想させるのだ。
 日本でもマテ貝と呼んで、煮付けや味噌汁にしたり、寿司ネタにする地方もある。「何でそんなこと知ってるの?」というに、今井君とマテ貝の出会いは小学校低学年のころ夢中だった小学館「魚貝の図鑑」。「何だこのマテ貝とかいう変なヤツ?」と思って大好きになったヤツらである。
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(海老大王のナバジャス)

 スペイン語でJは「ホタ」であって、母音をつければハヒフヘホ。Jesusは「ヘスス」であり、Julioは「フリオ」である。それならばNavajasは「ナバハス」であって、「ナバジャス」ではないはずだ。ところが、バルセロナのウェイターには「ナバジャス」のほうが通りがよかったし、相づちを打ちながら「ナバジャス!!」と復唱してくれた。
 バルセロナはカタルーニャであって、マドリードへの対抗心が強い。言語もカタルーニャ語。イタリア国境やフランス国境もすぐそばだから、標準スペイン語とは発音も含めて相当な相違があるようだ。だから彼らが「ナバジャス」と言うなら、バルセロナでは「ナバハス」ではないのだ。
 例えば電車のチケットを買うとき、スペイン語で「往復」は「イダ・イ・ブエルタ」。イタリア語なら、「アンダータ・エ・リトルノ」。バルセロナでは中間をとって「アンダータ・イ・ブエルタ」らしい。電車の中で検札が回ってきたとき、複数の客がそう発言していたのをクマ蔵は聞き逃さなかった。
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(タパスのイカも巨大、しかも2ハイでござるよ)

 しかしさすがにスペイン人は日本人ほど繊細ではないのか、貝の中に少し砂が残っている。ジャリジャリまではいかないが、シャリシャリはするのである。いや、シャリシャリでは、ちょっと甘すぎる。ここも中間をとって「じゃりシャリ」または「しゃりジャリ」とでも表現しておこう。その「しゃりジャリ」「じゃりシャリ」な貝類を、毎日毎晩20個も食べていたのでは、さすがにだんだんウンザリしてくる。
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(サンジュセップ市場で出会ったナバジャス君たち 1)

 しかも、腹一杯ナバジャスを食べた翌日、ホテル近くのサンジュセップ市場で、生きているナマのナバジャスを大量に目撃。諸君、昨日お腹いっぱい詰め込んだ食べ物が、こんなにヌルヌルで、こんなにネバネバで、こんなにニュルニュルな軟体動物ぶりを貝殻の外へ遺憾なく発揮しているアリサマを目撃してみたまえ。
 今井君の食欲は一気に減退。「もう、ナバジャスは十分食べた」と負け惜しみor気休めor言い訳を繰り返し、「今日からはイカと生ハムの日々にする」と宣言して、翌日からナバジャスを注文することは一切なくなった。
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(サンジュセップ市場で出会ったナバジャス君たち 2)

 固いものを噛みしめることに疲れ、イカと貝と生ハムキューブを噛むのに疲れ果てたクマ蔵を救ってくれたのが、パタタス・ブラバス(Patatas Bravas)である。カンタンに言えば、熱いポテトにトマト系の辛いソースを絡めただけのものだが、海老大王ならたった3.5ユーロで、ワシワシ噛まなくても飲み下せる食べ物がテーブルに出てくる。
 バルセロナ滞在1週間が経過して、口内炎がツラくなり始めた頃、「もうナバジャスはウンザリだ」「あの始末に負えないネロネロ&ニュルニュルから、できれば離れて暮らしたい」と悪夢に悩まされてうめいていた頃、パタタス・ブラバスの温かいホクホク感がクマ蔵を何度も救ってくれた。
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(サンジュセップ市場で出会ったナバジャス君たち 3)

 9月中旬の地中海沿岸では、夕暮れに激しい雷鳴が轟くことがある。数年前のニースでは激しい雷雨が毎晩襲ってきて、雷雨の翌朝は一気に気温が下がったものだった。秋の訪れはあっという間で、翌朝にはもう「海に入るなんて、とんでもない」と思うほど肌寒く、昨日まであんなに青かった海は凶悪な白い三角波に覆われていたりする。
 バルセロナ「海老大王」のバカバカしい夕食の最中にも、一度雷雨に襲われた。雷雲がどの方向から接近してきたのかはよく分からないが、不気味な遠雷が轟いていると気づくと間もなく大粒の雨が降りだした。
 こういう店のテーブルは、たいがい屋外に帆布の傘みたいなのを張りめぐらしただけだから、いったん雷雨となれば、安全な店の中に皆で避難しなくてはならない。もちろん店の中は狭く、テーブルも余り多くないから、一気に大混雑。雨が過ぎるまで立ちん坊の客も多く出る。
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(夕暮れ、雷雨の近づくバルセロネータ)

 それでも、どんなに混雑しても和気アイアイとしているのが、こういうバカバカしい店の楽しいところである。雷雨が通り過ぎるのを待ちながら、みんな楽しそうに顔を見合わせて「まだですかね?」「すぐですよ」と頷きあう。
 大家族が囲んでいるテーブルには幼児や乳児もいるが、泣き出しそうな子供たちに声をかけてなだめている酔っぱらいなどは、むしろこの雷雨騒ぎを心行くまで楽しんでいる様子である。
 もちろん、あまたの酔っぱらいの中で一番酔っぱらっているクマ蔵も、この雷雨が面白くて仕方がない。雨が降りだす前に、すでにロゼワインのボトル2本をカラッポにしていたのである。店の奥のカウンターに立って、楽しくて楽しくて、もう黙っていられない。
 心配そうに外の激しい雨を眺めている店のヒトをつかまえて、サングリアをグラス1杯注文、あっという間に飲み干した。甘いサングリアが胃袋の中に収まった時、気温がスーッと急激に下がったように感じたのは、実際にそうだったのか、サングリアのおかげだったのか、今ではもうよく分からない。

1E(Cd) Gregory Hines:GREGORY HINES
2E(Cd) Alban Berg Quartett:SCHBERT/STRING QUARTETS 12 & 15
3E(Cd) Alban Berg Quartett:SCHBERT/STRING QUARTETS 12 & 15
4E(Cd) Dave Matthews Band:CRASH
5E(Rc) Solti & London:HAYDN:SYMPHONY No.101 & 96
total m85 y1721 d7678