Sun 111204 3たび「アレカの店」へ ギリシャ再訪を誓う(ギリシャ紀行最終回) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 111204 3たび「アレカの店」へ ギリシャ再訪を誓う(ギリシャ紀行最終回)

 アテネ総復習に半日かけて、午後3時、3たび「アレカの店」を訪れた(スミマセン、昨日の続きです)。今日も早速ネコたちが足許にからみついてくる。まず乳牛柄のネコが現れ、次に小さなトラ柄の子猫がやってきた。
 子猫のほうは店のヒトたちに可愛がられているらしい。小さな古いザブトンを与えられて寝転がり、客の残した残り物をエサとして与えられている。撫で方もエサの与え方も、こちらがハラハラするほど荒っぽいが、これがギリシャの流儀なら仕方ない。
アレカ猫1
(アレカの乳牛柄ネコを左手で撮影。この木製の不安定な段の上にテーブルと椅子がのっかっている)

 例の階段状のテーブルと椅子を不安定にガタガタさせながら、今日もイカとスブラキを食べ、試しにスープを頼んでみた。このスープが難物。お米のタップリ入った、要するに重たい雑炊だったのである。「今日は最後だからタップリ食べるぞ」というクマどんの意気込みは、この雑炊ですっかりシュンとさせられてしまった。だって、お腹がいっぱいになると、お酒だって進まないのだ。
アレカ猫2
(アレカの子ネコ)

店の人にエサをもらう
(店の人にエサをもらう)

 ガッカリしていると、クマ蔵の後ろの席にフランス人一家がやってきた。50歳代のパパとママ、高校生か大学生の息子と娘、絵に描いたような中流家庭の4人。「パパがちょっと酔ってるかな?」「息子も娘も、ちょっとパパが嫌いかな?」と思わせるあたりも、典型的中流家庭の休日である。
アレカスープ
(アレカの店の雑炊スープ)

 「おお、幸せそうだね」とクマ蔵が目を細めた瞬間、パパが座った椅子の足が階段状の床の端から外れて、パパは後ろ向きにひっくり返ってしまった。一歩間違えば「頭を打って大ケガ」というところだが、まあ危機一髪で助かった。
 こんな滑稽な騒ぎの傷口も、幸福な中流家庭の人々はサッサと塞いでしまう。こういう時にママや子供が異様に恥ずかしがって「パパ、ヤメてよ。恥ずかしい」「アナタ、ヤメてよ。みっともない」「オヤジ、バッカじゃねえの。やってらんねえよ」の類いの総攻撃を加えたりすると、幸福な休日は見ていられない惨劇に変わる。
 しかしこの家族は、ホントにまるで何一つ滑稽なことは起こらなかったように、一切を無視してひたすらメニューを眺め、着々と注文を決めた。おお、立派な家族だ。その家族を眺めて、頭上ではおそらくディオニュソスのつもりのお面がニコヤカに笑っていた。
アレカ店内
(アレカの店、店内のディオニュソスのお面。髭と笑顔がクマ蔵を思わせる)

 息子が前菜にフルーツ盛り合わせを注文して、前菜としてタップリ盛られたスイカをサクサク食べているのには度肝を抜かれたが、どうもフシギな光景ではないらしい。娘もパパ&ママもスイカに手を出して皆でサクサクやっていたし、スイカを平らげた後で肉やら魚やらのメインディッシュが運ばれて、一座はますます盛り上がっていったようである。
ギリシャお土産
(サントリーニで購入のギリシャ土産)

 こうして、41回にわたったギリシャ紀行はマコトに目出度く終わりを迎える。今井君が2週間にわたって見たものは、神殿や教会の廃墟の着実な荒廃であり、直射日光を浴びた大型犬たちの穏やかな寝顔であり、何の工夫もないスパゲティ・ナポリタンと店主たちのアキラメの表情や罵声であり、トカゲと雑草と多肉植物の繁茂であった。
路上のイヌ
(灼熱の路上に横たわる大型犬)

 もちろんその夜もホテル真下の広場では政治集会が続き、国会議事堂前では1時間ごとに衛兵交代の儀式が行われ、儀式は深夜から早朝までマコトに粛々と繰り返され、儀式が始まるとシュプレヒコールは止んだ。1%の人々のそういう激しい日常が続いている中、もちろん99%のアテネ市民のごく普通の日常も続いていたのである。
 今井君も早朝から2週間分の荷物を作り直し、朝9時、ホテルKING GEORGE Ⅱをチェックアウトした。このホテルは「DON’T DISTURB」のカードが秀逸。写真に示した長い長い赤いカードには「I’M GETTING READY TO GO TO THE RED CARPET. DO NOT COME IN」とある。ギリシャの人々も、なかなかオシャレな工夫をするのである。
ドンディス
(Don't disturb)

 ギリシャ危機に火がついて、ドイツやフランスの首脳に叱り飛ばされながらパパンドレウ首相が退任したのが、この1ヶ月後。あれからしばらく政治も経済も平静を保っているようだが、もちろん首相1人の交代で事態が急激に好転したりはしない。
 静かな荒廃や退廃は深いところで進行するだろうし、イヌたちは相変わらず眠り続け、ナポリタンも店主たちも、トカゲと多肉植物の跋扈も、変わらぬギリシャの姿としてこのままであり続けるだろう。
 しかし諸君、クマ蔵はスーニオン岬を見残して帰ってきた。いつか、あまり遠くない将来、どうしても再びギリシャを訪ねてスーニオンの夕陽を見なければならない。それまでは、ギリシャに崩壊してもらってはどうしても困るのである。
シャンデリア
(KING GEORGE Ⅱ、ジュニアスイートのシャンデリア)

1E(Cd) Weather Report:HEAVY WEATHER
2E(Cd) Sonny Clark:COOL STRUTTIN’
3E(Cd) Kenny Dorham:QUIET KENNY
4E(Cd) Shelly Manne & His Friends:MY FAIR LADY
5E(Cd) Sarah Vaughan:SARAH VAUGHAN
total m20 y1656 d7613