Tue 111122 アテネの鮮魚市場で考える 食肉市場で震える(ギリシャ紀行32) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 111122 アテネの鮮魚市場で考える 食肉市場で震える(ギリシャ紀行32)

 東アジアは大将軍様逝去のニュースで、株価急落、通貨急落と「有事のドル買い」、いろいろたいへんなことになっているらしいが、ヨーロッパ旅行中の今井君には今のところ特に影響はない。韓国や中国の人々も、相変わらず陽気に、かつ他の東洋人に対して極めて攻撃的な態度で、それぞれ街を散策している。
 ブログに掲載中の旅行記は9月のギリシャ滞在記だが、現在の現実の今井君が歩き回っているのは南スペインの田舎町である。南には真っ白な雪をかぶった3500m級のシエラネバダ山脈。「シエラネバダ」という山脈はアメリカにもあって、こちらは4000m級。世界はかくも広く、かつややこしい。
青果市場1
(アテネ、青果市場に整列したリンゴ君たち)

 9月2日の今井君は、アテネの食肉&鮮魚市場を訪ねるところであった。鮮魚市場のほうは、築地とか八戸「八食センター」を見慣れた目には、むしろ何だかおとなしく映る。大量のイカ&タコ&おサカナが実にキレイに並べられていて、そのお茶目な並べ方に、アテネのヒトたちのイタズラっぽさが象徴されているようである。
 同じように、青果市場も大人しい。リンゴでもブドウでも、オレンジでもオリーブでも、日本人顔負けの几帳面さで、縦横方向も垂直方向もほぼ正確に90°の角度で並べられている。
 クマ蔵はこういう執拗さを「モザイク的執念」と呼んでいる。考えてみれば、あの巨大なギリシャ神殿も、硬い大理石をモザイク的執念で数百年かけて積み上げたのだ。この国民は、モザイク作りが好きなのである。
青果市場2
(アテネ青果市場で。ブドウ君たちの整列)

 何だか、受験生時代の今井君を髣髴とさせるものがある。空間図形が出てくるといきなり数学が苦手になる今井君は、公式を駆使して几帳面に計算すれば解けるタイプの問題は大の得意。しかし2次平面までは何とかなっても、話が空間に及んで
「この問題は、絵を描けばカンタンに解けますね」
「力ずくの積分計算で解くのは、イモですね」
ということになると、途端にくじけてしまう。
 モザイク人間である今井君は、本棚も驚くべき几帳面さで整理する。天井まで届く9個の本棚をもしも目撃したら、あなたは「コイツは偏執狂だ」と確信するに違いない。しかし逆に、部屋も本棚もメチャメチャで「確かあそこにあったはずだ」みたいな、自由で自由すぎる発想の人は、ボクチンはこの上なく苦手なのである。
鮮魚市場1
(鮮魚市場で 1)

 モザイク好きの人間は、いったんモザイクや本棚を突き崩されると、一気に弱さを露呈する。危機対応能力に、著しく欠けるのかもしれない。ギリシャ危機って、理論や学説が覆された世界でこのタイプの人が経験する危機に似ているような気がしてならない。「あれ?」「あれれ?」「あわわ!!」「げ!!」、そういう奇声を発しているうちに、今井君の東大入試の数学は、見事に1問も解けずに過ぎ去っていた。
鮮魚市場2
(お魚の並べ方がお茶目だ。アンコウ君も笑っている)

 鮮魚市場と青果市場の几帳面な様子がそういうツライ思い出をかきたてた反面、乱暴な罵声が飛びかう食肉市場の豪快さは、再びクマ蔵に活力を与えてくれる。ギリシャ語がほとんど分からないから耐えられるが、この情け容赦ない罵声の乱舞は、おそらくアレクサンダー大王時代から受け継いだ無限の活力がその根源なのだ。
「何してんだ、このバカ野郎。邪魔だ、どけ!!」
「バカ野郎、観光客の来るところじゃネエんだよ!!」
中身としては、おそらくこの程度のものに過ぎない。しかしそれが前後左右ばかりか頭上からも縦横無尽に降り注ぐと、迫力は幾何級数的に増大する。
精肉市場
(食肉市場で)

 血と肉と骨のニオイが充満した市場を歩けば、目の前には皮を剥がれたばかりのヒツジやウサギ、血の滴るブタやウシ、どす黒い血の色の大量のソーセージがぶら下がり、ウサギもニワトリもヒツジさんも、みんな血まみれ。断末魔の真っ赤な瞳でクマ蔵を見つめている。「身の毛もよだつ」という話なら、日本のどんなお化け屋敷も足許にも及ばない。
 どのオジサンも、大きな肉切り包丁を手に、血まみれの肉を切り刻みながらこの罵声を口にする。「口にする」という表現も甘いので、罵声は巨大な体躯そのものからカタマリになって噴き出してくるのである。
 しかも、これはすでに正午近い時間帯での話。「ゆるくぬるびもてゆきて…わろし」の状況でさえこの激しさなのだ。清少納言の大好きな冬の早朝、この市場がどんな活気を呈するか、考えただけでも空恐ろしく、かつ嬉しくなってくる。
 ここは、「日本人も中国人も、○○も△△も、何でも入れますよ」みたいな(昨日の記事参照)、中途半端なニヤけた罵声の通用する場所ではないのだ。今井君の経験によれば、ブダペストよりもバルセロナよりも、激しさの点でアテネの市場に軍配が上がる。諸君、アテネの活力はまだまだ近隣諸国に負けていないのだ。
鮮魚市場3
(鮮魚市場で イカ君たちとタコ君たち)


1E(Cd) Stan Getz & Joao Gilberto:GETZ/GILBERTO
2E(Cd) Keith Jarrett & Charlie Haden:JASMINE
3E(Cd) Ann Burton:BLUE BURTON
4E(Cd) Harbie Hancock:MAIDEN VOYAGE
5E(Cd) Miles Davis:KIND OF BLUE
total m110 y1596 d7553