Mon 111114 土浦に向かう ニャゴロワは元気 クシを失したオバサマ&車内販売オジサン | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 111114 土浦に向かう ニャゴロワは元気 クシを失したオバサマ&車内販売オジサン

 12月9日、茨城県土浦で講演会。代々木上原を15時半に出て、土浦到着18時。こりゃ遠いや。まず地下鉄千代田線で代々木上原から二重橋前へ。すぐそばの東京駅まで歩き、山手線で上野へ。上野から常磐線の普通電車で1時間10分、延々と揺られていった。ホントに&ホントに、遠いや♡
 乗る予定だった特急「フレッシュひたち」が、上野についてみたら、とっくに出てしまっていたのが原因である。そんなにとっとと行っちゃうなんて、ただの意地悪だ。ちっともフレッシュなんかじゃない。
 くやしまぎれに普通電車の「グリーン車」に乗ってやった。すると、今度はやたらにしつこい車内アナウンスに悩まされることになった。何しろ一駅ごとに、「これ以上の懇切丁寧はあり得ない」というアナウンスが、日本語と英語で「これでもか?」「これでもか」「参ったか?」と耳を責めたててくる。特に面倒なのが、
「グリーン車ご利用にはグリーン券が必要です。グリーン券を車内でお買い求めになりますと、駅での発売額と異なりますのでご注意ください」
というクダリ。日本語で1回、英語で1回。それを各駅ごとに繰り返す。「もうわかりましたから、勘弁してくださいっ♨」と叫んで逃げ出したくなるほど、しつこくしつこく、肉体に味が染み込むほど、しつこく繰り返される。
大人の余裕1
(ニャゴロワは相変わらず元気である)

 諸君、受験勉強も、あのしつこさで基礎を徹底的に繰り返すべきなのだ。染み込め、染み込め、深く深く、どこまでも染み込んでいけ。基礎基本徹底が特に徹底しているお相撲の世界では、「ちゃんこの味も染み込んだ」と表現する。
かくして今井君の肉体には「グリーン券を車内で買うと駅での発売額と違うんだ♨」という日本人に不可欠の基礎がしっかり染み込んで、駅のホームに上がっただけで「グリーン券売機はどこなんだ?」と無意識のうちに探すまでになった。
大人の余裕2
(大人の余裕 1)

 始発の上野を出る前から、通路をはさんで今井君の向こう側のオバサマは、ビール1本を立派に飲み干してみせた。60歳過ぎの小柄なオバサマだが、行動はマコトに大胆であって、いくらグリーン車と言ったって、「午後5時の通勤電車の中でビールをグビグビ」は、このクマ蔵だって恥ずかしい。
 そこへ、車内販売のオジサンが回ってきた。あれま、常磐線って、グリーン車の車内販売が中年のオジサンなの? ヨーロッパの列車も車内販売は必ずオジサンであって、自転車が出来そこなったみたいな哀れなワゴンを押し、自転車のベルそっくりの鈴をチリンチリン鳴らして回ってくるけれども、わが常磐線は、重そうなカゴを片手に抱えたオジサンだ。
 このオジサンが、車内アナウンスに負けないほど、何度でもしつこく丁寧に回っていらっしゃる。各駅停車の1駅ごとにカゴを下げて回るんだから、マコトにマコトに丁寧な仕事ぶりでござる。ほめてつかわすぞよ→しかし、ちょっとウルサすぎでござるね。
 と思っていたら、通路の向こうのグビグビおばさまは、次から次へと酒を購入する。ビールの次は缶チューハイ、次はまた缶チューハイ、そしてまたまた缶チューハイ。ツマミもどんどん購入して、イカ&タコ&ポテト。パリパリ、もぐもぐ、バリバリ、咀嚼の音が絶えることがない。
大人の余裕3
(大人の余裕 2)

 ところが、我孫子を過ぎたあたりから、このオバサマがニワカに落ち着かなくなった。何度も何度も席を立っては、席の下を覗きこんだり、席を回転させてみたり、それをまたモトに戻したり、立ったり♨座ったり、2分経過してまた座ったり立ったり、それをいつまでもいつまでも繰り返す。どうも、何か失くしたらしい。
 とうとうオバサマは、車内販売のオジサンに手を合わせて頼み込み、失くし物を一緒に探してもらうことになった。失くした物は、クシである。オジサンにクシのケースを見せ、「中身が無いんです」と悲しげな表情を見せながら、そのクシの故事来歴を語って聞かせた。
 今井君が聞いてみたところでは、クシの故事来歴はあまりに平凡で、ここに書くに値しない(Mac君の変換は「角煮値しない」だから、それにも一驚を喫したが)かもしれない。京都に出かけて、お土産に買って、もう2年も使っているのだという。
大人の余裕4
(大人の余裕 3)

 しかし車内販売のオジサンにしてみれば、缶チューハイを3回、ツマミも3回、合計6回も買ってくれた恩人である。普通電車の車内販売を利用する人は余り存在しないから、いつも無視され、軽く見られ、邪魔者扱いにされて、すっかり気持ちが凹んでしまっている。その彼にとって、次から次へ1時間に6回も呼び止めてくれたオバサマは、ほとんど命の恩人にも似た大切なヒトである。
 感心なことに彼は、制服が汚れるのを一切厭うことなく、床にひざまずき、席の下にアタマを差し込み、ご丁寧なことにオバサマの後ろの席も、そのまた後ろの席も、通路をはさんだ今井君の後ろの席も、みんな同じように丹念に調べて、まるで自分が大切な思い出の品を失ったかのように「見つかりませんね」と深い溜め息をついた。
大人の余裕5
(大人の余裕 4)

 クシが、そんな遠くまで飛んでいったり、通路をはさんで斜め後ろの席の下まで遠足やピクニックに出かけるわけはないのだ。今井君の睨んだところ、クシどんはオバサマのバッグの奥深くに隠れてしまったに違いない。
 オバサマの豪傑ぶりに驚いて、「ご主人はまた酒びたりになっていらっしゃる」「お目玉でも食ったらたいへんだ。ここは一番、バッグの奥に隠れるにしくはない」と考えたのだ。クシどんだって、たまには太郎冠者や次郎冠者のマネがしたくなるに決まっている。
 しかしやがて、オジサンとオバサマの4つの目は、近くで唯一点検していない今井君の座席にじっと向けられたのである。諸君、「何でクシが通路を乗り越えて、ここまで遠征するんですか?」などという一般常識は通じない。神出鬼没なクシどんの存在だって、この2人の肥沃な想像力の土壌には、立派に根を下ろすのである。
大人の余裕6
(大人の余裕 5)

 しかし、今井君は屈することがない。今井君の鉄面皮は、「常磐線で土浦に行きました」というたった1時間半の物語だけでA4版2ページを書ききるほどの強烈な鉄面皮である。たかが4つの目にプレッシャーにさらされたぐらいで、屈してなるものか。絶対に察してなんかやるもんか。鉄面皮、問責決議に屈しない一川どん&山岡どんも、これに勝てることはなさそうである。
 こうして、カタクナに席を立とうとしないクマどんと、酔っぱらったオバサマ&酔っぱらわせたオジサンの間に、強烈に気まずい確執が発生し、他に客のいない常磐線は、かじかんだ冬の茨城の大地を、ひたすら目的の地=土浦に向かってひた走ったのである。

1E(Cd) José James:BLACKMAGIC
2E(Cd) Jan Garbarek:IN PRAISE OF DREAMS
3E(Cd) Billy Wooten:THE WOODEN GLASS Recorded live
4E(Cd) Kenny Wheeler:GNU HIGH
5E(Cd) Billy Wooten:THE WOODEN GLASS Recorded live
total m75 y1561 d7518