Thu 111110 KATIKIESをチェックアウト フィラのロバさんの道(ギリシャ紀行28) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 111110 KATIKIESをチェックアウト フィラのロバさんの道(ギリシャ紀行28)

 9月2日、昨夕の夕陽の感激がまだ冷めず、ついでに飲み過ぎた二日酔いも一向に醒める気配がない。朝8時に起床して、今日もまた珍しく朝食に出かけた。出かけるも何も、朝食の出るプールサイドレストランは今井君の部屋のお隣だから、真っ白い漆喰の階段を4段登るだけでいいのである。
 プールサイドでは今日もすでに場所取り合戦が始まっていて、パパなり夫なり彼氏なりが、家族なり妻なり彼女なりのために、朝早くからiPad片手に頑張っている。まだ9時にもならないのに、朝の日差しは「焼けるような」というより「焼きつくすような」という強烈さである。
 しかし今井君は今日の正午までにチェックアウトしなければならないから、朝食もそこそこに早くも荷造りである。かえすがえすも「サントリーニ滞在わずか2泊」のプランニングが惜しまれてならない。
 そこへいきなり、70歳過ぎの欧米オジーチャンが今井君の部屋のテラスに侵入、クマ蔵の度肝を抜いた。ホテル側の好意でプールサイド横の豪華な部屋にアップグレードしてもらったのはよかったが、時々こういう唐変木&表六玉なヒトが闖入してくるのも困る。もちろん彼に悪意があったのではなくて、あんまりプールサイドが近いから「ここもプールサイド」と勘違いなさるのである。
ホテルネコ1
(KATIKIESフロント横のネコさん)

 正午、ベルボーイを呼んで、フロントまでスーツケースを運んでもらう。写真で何度も示した通り、イアの街は断崖に張りつくように作られている。どのホテルも「洞窟ホテル」であって、断崖に洞窟みたいな横穴をたくさん掘り、それを客室にしているのである。だからフロントは断崖の上、客室は崖の中途にあって、エレベーターはない。客も従業員も100段ほどの石段を徒歩で昇り降りする。
 今井君は謙虚が服を着て歩いているような慎み深い人間だから、普段は「ベルボーイを呼ぶ」などという大胆な行動を謹しむのであるが、100段もの石段を、25kgを優に超えるスーツケースを担いで登れるほどの体力はない。しかも、この炎暑である。そういう行動はほとんど自殺行為と呼んでいい。
 そこへ行くと、ベルボーイのオジサンは一見して体重100kgを超えるギリシャの猛者。ラグビーのFW、それもプロップをこなせそうな、石段昇降専門家のオジサンに、この仕事は完全に任せるべきである。「重いぞ、大丈夫か?」と声をかける必要もないほど、楽々と巨大スーツケースを抱え上げ、汗すらかく様子もなく一気に石段を駆け上ってくれた。
ホテルネコ2
(KATIKIESネコ、拡大図)

 さて、フロントに16時まで荷物を預かってもらって、今日の今井君はフィラの街を歩いてこようと思う。フィラはサントリーニ最大の街であって、やはり最大の街を訪ねて見ないと「サントリーニに行ってきました」とは言いにくいのである。帰りの飛行機が19時だから、昼からフィラに行き、16時にホテルに戻って空港までタクシーに乗れば、時間的にもちょうどいい。
 タクシーを呼んでもらって「フィラまで」というと、いかにもヒトのよさそうな運転手が、一気にイアの崖下まで走り降りた。客を乗せたついでに、崖下の店まで荷物を届けに行ったのである。この程度のことで「ボラれた!!」「ご用心!!」とか騒ぎ始めたら、南欧の旅なんかできないので、ま、€1や€2のことなら大目に見ておくほうがいい。フィラまで20分ほどで、€15。ミコノスの権柄ずくな「€10!!」とは格段の相違である。
土産物屋のロバさん
(フィラ、土産物屋でもロバさんたちが踊る)

 イアの街が「1990年代的、ディズニーシー的、平成的」なら、フィラは「1970年的、大阪万博的、昭和的」である。イアが隆盛を極めるまで、サントリーニの発展を支えてきたのはこの街であって、今でも日本の書店で売っているガイドブックは、フィラの地図しか掲載していないし、ホテル情報もレストラン情報もフィラのものばかりである。
 フィラに着いて、クマ蔵は「まず崖下まで降りてみよう」と考えた。崖の上は余りにも平凡な土産物屋とタベルナばかりなので、巨大クルーズ船からのハシケが次から次へとやってくる港まで降りたほうが面白そうだ。
ケーブルカー
(フィラ、奇妙なケーブルカー)

 断崖の下にいくには、スキー場のゴンドラを5~6台くっつけたような奇妙なケーブルカーに乗るか、大量のロバさんたちが昇り降りする険しい階段の道を降りていくか、どちらかである。クマ蔵はケモノの一種だから、欧米人間が長蛇の列を作っているケーブルカーを敬遠して、ロバさんと一緒に険しい道を歩いて降りてみることにした。
フィラの崖下
(断崖下からフィラの街を見上げる)

 降りはじめて1分、クマ蔵の心もアタマも、後悔の念であふれかえった。諸君、大量のロバさんの昇り降りする道は、ロバさんたちがお尻から連日&長年落とし続けた落とし物=「フン」「うんこ」の匂いが渦を巻いているのだ。うんこちゃんは灼熱の太陽で強烈に熱せられ、激しく蒸発しながら、今井君の鼻を通過して脳の奥深くを直撃する。
ロバの列1

ロバの列2
(どこまでもロバさんが続く)

 諸君。気温50℃に近い険しい石段を、鼻と脳ばかりか、口の中も、気管から肺から胃袋から腸に到るまで、ロバさんうんこの強烈なニオイに満たされて降りていく状況を想像してみたまえ。
 目に涙が滲むほどのニオイ。だって、この狭い坂道におそらく200頭が立ち尽くして、落とし物を我慢する様子はない。みんなニヤニヤ笑いながら「これでもですか?」「これでもでございますか?」と自慢げにフンフン鼻を鳴らしている。
ロバさん横顔
(ニヤニヤ笑うロバさん)

 ギリシャ滞在2日目、アテネのアクロポリスを降りたところで熱中症の恐怖に陥ったことはすでに書いたが、あれから10日、今井君はロバさんうんちのニオイに窒息しかけて脂汗を流した。
 しかも、坂道はツルツル滑べる。石ダタミ自体がツルツルしている上から、蒸発して乾きかけたロバさんうんちが靴の裏に絡まって、さらに滑りをよくしてくれるわけだ。まさに油断もスキもない。油断すれば、うんちで足を滑らせて、うんちの中にのたうち回る運命に陥る。
ロバさん正面
(笑うロバさん、正面図)

 坂道に居並んだロバ使いのオジサンたちに「ロバ、ロバ、ロバ!! ロバに乗らないか」と勧められる。ご丁寧なことに、「ロバ!!」は日本語だ。相手がどこの国の人間か、オジサンたちは一目で見抜くのである。
 しかし、こんな激烈なニオイを巻き散らしている動物になんか、絶対乗りたくない。ロバに振り落とされてケガしたり、ロバのうんちに足を滑らせて骨折したり、ロバさんうんちの蒸気で窒息したり、決してそういう情けないことになってはならない。
驚きのナポリタン
(フィラ、驚きのスパゲッティ・ナポリタン)

 こうして、文字通り「めくるめく冒険」に30分ほどかかって、クマ蔵はようやく崖下に到着。早速ビールで一息つきつつ、スパゲッティ・ナポリタンを注文する。待つほどもなく運ばれてきたナポリタンは、写真のようなシロモノ。ここでもまた昭和の早稲田大隈通りを髣髴とさせる、何ともレトロな食品に一驚を喫した。
巨大クルーズ船
(沖に停泊する巨大クルーズ船)

 次から次へとクルーズ船からのハシケが港に到着、大量の欧米人間を運んでくる。船の名前や番号を記した紙のワッペンを胸に貼った、素直で上品なオジーチャン&オバーチャンが多い。もちろん彼ら&彼女らはロープウェイを利用して崖の上の街に上がるので、ロバさんの背中に乗ってみようという大胆な若者は、あまり多くないようである。
艀
(港にクルーズ客を運ぶハシケ)


1E(Cd) AFRICAN AMERICAN SPIRITUALS 2/2
2E(Cd) Bill Evans Trio:WALTZ FOR DEBBY
3E(Cd) Maria del Mar Bonet:CAVALL DE FOC
4E(Cd) CHAD Music from Tibesti
5E(Cd) THE WORLD ROOTS MUSIC LIBRARY:トルコの軍楽
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