Mon 111031 ミコノス3日目 アレフカンドラの子猫 ベランダで30分(ギリシャ紀行18) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 111031 ミコノス3日目 アレフカンドラの子猫 ベランダで30分(ギリシャ紀行18)

 8月29日、ミコノス滞在の3日目は「ギリシャで貴重な曇りの朝」「稀少価値、小雨パラつく肌寒い朝」で始まったが、SASA'のマナコ+妖しい肉体美や、SASA'のオープニングスピーチで始まるEuropean Beach Partyの激しさについて考え込んでいるうちに、少しずつ雲がとれて、午後には青空が戻ってきた。
 いったん青空が戻れば、その空の青は際限なく深い青になって、降り注ぐ午後の日光は再び殺人的に強力になる。それを避けるために、何度も店に入っては「Mythos。凍ったジョッキでMythos!!」の注文を繰り返す。「なあーんだ、ギリシャ危機って、こういうことか」「みんなでこんな毎日を繰り返していたら、そりゃ危機にもなるさ」である。
さかなねこ1
(店の水槽の下に子猫がいた)

 今日の昼食は、「6つの風車」から丘を降りたリトル・ヴェネツィアの「アレフカンドラ Alefkandra」に決めた。立地条件は申しぶんのない店で、港側から風車に登る人も、風車から港に降りる人も、どうしてもこの店の前を通らなければならない。広い店内には、パンパンの満員にすれば200人は座れそうである。
 目の前にはちょっとした広場があって、そこが「ミコノスのエーゲ海」をカメラにおさめる写真スポットになっている。広場を超えてさらに海側にもテーブルと椅子を貪欲に並べているが、この3日間クマ蔵が見るかぎりでは、このテーブルではどうしても激しい波しぶきをかぶるので、営業をあきらめているようだ。
さかなねこ2
(水槽のおサカナがどうも気になる)

 何を注文したのかほとんど記憶がないし、写真も残っていないところを見ると、どうやら大したものではなかったのである。旨ければ記憶に残るし、強烈にマズくても記憶に残る。どういう意味であれ「驚きの一皿」がなかったのは明らかなので、要するに無難にまとめられ、無難に丸め込まれてしまった感がある。
さかなねこ3
(おサカナをどうしても捕まえたい)

 食べたものに記憶がないのには他に2つ理由がある。1つは「おサカナのいる水槽に繰り返し攻撃をかける子猫ちゃん」、もう1つは「驚きのダブルデート・カップル」である。
 前者は、おそらく生後1年半ぐらいの子猫ちゃん。アレフカンドラの海側の水槽、というよりガラス張りの生簀の中のおサカナが、どうしても気になってしようがないのだ。寝そべった姿勢から、ほぼ2分ごとにガバと起き上がっては、おサカナに攻撃をかける。もちろん攻撃のたびに、固く冷たい水槽のガラスにはね返されて、あえなく地面に落下する。
さかなねこ4
(ジャンプするかね)

 それを繰り返す子猫ちゃんが余りにも可愛いので、観光客も気づいて寄ってくる。最初はエーゲ海にカメラを向けているが、あっという間に関心はネコに向くのである。クマ蔵と同じようにネコの撫で方を熟知した若者がいて、まず指先をネコの鼻に差し出して挨拶し、驚かせないようにゆっくりかがみ込んで、「撫でたいんですが、いいですか?」と丁重に許しを請う。ネコのほうからも「うーん、あなたですか。ま、OKということにしてあげましょう」と許可の返事が返って、初めて意思疎通が完成する。
あきらめない
(あきらめない。辛抱強くチャンスを待つ)

 後者、つまり「もう1つの驚き」は、東洋人オジサマ2名と、欧米人オバサマ2名のダブルデートである。今井君の席から、海に向かって将棋の桂馬飛びの位置のテーブルで、何だか親密そうに話し込んでいる。
 注文した料理も「ロブスター」その他、高級品目ぞろい。おそらくまた硬いイカやタコをホジクリ返していた今井君とは、会計のゼロが1個違いそうな勢いだ。そこいら中の観光客がみんな子猫のジャンプに魅了されている中で、彼ら彼女ら4名のテーブルだけが別世界。ウェイターたちも異様に愛想よく、こぞってそのテーブルに集まっている。
さかなねこ5
(子猫に集まる人々)

 オジサマたち70歳代、オバサマたち40歳代後半。「年の差ダブルデート」自体が珍しいが、東洋人男子と欧米人女子の組み合わせで、この年齢差は超稀少価値である。クルーズ船内で知り合ったか、島でナンパしたか。まあどちらにしてもナンパに違いないので、これは注目に値する。
 70歳代オジサマたちは2名とも、東洋オジサマの典型的風貌を余すところなく身につけていて、いったいオバサマたちはどこか気に入ってナンパされたのか不明である。まさかと思うが、こういうカップルがEuropean Beach Partyの主役なのだろうか。
 何だか頭がフラフラする思いで、「もう1軒、行こうかな」ということにした。リトル・ヴェネツィアの迷路をブラブラしていると、VERANDAという小さな看板を発見。1階が満員なので店先でオドオドしていたら、30歳ぐらいのオネエサマ・ウェイトレスが通りかかって、気さくに2階に案内してくれた。
高波のリトルベネチア
(ベランダから見た高波のリトル・ヴェネツィア)

 2階に上がると、おお、まさにベランダだ。ベランダからはエーゲ海一望であり、エーゲ海の湾の向こうに6つの風車が並んでいる。ベランダの細い手すりをそのままテーブルとして利用する。手すりの真下は海だから、飲み物が真っ逆さまに海に転落する恐れがあるが、そうなった時はそうなった時で、仕方がないじゃないか。そういう気楽な店である。
 この2階のベランダに座った瞬間、クマ蔵の興奮は一気に高まった。これこそ、期待していた瞬間である。ミコノス到着以来、いろいろと鬱屈してイライラしていたのだ。絶え間ないタクシー争奪戦、騒音が1日中絶えないホテル、従業員の横柄な表情、狭い路地にあふれかえる団体観光客の群れ。ミコノスに着て、「ヨルゴの店」と「アントニーニ」に次ぐ、第3の爽快スポットにやっとたどり着いた。
風車とワイン1
(風車とワイン 1)

 こうなると、今井君が注文するのはもちろんワイン。もちろん、暑くてたまらないから、白ワイン、ボトル丸々1本。ウェイトレスが「ボトルですか?」「ホントですか?」と驚き、そばのテーブルのオジサンも「おっ、フルボトルか!?」と声を上げる。諸君、細い手すりをテーブルに代用したこの店で、ボトル1本ガブ飲みしようという客は、なかなか珍しいのだ。
 考えてみれば、たった今「アレフカンドラ」でもボトル1本飲んできたばかりだ。あれから15分も経過していない。しかも、幅3m程度しかないこのベランダの、20cmほどの細い手すりにもたれたまま、もう1本空けちゃおうというのである。
 ワインクーラーまで出してもらって、クマ蔵のご機嫌はもはや最高潮である。沖に向かって座ると、正面から吹きつける夏の海風が心地よい。日は少し傾いて、エーゲ海の波がほんの少し赤みを帯びてくる。
風車とワイン2
(風車とワイン 2)

 考えられる限り最高のシチュエーションであって、ここまでくるとクマ蔵のペースは、「もはやグラスを必要としない」レベルに達する。ボトルから直接口に流し込んでも構わないが、礼儀上しかたなくグラスを経由する。それがモドカしくてたまらない。そういう状況である。
 ベランダには30分もいただろうか。考えてみれば、午前中から一体どのぐらいビアを流し込み、午後からはどのぐらいワインを流し込んだか分からない。
 丘の上のバス停からバスに乗って帰ったのだが、正直に告白すると、バスに乗り込むあたりからの記憶が一時途切れている。気がつくとオルノス海岸でバスを降りていて、海岸のスーパーでいろいろ買い物をしてホテルに戻った。3日目も、こうしてチャンと何もしないで過ごしたのである。

1E(Cd) Patricia Barber:NIGHTCLUB
2E(Cd) Yohichi Murata:SOLID BRASS Ⅱ
3E(Cd) CHET BAKER SINGS
4E(Cd) Art Pepper:SHOW TIME
5E(Cd) Maceo Parker:SOUTHERN EXPOSURE
total m155 y1486 d7447