Sat 111022 ミコノスのタクシー事情 「おばさま怒髪天を突く」序曲(ギリシャ紀行13) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 111022 ミコノスのタクシー事情 「おばさま怒髪天を突く」序曲(ギリシャ紀行13)

 「斜陽の始まり」に特有のトゲトゲしさ(スミマセン、一昨日の続きです)を、ミコノス島で最もよく見て取れるのが、タクシー事情である。
 この島でタクシーをつかまえるのは、困難を極める。止めなくても止まってくれる日本と違うのは当たり前。SEX AND THE CITYの登場人物も「NYのタクシーは滅多なことではつかまらない」と嘆くのが定番のセリフだが、そんなのとは丸っきり話の次元が違うのだ。
 数日前のブログ記事に「ミコノス島全体で、十数台しか存在しないんじゃないか」と書いたが、それは決して大袈裟ではない。ホテルのフロントで手配をお願いしても、フロントクラークでさえタクシー会社に電話がつながらず、お手上げの状態になることがある。
迷路のネコ1
(ミコノスで。妖しいネコが迷路のタベルナに導こうとする)

 ガイドブックにはタクシー会社の電話番号が掲載されているが、深夜どころかごく普通の昼間の時間帯だって、シロートが電話してタクシーを呼ぶことはまず不可能。フロントクラークの行動を観察したところでは、彼らはタクシー運転手のケータイ番号を個人的に知っていて、自分のケータイから運転手に連絡する。要するに友人関係に頼るしかないのだ。
 狭い島のことだから、彼ら観光業者がみんな個人的に親しい仲間なのは想像に難くない。会社に命令されても動かないが、友人に頼まれるなら「仕方ない、行ってやるか」と応じる。だからフロントクラークは、次から次へと友人のドライバーにケータイで連絡をとる。
 やがて「○番のタクシーが来ます。エントランスで待っててください」と告げられるが、そのタクシー番号はみんなヒト桁。4日間のミコノス滞在中、今井君がホテルから乗ったのは、7番が2回、5番が1回。偶然かもしれないが、フタ桁のタクシー番号というものに出会ったことがない。
迷路のネコ2
(ミコノスタウンの迷路に佇むネコ)

 客を乗せたタクシーは、猛スピードで走り出す。猛スピードなのは、予約が次々と入っているからで、運転席にこれ見よがしに置かれたメモ帳には、このあと午前から午後にかけて、すでに十数件の予約が乱雑に書き込まれている。
「こんなに忙しいんだから、安全運転なんかしている余裕はないんだ。自転車やレンタル・バギーを脅しながら走りますが、仕方ないだろ。しっかりつかまっててくれよ」
という勢いである。
至る所に教会が1
(至る所に教会がある 1)

 ミコノス旧市街には、タクシースタンドが2つしかない。北の丘の上に1つ、南の港近くに1つである。「ミコノスタウン」以外に何も言わなければ、黙って北のスタンドに連れて行かれる。
 旧市街の行き先なら、北スタンドからでも南スタンドからでも徒歩5分の距離だから、別に困ることはないし、旧市街の街路は人間2人がスレ違えるかどうかの迷路であって、クルマで入り込むことはモトモト困難なのである。
至る所に教会が2
(至る所に教会がある 2)

迷路
(迷路のようなミコノスタウン)

 スタンド前に到着すると、運転手は口を尖らしたままの仏頂面でクルマを止め、こちらから料金を訪ねるまでもなく、吐き捨てるように「€10!!」と叫ぶ。途中の混雑次第でメーターは€5.75だったり€7.25だったりするが、そんなことは一切お構いなしに「€10!!」である。要するに料金は「定額」なので、メーターは気合いを入れるために回しているだけなのだ。
 ここで正義感を振りかざして「メーターと料金が違っています!!」などとグダグダ抗弁するのは、むかし流行ったKYにすぎない。迎車料金とか、手数料とか、そういう一言で2ユーロや3ユーロの言い訳はあっという間に積み上がる。ヨーロッパならどこでも、「チップ」と言われてしまえばそれで終わりである。
気づけばネコが
(気がつけば、足許にネコがいる)

 しかも、タクシースタンドにはすでに次の客が列を作っている。5組も6組も苛立った表情で待っていて、到着したタクシーのドアを外からシッカとつかみ、こっちが降りる前から乗り込もうとするから、控えめな日本人なら誰でも度肝を抜かれる。
 しかし、こういう乱暴さも無理はないのだ。もう20分も待ちわびたタクシーなのだし、しっかりドアをつかまないと、「次の予約があるんで」とサッサと走り去ってしまいかねない。後ろの客が割り込んでくる危険もある。日本人なら「まさか」と思うところだが、すぐ後ろの客ばかりか、そのまた後ろの客までが「相乗りさせてください」と割り込んでくる。
バス時刻表
(バス時刻表。この乱暴さは大好きだ)

 初日にこの状況を目撃したクマ蔵は「こりゃ敵わん」と思い、不便を承知でバス利用を優先することにした。宿泊先KIVOTOSに近いオルノス海岸行きのバスは、1時間に2本。北のタクシースタンド近くから出る。
 黒板に書きなぐられた時刻表によれば、午前1時や2時を過ぎてもバスがある。一昨日の記事に写真を掲載したタイプのフェリーニ的祝祭=激しいドンチャン騒ぎが、島中のクラブやバーで連日連夜はてしなく繰り返され、帰りのタクシーも期待できないから、こうやって深夜バスが走るわけだ。
アントニーニの店
(1950年代から営業、老舗タベルナの「アントニーニ」)

 ミコノス初日の今井君は、ホテルにガッカリし、タクシーにガッカリし、強風にゴミの舞う風車群にもちょっとガッカリしながら、港のそばのタベルナ「アントニーニ」に入った。「落胆しそうになったらメシを食え」。昔から変わらぬ、賢い人生訓である。
タコ料理
(アントニーニのタコ料理)

 アントニーニで注文したのは、とにかくイカとタコ。タコは落胆をさらに深めるほど小さかったが、中に詰物をしたイカ(Stuffed Calamari)はなかなか美味。こんなにガラガラのタベルナで、この美味は期待しなかったから、ビールも白ワインもどんどん進んだ。諸君、やっぱりギリシャではギリシャビアMythosが抜群に旨いのである。
イカ料理
(アントニーニ、Stuffed Calamari)

 こうして、アントニーニのテーブルにどっかと腰を据えたクマ蔵が目撃したのが、「アメリカンおばさま、怒髪天を突く」の光景である。この光景こそは、2011年夏のギリシャ旅行で最も忘れがたい重要なエピソードの1つになるが、だからこそ、日を改めてじっくりと描写したいのだ。
 もっと正直にいえば、すでにそのシーンは微に入り細を穿って書き終えたところである。しかし余りにも微に入り細を穿った結果、もしそれを今日の記事にそのまま掲載すれば、「A4版6枚を超える」。まさにブログのルールを無視した、言語道断の長さになってしまう。
イカ料理断面図
(アントニーニ、Stuffed Calamari断面図)

 諸君、辛抱強く明日を待ちたまえ。堂々たる交響詩「アメリカンおばさま、怒髪天を突く」「akimboちゃん、マゴの世代まで恨みを語り継ぐ決意を固める」の章は、秀逸。「ちょっと予備校講師の身辺雑記を読んで、暇つぶしでもするか」などという軟弱な精神ではとても読み解くことのできない、古今マレに見る抱腹絶倒の一章になる予定である。

1E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 9/18
2E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 10/18
3E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 12/18
4E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 13/18
5E(Cd) THE WORLD ROOTS MUSIC LIBRARY トルコの軍楽
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