Sat 111008 金沢で大講演会 意地悪バス君、キミなんかキライだ 高1クラスのトラウマ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 111008 金沢で大講演会 意地悪バス君、キミなんかキライだ 高1クラスのトラウマ

 10月31日、昨日書いた「寝坊→遅刻の危機→ポンポンも危機」の危機の連鎖を経て、ほうほうの態でクマ大師は小松空港に到着した。11時。ポンポン危機を脱した直後だというのに、さすが秋のクマは猛烈に腹が減っていた。
 腹を減らした秋のクマなんぞというものは、食いものさえ見つければ何の頓着もなく飛びついていく。小松空港ロビーのファミリーレストランがガラガラだったのを幸い、早速ガオガオ唸りながら襲撃を決めた。
 注文したのは「スパゲティー・ミートソース」。「大学生の昼飯じゃあるまいし、せっかく金沢に来たんだから、もっと旨いもんを食べればいいじゃないか」と、上品なことをおっしゃる御仁も少なくなさそうだが、どうしてもミートソースなんぞをズルズルやりたかったのだから、仕方ないじゃないか。
 昔は、パスタとかボロネーゼとか、そんな妙竹林なコトバは使わなかった。大学生は、学食でミートソースかナポリタン。ちょっと上品な女子は茶店でコーヒーにミートソース。みんなでフォークをクルクルやりながら、何時間もダベって粘るからこそ楽しいのだ。
 諸君、茶店とは「チャミセ」ではなく「サテン」である。「サテン」「純喫茶」であってこそ由緒正しく奥ゆかしいので、スタバだのタリーズなんぞというものは、都知事流に言えば「みすみすアメリカの謀略にハマった」ようなものである。
金沢1
(金沢での大講演会)

 そんなバカバカしいことをやっているうちに、小松空港から金沢駅前に向かうバスが出てしまった。空港の案内放送で「まもなくバスが発車します。ご利用の方はお急ぎください」と告げられ、クマ大師こそまさに「ご利用の方」だから、大慌てでバス乗り場に走った。
 ところが駆けつけたクマどんの目の前で、まるで待ってたように意地悪くドアが閉まり、バスは意地悪そうに身体を揺すりながら、さっさと走り去ってしまった。おお、意地悪だ。余りにも意地悪、小姑なみだ。後ろ姿が「あっかんべー」をしているみたいだ。
 フン、だ。ぷん、だ。ベー、だ。そんならいいもん。そんな意地悪なヤツはキライだ。クマ大師にはお馴染み「タクシー」という魔法のジュータンが味方についてるだ。バスどんなんか、勝手に走ってればいいだ。困ることは1つもありましねえだ。ようがす、そうやって意地悪してればようがす。いつかバチがあたるだよ。その時ホエヅラかくでねえ。
 今井君は乗り込んだタクシーの運転手さんと、金沢の紅葉の楽しみ方について延々と話し合った。よく晴れて風も穏やか。10月末の兼六園ではまだ早すぎるけれども、ちょっと白山の方に入れば今が見頃です、とのこと。「はあ、そうですか」を50回ぐらい繰り返すうち、あっという間にANAクラウンプラザホテルに到着。意地悪バス君なんかに頼らなくても、何にも困らない。
金沢2
(金沢、絶好調で語るクマ大師)

 金沢オペラ座での今日の講演会は、現高1生対象である。諸君、「現高1生」というコトバは、多くの予備校講師にとって鬼門である。3大予備校の本部校舎だって、「高1総合コース」なんぞというものは、ほとんどの場合ガラガラ。200人収容の教室に12~3人というのも稀ではない。ヒト桁だって、覚悟しなきゃならない。
 今井君は、幸い新人の頃から「高1総合コース」を割り当てられたことはない。予備校の内部事情を言えば、ナマ授業の「高1総合コース」に割り当てられるのは、1年目2年目ぐらいの新人か、人気が上がらず苦労中だったり、アンケートの数字が惨憺たる御仁か、そんなところが多くなりがちだ。
 「総合」という意味不明なコース名もまたクセモノ。総合→「カネさえ払えば誰でもOK」みたいないい加減な感じなので、受講するほうも余り熱心でない生徒が増える。遅刻も多いし、「定期テストが近い」「体調が悪い」と、安易な理由で欠席しがちだ。
 本部校舎でもそうだから、例えば首都圏の周縁部をグルリととりまく武蔵野線タイプな校舎、要するに津田沼・柏・松戸・大宮・立川・あざみ野・藤沢校の大教室ナマ授業なんかだと、不人気講師に圧力をかける材料として担当させたりすることも、ないわけではない。
 つまり「生徒が集まらないじゃないか」「遅刻&欠席が多いじゃないか」「盛り上がっていないじゃないか」「アンケートが悪いじゃないか」と数字を突きつけ、圧力をかける。まさに予備校残酷物語である。もちろん、その残酷な戦いに勝ち抜いた新人のガッツはたいへんなものであって、将来その予備校を背負って立つ大物講師の卵と言っていい。
金沢3
(金沢、生徒代表から花束をもらう)

 今井君は今から10年前、代ゼミで自ら「高1クラスを一つ担当させてください」と申し出た。当時の今井君はサテライン9講座を担当、すでに大御所中の♨大御所♡であって、要するに気の迷いだが、何となく「初心忘るべからず」みたいなツマらんことを考えたのだ。
 教務課のヒトたちには「ホントに、いいんですか?」「ホントにホントに、ホントにホントに、いいんですか?」と何度も繰り返して尋ねられた。「何を今さら、好き好んで火中の栗を拾いにいくんだ?」と呆気にとられる気持ちだったのだろう。
 で、代々木本部校舎の「高1特進・中高一貫コース」の英語を担当。忘れもしない、月曜だったか金曜だったかの6時限、18時50分から20時20分まで。当時は8号館と呼んだ校舎の一室で若々しい高1生を教えた。
 その数、16人。夏前に1人増えて17人になったが、直前の今井単科ゼミは250人とか300人パンパンで〆切状態だったから、「初心忘るべからず」のクマ大師にとっても、教室内はまさに異次元空間。「ボク、なんてバカなこと引き受けちゃったんだろう」と1年間後悔しきり。その後の代ゼミ時代は「高1は、まあとりあえずお断り」の一句をかかげ、丁重にお断りして過ごした。
金沢4
(花束をもらっても、まだ語りつづけるクマ蔵)

 そういう記憶に多少苦しめられながら、今井クマ大師は夕暮れの金沢の街を一路「金沢歌劇座」に向かう。講師控え室に入っても「もしガラガラだったら」の恐怖に身が縮む思い。10年前の「16人」の痛手は今もなおナマナマしくて、バンドエイド・きずパッドなんぞを貼ったぐらいで癒えるものではない。
 金沢歌劇座での講演会、19時開始、20時半終了、出席者約300名。飛び込みのヒトや、保護者の皆さんや、高校教師の方や、予定になかった人びとも多く参加され、講演冒頭からクマ大師はステージ上で延々と躍動し続けた。
 高1という学年は、往々にして反応が鈍いというか、「教師や講師の話には意地でも乗ってやらない」という依怙地なコドモが多いものだが、この日の金沢はそんな心配は一切無用。最初から最後まで、講師として全く努力がいらないぐらいに盛り上がって、高1トラウマに怯えるクマ蔵を一瞬でホッとさせてくれた。
金沢5
(金沢、またまた大成功だった)

 なお、気づかれたとは思うが、今日の文章には何度も「…なんぞというもの」「…という御仁」の表現が登場している。これは、ある作家を追悼するためのものである。今井君が小学校から中学時代にかけて大きな影響を受けたその作家については、明日の記事で詳細を書こうと思う。

1E(Cd) 東京交響楽団:芥川也寸志/交響管弦楽のための音楽・エローラ交響曲
2E(Cd) デュトワ&モントリオール:ロッシーニ序曲集
3E(Cd) S.フランソワ& クリュイタンス・パリ音楽院:ラヴェル/ピアノ協奏曲
4E(Cd) Paco de Lucia:ANTOLOGIA
5E(Cd) 寺井尚子:THINKING OF YOU
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