Thu 110929 ギリシャを思う ギリシャわんこ、ストライキ中 寝顔がいい(ギリシャ紀行1) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 110929 ギリシャを思う ギリシャわんこ、ストライキ中 寝顔がいい(ギリシャ紀行1)

 この数日、ギリシャ国内の危機がいよいよニッチもサッチもいかなくなって、アテネ市民は今や唯一と言っていい資源・観光業まで破壊し始めた。歩道の敷石を剥がしては、その大理石をタタキ割り、国会議事堂や警官隊に投石を繰り返す。
 その警官隊も消防隊も一部がデモに加わり、デモを沈静化しようとする人はもう余り残っていない。投石でエントランスを破壊されたホテルは、つい40日前まで今井君が滞在していたホテルのお隣である。正直に言って「たいへんな混沌の中から、危機一髪で脱出してきた」という感が強い。
 たくさんの火炎瓶が投げられ、わずかな警官隊が催涙弾で応酬する様子が報道されたのは、国会議事堂の真下、「無名戦士の墓」のあたりである。400年にもわたる長いトルコ支配からようやく独立したのが19世紀半ば。独立戦争で勇敢に戦った無名戦士の冥福を祈り、ギリシャ国民の誇りを象徴する墓に、いまや火炎瓶の炎が飛び交っている。
無名戦士の墓
(アテネ、国会議事堂前の「無名戦士の墓」。深夜も衛兵が直立不動で守っている)

 パルテノン神殿も、ゼウス神殿も、すべてテープで封鎖され、地下鉄は動かない。いくら待ってもバスもタクシーもこないし、空港は完全閉鎖。テレビニュースに映し出されるほとんどの映像が「おやおや、オレはつい1ヶ月前あそこに立っていたのに」という懐かしさを誘い、「よく生還したな」という安堵と、どうにも出来ない悔しさが入り混じる。
 日本のオヤジ向け週刊誌(要するに「ポスト」か「現代」だ)の新聞広告を眺めていたら、「ギリシャ、この腐りきった国」という見出しを発見。いくら何でも、ヨソの国に対して失礼すぎないか?
 昨日だったか一昨日だったかの朝日新聞「天声人語」でも、ドイツやスロバキアは「つましく暮らす立派なアリさん」であり、ギリシャは隣近所の安全を脅かす「怠惰極まりないキリギリス」の扱いになっている。
サントリーニの犬
(サントリーニ島で)

 しかし諸君、少なくともクマ蔵が2週間滞在したギリシャは、腐っても崩壊してもいなかった。1ヶ月前のアテネ市民は、バスも電車も地下鉄もキチンと走らせ、ナースも医師も教師も普段通りに奮闘を継続していた。
 無名戦士の墓の前では衛兵が150年間営々と守ってきた儀式をたゆみなく続けていた。銀行マンも商社マンも職場に急ぎ、路上の売店は早朝から忙しく商品を並べ、ゴミ収集トラックだって時間通りに規則正しく走り回っていた。
 その国のどこが憎らしくて「この腐りきった国」呼ばわりするのか、クマ蔵は悔しく、苛立たしい。イギリスの一流新聞に「ギリシャなんか、デフォルトさせちゃったほうがいい」との論説が掲載されたそうだが、そりゃその論説者が何かトチ狂っただけである。
犬君1
(わんこ、ストライキ中。アテネ、パルテノン神殿付近で)

 アレクサンダー大王はマケドニア出身だから、まあギリシャ人。ソクラテスもプラトンもアリストテレスもギリシャ人。諸君、ちょっと尊敬の心が足りないんじゃないかね。クレオパトラどんだって、最後はエジプト女王だが、世界史をちょっとでも勉強したヒトなら「プトレマイオス王朝なんだから、そっか、あれは生粋のギリシャ人なんだ!!」と気づくはずである。
 クレオパトラどんがアフリカ系の横顔にオカッパ頭で描かれるようになったのは、いったいいつからだろう。ドラマでも、映画でも、いまやクレオパトラといえばオカッパ頭のアフリカ系女性がお決まり。映画「Dream Girls」ではビヨンセがクレオパトラ役になりかけるが、これもまた黒髪のオカッパだ。BBCが制作協力した超長編ドラマ「ROME」でも、「は?」とビックリするほど「エキゾティックな未開の女」にされてしまっている。
 しかし諸君、プトレマイオス家は生粋のギリシャ系。ホントのクレオパトラは、むしろオリンポスの山で聖火をかざすギリシャ女性タイプの風貌のはずだ。
 今井君は少年の頃にシェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」「アントニーとクレオパトラ」を読んで以来、彼女の大ファンで「九獅子驚虎」と呼んでいるが、「九獅子」とはレオが9頭で「クレオ」。「驚虎」の「驚」は「ハッ!?」で「ハッ!?トラ」。要するに「クレオ、ハットラ」であるね。
 どうだい、ギリシャ、なかなかやるじゃないか。「腐りきった国」「デフォルトさせちゃえ」って、いったいどんな神経で言えるのか、今井君はよくわからない。
犬君2
(サントリーニ島で 2)

 もっとも、中世からルネサンス期を経て近代までのドイツ文学を読んでいると、若干思い当たらないこともない。北方のヒトにとって、「悪や病は、南からやってくる」らしい。「疫病は、春になって雪が解けると、南風に乗ってやってくる」の類いの記述に出会うことは少なくない。その昔の彼らの言う「疫病」にはもちろん「怠惰」の類いも含まれる。
 たくさんの十字軍兵士が、南の国の女にのぼせ上がって帰ってこなかったとすれば、おばあちゃんたちの昔語りに「南にはイケナイ人がいる」と語り継がれたとしてもフシギはない。9月、すでに分厚いセーターを着こんでストーブが恋しい北の国からみて、ギリシャやイタリアやポルトガルのヒトが怠惰に見えるのは、仕方のないことである。
働くロバさん
(ロバさんたちはチャンと働いていた。サントリーニ島で)

 今回のギリシャ旅行2週間でビックリしたのは、ギリシャのイヌたちの怠惰ぶりだ。そこいら中にデカイ野良犬が転がっているのも驚きだが、イヌたちがわざわざ直射日光の照りつける炎暑の中で昼寝しているのが度肝を抜く。
 気温は日陰でも軽く40℃を超え、直射日光の下なら50℃に近い。「煮えちゃうよ」などというのはまだ甘いので、「焼け死んじゃうよ」「目玉焼きになるよ」「黒コゲになるよ」ぐらいの炎暑なのに、何故か野良ワンコさんたちは日陰を選ばない。全身を直射日光にさらし、苦しげに腹を波打たせながら、しかも熟睡している。
犬君3
(パルテノン神殿の野良わんこ)

 その様子をニンゲンたちも楽しそうに眺めてニヤニヤしているばかり。タベルナの傍にも、観光地の切符売り場にも、土産物屋の店先にも、「もしかして、キミは焼け死んじゃったの?」という姿の野良犬が横たわっている。ギリシャのネコはガイドブックや写真集で有名だが、今回の旅行でクマ蔵が特に好きになったのは、このイヌたちのトボケた寝顔なのであった。
 イヌというものは、本来もっとキリリと生きる生物。ニンゲンの周囲にいれば、常に注意万々怠りなく、不審人物やクマや泥棒ネコが接近すれば、立ち上がって吠え放題に吠え、ニンゲン様に危険を伝えるべき、緊張感が基本の生き物だ。
ネロ
(サントリーニのわんこ。クマ蔵は「ネロ」と名付けた)

 それなのに、こんなにタガが外れて昼寝のし放題では、イヌの名に値しないじゃないか。そこでクマ蔵は「ははーん!!」と気がついたのである。ははーん!! イヌたちから先に、ストライキに入ったわけね。暑さ反対。灼熱地獄、反対。直射日光、反対。もっと涼しい国に移住したい。日陰が欲しい。
 確かに8月24日、到着したアテネの街は、北国のクマどんには、まさに灼熱地獄。パルテノン神殿の丘の下で、クマ蔵は危うく熱中症になりかけた、しかしその次第は明日詳述することにするとして、今日はストライキ中のギリシャわんこ写真を列挙して終わりにしよう。
犬君4

犬君5

ひなたいぬ1

ひなたいぬ2

犬君6

犬君7

犬君8


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5E(Cd) Solti & Vienna:WAGNER/DIE WALKÜRE 4/4
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