Thu 110901 沖縄からの報告 スペリング・ビー  「アメリカの赤ちゃんになるな」再び  | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 110901 沖縄からの報告 スペリング・ビー  「アメリカの赤ちゃんになるな」再び 

 9月26日、久しぶりにGmailを覗くと、夏に2回講演をした沖縄の東進加盟校・桑原氏からメールが届いていた。「琉球新報主催 英語スペリングコンテスト 沖縄大会」の写真が添付されている。

 写真には「第4回」とあって、コンテストはすでに4年目を迎えているらしい。おお、沖縄ではホントに素晴らしい英語教育が進行中なのである。
スペルコンテスト
(英語スペリングコンテスト 沖縄県大会)

 今井君の信条は「どんなことでも基礎が大事、特に語学は基本が全て」。要するに単語と文法である。講演会でも公開授業でも
「筋トレみたいに、単語を遠慮なくガンガン覚えようじゃないか」
「文法をどんどん繰り返して、英文法を血液にしようじゃないか」
を徹底して訴えかける。

 単語と文法なしに英語をやるなんて、ラケットなしのテニス、バットとグローブなしの野球、サッカーボールでのラグビー、ラグビーボールでのサッカー、そのぐらい滑稽なものだと考える。

「竹刀なしの剣道」「柔道着なしの柔道」と言えば、柳生宗矩なり宮本武蔵なり、超・達人の心境を感じさせないこともない。しかし「マワシなしのお相撲」「水着なしの水球」ということになれば、お下劣もいいところ。単語&文法ヌキの語学なんて、ちょっとカッコいいように見えても、実際には「努力は一切したくない」というお下劣な発想に過ぎない。
怠惰ねこ1
(ネコとは、怠惰なものである)

 今井君と対極の発想に「アメリカの赤ちゃんになれ」というのがあって、
「単語なんて覚えなくていい」
「文法なんかやるから英語が話せない」
「アメリカの赤ちゃんは単語も文法も知らないのに英語が話せる」
「キミたちが目指すべきなのはアメリカの赤ちゃんだ」
と力説する。

「赤ちゃんになれ」とは、「一億・総幼児化を目指せ。乳児に戻れ」という驚くべきご託宣であるが、このご託宣こそ、とんでもないウソと誤謬を含む「トンデモ託宣」であって、いくら怠けたい一心でも、さすがにこういうバカ話に皆がついていくようでは、国家の崩壊も遠いことではない。
怠惰ねこ2
(怠惰ネコ、拡大図)

 諸君、「アメリカの赤ちゃんはみんな英語が話せるよね」と言われて、誰も疑問を感じないの? アメリカの赤ちゃんって、「オギャー&オギャー」って泣いてるだけじゃないの? それとも、アメリカの赤ちゃんは生後3ヶ月で英語を話し始めるの? "Hello. My name is Bob. Are you my mother? Really? Shit!!"って言うの?

 それとも、「アメリカの赤ちゃん」は、生後1年も経過すると、The Washington Post片手にヨーロッパ経済危機について論評でも始めるの? 生後2年でCNNやABCやPBSのニュース解説を聞きながら、「私はそうは思わないな。議論が表面的すぎる」とか、コナマイキな反論でもするの?

 諸君、アメリカの赤ちゃんがマトモな英語を読み書き話すまで、少なくとも15年はかかると思わないか? 日本人の赤ちゃんがマトモな日本語を読み書き話すまで、最低15年かかるのと同じだと思わないか?

 朝日新聞のコラムが読めて、NHKニュース解説を理解して、ディベート大会で喝采を浴びるのは、どんなに早いヒトでも15歳。アメリカの赤ちゃんも、それと同じ時間をかけて長い努力していると思わないか? 

 なお、このあたりの議論は、ほぼ2年前のブログ記事「アメリカの赤ちゃんになるな」でも書いたことだが、あえて繰り返させていただいた。
怠惰ねこ3
(怠惰ネコ、もっと拡大図)

 アメリカの赤ちゃんたちの努力をなめてかかってはいけない。彼ら彼女らは、日本人の小学生が6年間懸命に漢字の練習をするのと同じように、努力して単語を覚え、単語のスペルを練習する。

 市町村単位や県単位でスペリングコンテストが開催され、州のチャンピオンが決まり、連邦チャンピオン大会まで登りつめる。これをSpelling Beeと呼ぶ。アメリカの赤ちゃんも、子供たちも、みんなこうして鍛えられて単語力を伸ばすのだ。

 5年ほど前、Spelling Beeをテーマにした映画が制作されたこともある。リチャード・ギアとジュリエット・ビノシュ主演の「Bee Season」、日本でのタイトルは「綴り字のシーズン」である。

 日本のタイトルは何だか情けないし、映画の中心テーマは「静かな家庭崩壊からの復活」であって、そのあたりは何だか面倒くさいけれども、まあレンタルして観てみたまえ。アメリカの赤ちゃんが、生後すぐに何の努力もせずにマトモな英語を話すのでないことだけはキチンと理解できる。ついでに「origami=折り紙」がとっくに英語に入り込んでいることに驚くのもいい。
怠惰ねこ4
(怠惰ネコ、もっともっと拡大図)

 8月10日、沖縄県沖縄市の講演会で、今井君は以上のような話をした。いや、沖縄県だけではなく、いつだってどこだって、公開授業や講演会では常にこの話をし、生徒も先生がたも爆笑し、大喝采し、シッカリ納得して「今日から単語を遠慮なくどんどん覚え、英文法を血肉にするぐらい、バンバン練習に励みます」と約束してくれる。

 沖縄でビックリしたのは、「その通りですよね。実は、『スペリングコンテスト沖縄県大会』をやってます」と自信満々に返事が返ってきたことである。おお、ホントにスンバラシイ。今井君が推奨するまでもなく、とっくにアメリカの子供たちと同じ努力を始めていたのである。

 今回の沖縄Spelling Beeでは、クマ蔵の授業を受講している生徒の多い高校から、たくさんの優秀者が出たそうだ。名門の公立・首里中学も、難なくアメリカンスクールを負かしてみせたとのこと。基礎基本が信条のクマ蔵が、この知らせをどれほど嬉しく読んだことか、「赤ちゃんになれ」派の先生がたには、なかなか理解できないだろう。
怠惰ねこ5
(ネコにもやがて確実に訪れる、怠惰からの覚醒)

 ただし、アメリカ流Spelling Beeは、地道な努力のキライなタイプの日本人には、浸透しそうにない。赤ちゃんになりたくてなりたくてウズウズしているヒトに、マトモなオトナの努力ができるはずはないのだ。

 だから、スペリングコンテストは沖縄県大会どまり。今のところ、沖縄でしか実施されていないのが実情である。どうだい、誰でもいい、全国スペリングコンテストの開催に向けて、組織を立ちあげてみないか。

1E(Cd) THE WORLD ROOTS MUSIC LIBRARY トルコの軍楽
2E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 7/9
3E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 8/9
4E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 9/9
5E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 1/10
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