Mon 110808 必ずエコノミーの理由 超ラッキーでビジネスクラス(リシュボア紀行 2) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 110808 必ずエコノミーの理由 超ラッキーでビジネスクラス(リシュボア紀行 2)

 5月10日、昼11時のANA便で成田出発、ロンドン経由でリスボンに向かうことになった。いつも通りのエコノミークラスで行く。あの狭苦しい空間で、クマのデカイ肉体を小さく折り畳み、縮こまって息をひそめながらヨーロッパに向かうところに、また絶妙の妙味が潜んでいる。
 ビジネスクラスに乗って乗れないことはないが、ビジネスクラスは重役のオジサマが会社のオカネで乗るもの。または偉い官僚オジサマが税金をつかって贅沢な視察旅行をするためのもの。自腹でビジネスクラスに搭乗するのは、少々金銭感覚が狂っているように思う。
 例えば、ANAで東京-ロンドンを往復すると、エコノミーなら14万円程度。ビジネスクラスだと約70万円。おお、5倍である。ビジネス1回分で、5回も行けちゃうじゃんか。
 しかもクマ蔵は年間3回はヨーロッパをぶらついてきたいので、万が一「私は毎回ビジネスですね」とかオシャレなことをホザイていたら、飛行機代だけで年間200万円も払わなきゃいけない。そんなのは、やっぱり今井君の金銭感覚を逸脱している。
基本イメージ1
(旅の基本イメージ1 リスボンで)

 第一、旅の目的は「2週間、徹底的に脱力してくる」である。地方行政の実態視察でもなければ、大企業の欧州運営会議ご出席でもない。タレントさんの隠密旅行ですらない。
 リスボンの居酒屋で、オジサンやオバーサンの様子を眺め、アクビしながら日が暮れる。マルセイユの裏町で、ヌルいブイヤベースの小骨が喉に刺さって目を白黒させる。バルセロナの海岸の飲食店で、タコとイカとエビと得体の知れない貝を注文し、日がな一日咀嚼の努力を続けるうち、翌日「アゴの筋肉痛」というマコトにケッタイなものに苦しむ。
 そういう旅行に出るのに、ビジネスクラスは生意気である。怠けにいくのに「絶対ビジネスクラスで」なんちゅうことは、金持ちのドラ息子どんに任せておけばいい。ボクみたいな、国鉄の中間管理職の息子がそんなことをしたら、そこいら中の猫たちが腹を抱えて笑い転げるだろう。
 この間、不動産屋さんのチラシが郵便受けに入っていて、「代々木上原か幡ヶ谷地区限定で、土地100坪~200坪求めています。予算8億円!!」とあった。この周辺は1坪=約300万円、要するにバブル後遺症地域である。200坪も購入して何にするのかと思ったら「趣味のクルマ4台のガレージ、兼アトリエにします」とのこと。うーん、やれやれ、である。
 怠けにいくのにビジネスとかファーストクラスとか、そういう行動はこの種のヒトに任せておけばよくて、やっぱり今井君はエコノミー独特の縮こまった世界を愛するのである。
基本イメージ2
(旅の基本イメージ2 リスボンで)

 そもそも、ムリしてビジネスなんかに乗ると、旅行が忙しくなってしまう。「70万円も払ったんだから、アレもやらなきゃ、コレもしなきゃ」で、計画が異様に慌ただしくなって、ひとつのところに落ち着いて座っていられない。
 「今日も何もしなかったな」と、夕暮れのホテルの部屋で安堵の胸を撫で下ろす、そういう豊かな幸福を味わってみたまえ。「アレもしなかった」「コレも計画通りに進まなかった」「ボクはダメな人間だ」と、自分を責めてばかりいる旅なら、しない方がいい。日本で仕事に励んでいる方が、どれだけマシか分からない。
 以上が、今井君の負け惜しみである。長く生きていると、単なる負け惜しみもこんなに長く精巧になって、負け惜しみを読んだヒトが、負け惜しみだと理解できず、「さすがに今井先生は、旅についても独特の考えをもっていらっしゃる」とか、妙に感動してくれたりする。
 そういう素直なヒトに悪いので、ここでチャンと「はい、負け惜しみでございます」と告白しておくことにする。長く生きていると、どんな人間でもチャンと成長して、負け惜しみなら負け惜しみだとチャンと告白する、素直な気持ちが身に付いてくるものだ。
基本イメージ3
(旅の基本イメージ3 バルセロナで)

 つい5~6年前までは、ビジネスクラスは「ホントのエリート向けの応接室」という感覚で20席程度しかなかった。残りはみんなエコノミーで、座席数も圧倒的に多く、体育館にパイプ椅子を並べた大衆席の感じだった。
 それが最近、国際線のヒコーキのエコノミー席が減っている。クマ蔵の気のせいかもしれないが、ANAの場合、乗り込むと「あれれ、ビジネスクラスばっかりじゃん」と驚くほどたくさんの高級座席が並んで、目が回りそうになる。
 その後ろには「プレミアム・エコノミー」という中途半端な座席が続く。日本語にすれば「高品質な安い席」。三菱東京UFJ銀行に「スーパー普通預金」というマコトに奇妙な口座があって、通帳にはカタカナで「スーパー・フツウ」と印字されてくるが、フシギな2大名称の栄誉に輝くのは、「プレミアム・エコノミー」か、「スーパー・フツウ」か。それを考えて再び目が回りそうになる。
基本イメージ4
(旅の基本イメージ4 バルセロナで)

 我がエコノミークラスはその先である。今井君は度重なる出張や海外旅行のおかげで「ANAプラチナ・メンバー」。おかげで、ビジネス席のヒトたちと一緒に、ごく普通の人より先にヒコーキに搭乗させてもらえるスーパー・フツウな立場にある。
 その立場を利用して、すっかりウキウキしながら、「一足お先に」とスーパー・フツウな搭乗をするのであるが、おお、やっぱりエコノミーの座席数は減少している。以前は300席も400席もある広々とした空間だったが、今は大手予備校の小教室程度か。150席程度なんじゃないか。
 こうなると、以前は「その他大勢で何が悪い?」とそっくり返っていたのが、今は何だか肩身が狭い。ましてや最近は、こういうヒコーキの中でも、CAや乗客の中に「今井先生ですか?」と声をかけてくるヒトがいる。
 そういうヒトたちが、「何だ、エコノミーで行くんだ。そうなんだ。ケッコ、ケチですね」という驚きの表情でいつまでもクマ蔵を睨んでいるのは、こちらとしてもケッコ、苦しいものである。今日のブログの前半部の「負け惜しみ」を、彼ら彼女らに丁寧に語り尽くせばいいのだが、彼ら彼女らにそれを理解する気力や余裕があるとは思えない。
基本イメージ5
(旅の基本イメージ5 バルセロナで)

 だから、成田空港の搭乗口カウンターで名前を呼び出されたときは、「お、来たかな」というガッツポーズを抑えきれなかった。諸君、搭乗口で呼び出されるというのは、「ダブルブッキングになっちゃったので、アップグレードします」という話なのだ。正確ではないが、
「エコノミーが満席で、今井サマのお席がダブルブッキングになっております。つきましては、ビジネスクラスに空席がございますので、よろしければそちらにお移りいただければ幸いでございます」
みたいな、まあそんな話である。
 がほ、がほ、がほ、である。「よろしければ」も何もない。そういうことなら、いつでも、何でも、遠慮なく相談していただきたい。今井サマは、ちっとも構わない。出来れば、毎回でもそうなっていただきたい。
 もちろん、料金はエコノミーのママですよね? 機内のお食事は、もちろんビジネスクラスのお食事ですよね。差別されたりしませんよね。「コイツは、エコノミー料金でビジネスクラスに乗ってるんだぜ」って、告げ口して回る意地悪なヒトはいませんよね。こっそりそれと分かるような旗を立てて、客室乗務員同士でせせら笑ったりしませんよね。
ビジネスチケット
(ウルトラ・ラッキーなビジネスクラスのチケット)

 カウンターで取りかえてもらったチケットは、15D。間違いなくビジネスクラス。余りのラッキーに、クマ蔵の口はまるで耳まで裂けたようになった。
 無理に閉じようとしても、口の端から耳の方に臨時のジッパーが出来て、ジーーッと音を立てて開いてしまう。「みっともない」と思っても、笑いを抑えることは不可能だ。30年むかし、「口裂け女」という下品な都市伝説に子供たちが怯えたことがあったが、まあそういう口である。
 なお、一昨日のブログで「気合い十分だ」のタイトルを付けたニャゴロワの写真2枚を見て、「口が裂けませんか」「ネコって、コワいですね」「動物を飼うって、なかなかタイヘンなコトなんですね」という読者の反応があった。
 中には「興福寺の天燈鬼・龍燈鬼みたいですね」というヒトもいて、思いのほか評判がよかったが、確かに「天燈鬼」の雰囲気はよく出ている。しかし諸君、あれはニャゴロワのアクビである。寝転がってアクビした瞬間をとらえ、写真を90°回転させれば、あら不思議、興福寺・天燈鬼の完成である。
天とう鬼
(ニャゴの天燈鬼、拡大図)

 こういうわけで、2010年5月10日、ダブルブッキングのおかげで片道7万円の席から35万円の席にアップグレードしてもらえたウルトララッキーグマは、大きな口から赤い舌を吐き出しながら、搭乗ゲートに並んだ。
「まず最初に、ビジネスクラスにご搭乗のお客さまからご案内いたします」
というアナウンスがあったからである。ついさっきチケットを交換してくれたカウンター職員2~3名と目が合って、思わず「スイマセン、スイマセン」と何度も頭を下げた。だって諸君、リスボンに怠けに出かけるのに、35万円-7万円=28万円も得してしまったことになるのだ。
 こうしてホクホクグマさんは、ロンドン・ヒースロー空港行きのビジネスクラスにデカイ肉体をスッポリ収めた。いろんな便利な装置がくっついた座席がたいそう珍しかった。
基本イメージ6
(ニャゴと同じポーズでも、リスボン・オジサンなら穏やかだ)


1E(Cd) Menuhin:SCHUBERT/Symphony No.2・6
2E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES②
3E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES③
4E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES④
5E(Cd) Deni HINES:IMAGINATION
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