Wed 110803 甲子園に行ってこようか 能代商旋風を讃える レトロ軍団vsセミプロ軍団 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 110803 甲子園に行ってこようか 能代商旋風を讃える レトロ軍団vsセミプロ軍団

 8月10日で夏の講演会ラッシュは全て滞りなく終了。6月9日以来2ヶ月間、いやはや今年の夏は忙しかった。6月中旬からは「早稲田政経の超長文1問を50分で解説×3」などというハナレワザの日々もあったし、計6大学9学部分の過去問解説授業をキチンとこなした。しつこい夏風邪を引きずりながら、河口湖合宿に10日。公開授業25回。ま、文句の余地なく、働き者クマさんである。
 働き者生活を2ヶ月も続けたから、「しばらく怠けるか!!」と決意。甲子園の高校野球を腰を落ち着けて観戦することにした。こんなにしっかり観戦したのは2006年以来だ。2006年とは、斉藤祐樹の早稲田実業が優勝した年。あの夏は、早実が得点するたびに涙を流しそうになりながら、お腹の中で「紺碧の空」を絶唱したものである。
 2011年夏は、我が秋田県代表・能代商業が旋風を巻き起こすのを、やっぱり涙ぐみながら見つめていた。1回戦の神村学園戦こそ、歴史的大敗とか「14年連続初戦敗退」がコワくてコワゴワしか見られなかったけれども、「ゴハン2杯食べるように努力してます」という細身のピッチャー保坂が今にもポキリと折れそうになりながら、信じがたいほど粘り強い投球を続けるのを目撃して、TVの前の応援に熱が入った。
テレビ観戦1
(ニャゴ姉さんも、おとなしくテレビ観戦 1)

 2回戦で香川県代表・英明高校に2-0で完封勝利をあげてから、「どうせヒマなのだ。甲子園に行ってこようかな?」と真剣に悩むようになった。もともと今井君は神出鬼没。「カレーを食べるためだけ」に春日部に現れたかと思えば、
「あれれ、京都で山鉾巡行ながめてる」
「あれれ、サッポロビール園でジンギスカン食べてる」
「あれれ、ミュンヘンでホフブロイハウスに入り浸ってる」
「あれれ、博多の屋台で盛り上がってる」
みたいに、いくらでも「あれれ」を積み重ねるのが得意中の得意。能代商の応援で甲子園に駆けつけるぐらいは、朝メシ前だ。
テレビ観戦2
(ニャゴ姉さんも、おとなしくテレビ観戦 2)

 ただし問題なのは、①甲子園の夏の猛暑と②「あ、今井だ!! ラッシュ」である。この猛暑の中、ノコノコ甲子園に出没したツキノワグマが熱中症で倒れたんでは、みんなに迷惑がかかる。「涼しい居間でクーラーつけて、ビール片手に」が無難なところだ。
 「うぉ、今井だ!! ラッシュ」については、そこいら中のツイッターに「今井目撃情報」が溢れているほどだ。甲子園などという場所で「今井♨出没!!」などということになると、これもまた面倒。暢気にビールも飲んでいられない。関西の友人たちと酒を飲みに行くついでがあれば別だが、ま、今回の甲子園行きはあきらめるのが、やはり無難である。
テレビ観戦3
(ニャゴ姉さんも、おとなしくテレビ観戦 3)

 広島・如水館との3回戦は、ついさっき延長12回裏に決着がついて、3-2で能代商がサヨナラ負け。身長172cm、これ以上細くなれないぐらい細い保坂君は、今日だけで179球を投げ抜いて、まさに「燃え尽きた」感じ。マコトに爽やかな旋風を巻き起こしたと思う。
 9回裏にサヨナラ負けの大ピンチ、10回裏にもサヨナラ負けの大ピンチ。それぞれを外野手の奇跡的な好返球で切り抜けた。12回表にいったんは2-1と勝ち越し、相手ピッチャーが呆然と立ち尽くした。
 流れからして完全に負けゲームを、ここまで粘り強く戦っただけに、ホントに惜しかった。おお、このクマ蔵が甲子園に駆けつけて「ガオォー!!」と一言叫んでいたら、あのまま押し切れたかもしれない。
 しかし諸君。このレトロな能代商旋風は、さすがにこのあたりが限度だったと思う。丁寧に丁寧に粘投する、細身で小柄なピッチャー。下位に回ると明らかに非力で、ボールにコツコツあてるのが精一杯という打線。最後まであきらめない基本に忠実な守備。まるで昭和中期の高校野球を髣髴とさせる「高校生らしいプレー」の連続だった。
行けー
(ニャゴ姉さんの「そこだ、行けェー!!」)

 今や「高校生らしい」という形容詞も様変わりしてしまった。勝ち進んだ他のチームを見れば、7番打者でも8番打者でも軽々とスタンドまで運んでしまう豪快な打撃。一挙に5点も6点も取ってしまうビッグイニングの連続。8回裏に一挙9点とか、9回2アウトから8点奪って逆転とか、9回に満塁ホームランで逆転とか、野球マンガだってなかなか描けないような劇的なシーンが続く。
 しかも、劇的シーンを演じながら、選手たちに悲壮感は感じられない。9回2アウトまで追いつめられてもみんなニコニコ笑っているし、監督が鬼のような表情で選手を叱咤するシーンは見られない。失敗しても拍手、エラーしても笑顔、「楽しんでこよう」を地でいくようなチームばかりだ。マスコミもこぞってニコニコ野球を褒めたたえ、ニコニコしていないチームなんか探すのが難しいぐらいだ。
あーあ、負けちゃった
(あーあ、負けちゃった)

 県代表に占める県民比率10%以下とか、青森の光星学院みたいに「18人中県民は1人だけ」などという極端なチームもあって、「郷土の名誉」「母校の栄誉」みたいな重苦しいモノをかかえていないから、ニコニコ野球になるのは当たり前。つまらない名誉や栄誉のために大ケガをして、彼らの野球人生を台無しにしないように、明るく楽しんでくればそれでいい。
 「全試合、エースが一人で投げ抜く」「腕も折れよと投げ抜く闘志」「とうちゃん!!」「ねえちゃん!!」「鬼気迫る直球勝負!!」などというのも、今ではすっかりレトロ。瞳の中で炎がメラメラ燃え上がるとか、1球投げるだけで連載1回分終わるとか、そんなのはもうアリエネーぐらい古くさい。
 セミプロ選手を集めて勝ち抜いていく私立バブルチームには、ピッチャーが3人も4人もいて、しかも誰でも先発&完投能力あり。控え投手でも最速140km以上、球種も豊富。その継投を間違えて悲劇的な逆転負けをする強豪もあったが、ついに保坂君が一人で投げ抜いた我が能代商などから見たら、まさに羨ましいかぎりだ。
スライディング1

スライディング2
(ニャゴ姉さん、迫力のヘッドスライディング)

 諸君、能代商旋風がどのぐらいレトロだったか、もう1度心に刻んでくれたまえ。選手は全員、秋田県能代市周辺の地元っ子。野球留学生ゼロ。ピッチャーは、まあ1人で、しかも超・軟投派。直球でも130kmが出ない。他のチームの控え投手が軽く投げた変化球が130kmを超え、保坂きゅん(一昨日の記事参照)が渾身の力をこめて投げた最後の1球が130km以下だった。
 その彼らの頭上に「郷土の栄誉」が重苦しく漂い、県民は握りこぶしを固めてテレビの前にクギづけ、試合中は秋田市街からも能代市街からも人影が消えた(はずだ)。これは、昭和40年代のマボロシだ。高度成長期の高校生チームが、40年後の甲子園にタイムトンネルをくぐってやってきたのだ。
 対する相手は、どこもみな21世紀のセミプロ集合体。これ以上勝ち進んだら、どこかで歴史的大敗を喫するのが何となく見えていたような気がする。コツコツ打って粘り強く守る、高校野球本来の姿を見せてくれたこの段階で、温かい拍手を浴びながら爽やかに甲子園を後にする。このぐらいで、実はちょうどよかったのである。素晴らしいチーム、素晴らしい投手だった。

1E(Cd) Jandó:MOZART/COMPLETE PIANO CONCERTOS vol.9
2E(Cd) Jandó:MOZART/COMPLETE PIANO CONCERTOS vol.10
3E(Cd) Jandó:MOZART/COMPLETE PIANO CONCERTOS vol.11
4E(Cd) Eschenbach:MOZART/DIE KLAVIERSONATEN 1/5
5E(Cd) Eschenbach:MOZART/DIE KLAVIERSONATEN 2/5
total m15 y888 d6849