Sat 110723 浅草でカタキ討ち ウナギは平凡、マルガリータ作戦も失敗 撤退の大切さ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 110723 浅草でカタキ討ち ウナギは平凡、マルガリータ作戦も失敗 撤退の大切さ

 さて、こうしてラホールのカレーを諦めた今井君は、まさにイカヅチの如く春日部から浅草に取って返した(スミマセン、昨日の続きです)。帰りも東武特急「スペーシア」、旅の友は缶ビールにビーフジャーキー。春日部のカレーのアダを浅草で討つために、すでに浅草のめぼしいカレー屋情報をケータイ画面メモに確保した。
 ところが、今井クマ蔵の勢いを著しく削いでしまう奇妙な車内放送がはいる。「車内に不審な人物を見かけましたら、近づかず、乗務員にお知らせください」というのである。「不審なモノを見かけたら近づかない」なら理解できるが、「不審な人物を見かけられましたら、近づかず…」というのは、日本語に敏感な今井君にとって、座視できない奇妙な響きである。
渋谷カレー屋
(この日の締めくくり、渋谷カレー屋での今井君)

 しかも、その奇妙な車内放送にはチャンと英語版もある。英語版は、日本語放送をそのまま英訳しただけの原稿を、落ち着いたオバサマ・ナレーターが読み上げるのであるが、このオバサマの気取った英語の発音が何とも悩ましいのだ。
 おそらくたいへん有名なナレーターオバサマなので、彼女の声は首都圏のどこに行っても耳にする。マコトに残念なことだが、高校生ふうに残酷にバッサリ言えば「ゲロ、ウザぐね?」「メンドぐね?」である。
 羽田空港からリムジンバスに乗っても、ヨーロッパから帰った成田空港でホッと新宿行きのバスに乗っても、必ずこのオバサマのナレーションで英語アナウンスがはいる。世田谷か西宮のオバサマが英会話を3年習った成果を発揮したような、「これ以上イヤらしい発音はありえない」という発音で、延々と車内アナウンスが続くのである。
 中でも一番ムカッとくるというか、最近の言葉遣いなら「イラッと」するのは、「ケータイ電話はご遠慮ください」のアナウンスである。「禁煙」もNo Smokingの一言を掲示すればいいのにSmoking is not allowed on this bus。中途半端に訓練した発音が「イラッと菅」を高めていく。そこへ「mobile phone禁止について」が始まる。
 今井君が思うに、ケータイ電話禁止に理由なんか一切必要ない。ところが日本人というのは丁寧に丁寧を重ねなければ気が済まない国民性なのである。車内でのケータイ電話禁止にも、「チャンとした理由をくっつけなければダメだ」とリムジンバス運営会社は思ったらしい。「ケータイ電話での通話はご遠慮ください」の直後に「…because it is annoying to your neighbors」と来てしまうのだ。
 日本語に訳せば「何故なら、近くに座っている他のお客に迷惑がかかるからです」。もっとカンタンに訳せば「周囲のお客をイライラさせるからです」または「まわりの客がイラッとするぜ」。何なんだ、この妙竹林な理由の付け方は。日本という国は、こういうアナウンスが、昼夜を問わず公共交通機関を席巻している国なのだ。
雷門
(浅草に到着)

 さて、そういうアナウンスに悩まされながら、今井君は浅草に到着。まだ15時前である。予定としては、まず春日部のカタキを討つために浅草のカレー屋を襲撃する。そのあと床屋も襲撃して、この1ヶ月間でモサクサ伸び放題になってしまった丸刈り頭を、気持ちいい5mmの丸刈り状態にもっていく。名付けて「マルガリータ大作戦」。何のことはない、丸刈りだからマルガリータ作戦。ヘナヘナ力が抜けていくような大作戦であるね。
 ところが、春日部のカタキを討てるほど爽快なカレー屋はなかなか見つからない。当たり前だ。春日部ラホールは、クマ蔵が数百年かけて探し当てた究極のカレー屋。たった15分かそこらネットを検索しただけでは、チャンとカタキを討てるような旨そうなカレー屋は見つからなくて当然なのだ。
スカイツリー
(仲見世付近からのスカイツリー)

 仕方なく浅草の街をウロウロしていると、目に入るのは寿司屋と天ぷら屋と鰻屋ばかりである。さすが外国人観光客のメッカ。大震災以来、欧米人の姿はメッキリ減ったとはいえ、店の看板や営業形態はカンタンに変えられないから、浅草で旨そうなカレー屋を発見するのは至難のワザである。
 面倒なので、ちょっと由緒正しそうな鰻屋さんにフラッと入って、ウナギで我慢することにした。入った店は「川松」。3500円の「富貴セット」でもいいが、ジャンボハンバーグカレーをひたすら求めていた胃袋君は、あきらかに不満そう。「えーっ、ウナギなんですかぁ?」とムクれてしまって、「それなら、別に安いので構いません」と露骨な拒絶の態度である。
川松うなぎ
(浅草川松、うな重・上)

 まあ、ならば仕方ないだろう。一番シンプルに「うな重・上」に冷酒300mlを1本注文して、春日部カレーのカタキ討ちは、次回春日部に出かけるまでお預けにすることに決めた。15分ほどして運ばれてきたうな重どんは、ごく平凡でごくアッサリした上品な一品。確かにこれではちっともカタキ討ちにならない。
川松店内
(浅草川松・店内)

 寂しい気持ちで店を出て、マルガリータ大作戦に向かう。目指す床屋は「男爵」。いかにも浅草らしい、古色蒼然としたネーミングであって、「冷やしシャンプー」という面白そうなポスターも貼り出されている。
 なぜ「男爵」どまりにしたのか。公爵でも侯爵でも伯爵でもいいところを、どうして遠慮して男爵なのか、そういうところも大いに興味深い。もう一つ、子爵というのもあって、ラクロ「危険な関係」の副主人公ヴァルモンは子爵である。「危険な関係」は1988年の映画もあって、マルコヴィッチ演ずるヴァルモンvsグレン・クローズ演ずるメルトゥイユ侯爵夫人の死闘は悪くない。
 ところが、ついてない1日はどこまでもついてないものであって、このマルガリータ大作戦もまた不発に終わった。クマ蔵の丸刈りは5mmのバリカンがいいのに、「6mmしかありません」と言われた段階で、もうガッカリである。
男爵
(男爵)

 諸君、5mmと6mm、たった1mmの微妙な違いを理解するのは、本人以外には難しいかもしれない。しかしでござるね、丸い頭をクルッと撫で回す手触りの爽快さ、丸い頭をペシっとたたいて「ぜんぶ頭に入ってるから!!」と宣言するCMの爽快さ、夏の朝のヒンヤリした風が短い毛のスキマをサワサワ吹き抜ける爽快さ、ありとあらゆる爽快のレベルが、たった1mmの違いで全く違うのだ。
てぬぐい屋
(浅草、手ぬぐい屋)

 仕方がないので、地下鉄銀座線1本で渋谷に移動。渋谷のカレー屋で、ある程度カタキを討ってからでなければ、今日1日を締めくくれないじゃないか。確かに2時間前のうな重がポンポンに重くのしかかっているが、カレー一皿食べられないということはないだろう。第一、今日中に78台を回復しないと、スーパー円高に苦しむ日本経済はますます大きなダメージを受ける。
 ところが&ところが、ついてない日は、どこまでも&どこまでもついてないのである。入ったのは、新宿中村屋・東急東横店。一驚を喫するほどに狭苦しい店内に、今井君のテーブルの横には全く無意味と思われる柱が1本。そういう場所にギュッと押しこめられて、でてきた「当店オススメ・チキンカレー」は、カレーとは思えないほどバターのタップリ入った超コッテリのモッタリカレーであった。
渋谷カレー
(バターたっぷり、渋谷もったりカレー)

 諸君、「潔く撤退すること」の重要性を知った方がいい。「粘り強く」の美名に隠れ、潔く撤退を忘れて意地汚く戦いつづけると、この日の今井君のようなアリサマになる。春日部カレーは目前でシャットアウト、ウナギは平凡、マルガリータは6mm、カレーはモッタリ。良いことナシの1日は空しく暮れて、講演会ラッシュ直前の1日は、後悔だけを残して終わってしまったのである。

1E(Cd) Zukerman:MOZART/REQUIEM K.626
2E(Cd) Zukerman:MOZART/THE 4 HORN CONCERTOS
3E(Cd) Kirk Whalum:COLORS
4E(Cd) Barenboim/Zukerman/Du Pré:BEETHOVEN/PIANOTRIOS⑧
5E(Cd) Casals:BACH/6 SUITEN FÜR VIOLONCELLO 1/2
total m114 y733 d6694