Sat 110709 春日部で講演会 国立学院予備校の思ひ出・クマ蔵の修業時代(第1回) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 110709 春日部で講演会 国立学院予備校の思ひ出・クマ蔵の修業時代(第1回)

 7月15日、埼玉県春日部市で講演会。19時開始、21時終了、出席者約110名。
 最近の春日部では、夕暮れになると樹々に大量のムクドリが集まって、黒々とした不気味な影をつくる。午後6時頃から、陽がトップリと暮れる8時近くまで、ムクドリの大合唱が駅前一帯を圧するのである。その大合唱を聞きながら、今井君はカレーの汗をキレイに拭ってワイシャツに着替え、講演会への準備を整えた。
 講演会が終了した直後の21時、栃木県南部を震源とする地震があって、最大震度は5+。春日部も震度4を記録した。初めのP波が「これは大きいぞ」と予感させる粘っこい揺れ。その直後、校舎はミシミシ音を立てて大きく揺れた。どうも最近、大震災の余震がまた活発になってきたようである。
 この揺れで、外の樹々で休んでいた大量のムクドリさんたちが目を覚まし、一斉に高く叫びながら飛び立った。おお、まさにデュ・モーリアの世界。というか、もちろんヒッチコックの世界。ムクドリさんも、1羽とか2羽を図鑑やバードウォッチングで見るなら可愛いが、この大群は早めに何とかした方が精神衛生上いいのではないかね。
春日部1
(7月15日、埼玉県春日部市での講演会1)

 校舎を出て、いい気持ちで駅までフラフラ歩きながら、春日部で生活していた時代をいろいろ思い出した。春日部を初めて訪れたのは、電通をヤメてすぐの頃。仕方なしにアルバイト気分で働いていた塾の春日部校に配属されたときである。
 塾の名前は「国立学院予備校」。「国立」は「クニタチ」であって「コクリツ」ではない。「クニタチガクイン」であって「コクリツガクイン」ではないのだ。しかし世間の風は冷たいもので、電話問い合わせのほとんどは「コクリツガクインさんですか?」とくる。認知度の低い企業で働くのは、こういうところから既にたいへん厳しいので、いちいちプライドを踏みつけにされる。
 それでも一応は、ジャスダック上場企業。正式名称は「株式会社・学究社」。予備校で歴史上初めて上場した企業で、東京多摩地区では塾のトップブランドだと自称していた。2011年現在、「国立学院予備校」ブランドの校舎展開は完全に終了して、全校舎「ena」と改称している。
 当時、よせばいいのに全国展開を夢にみて、よせばいいのに「ならば、まず関東制覇を」ということになった。春日部や津田沼や上尾や熊谷や藤沢に急速店舗展開したのが1980年代後半から1990年代前半。新京成電鉄や神戸電鉄と合弁で駅ビル内での校舎展開を進め、ほんの一瞬だが経済界の寵児にもなったりした。
春日部2
(7月15日、埼玉県春日部市での講演会2)

 その春日部校舎に配属されたのが、今井君の春日部との出会いであり、「ラホール」のインドカレーとの出会いである。生まれて初めての春日部は、走る電車のほとんど全てが「準急・浅草ゆき」という、昭和の匂いがムンムンする未知の世界だった。
 初めて出勤する朝、北千住で乗り換えた東武伊勢崎線「準急・館林ゆき」は、大正の香りを残す木造の電車。諸君、驚くなかれ、首都圏にもつい最近まで木造の電車が現役で走っていたのだ。木材の床からはプンプン立ち上る油のニオイ。木に油を塗るという習慣だって、チャンと残っていたのである。
 荒川沿いに、西新井、草加、越谷、せんげん台、春日部の順に停車していく準急の窓からは、タオル鉢巻のオジサンが大きな荷台の黒い自転車に乗って、雨の中を猛然と飛ばしていく姿を目撃。「おお、たいへんな場所に配属されてしまった」というのが、当時の正直な感想であった。
国立学院予備校
(かつての「国立学院予備校 春日部校」。看板は撤去され、飲食店に変貌していた)

 今井君の過去を振り返ってみて、国立学院予備校での勤務時代ほど苦渋に満ちた日々はなかった。一応正社員として採用されたのだが、配属された春日部校には、正社員は4人しかいない。
 電話に出るのは、一番若い今井君の役目。社内規定で、電話には「こんにちは、国立学院予備校春日部校です」と明るい声で出なければならない。受話器を取って、いきなり「こんにちは」はなかなか恥ずかしいが、それを省略するとコッピドク叱られる。
 しかも電話に出るたびに「コクリツガクインさん?」と聞かれる。「いいえ、コクリツと書いてクニタチと読みます。東京の国立市から発展した塾なので」と説明しなければならない。すると「ココラヘンではあんまり聞かない名前だけど、大丈夫なの?」と質問される。うーん、大丈夫かどうか、電話に出ている今井君も何だかハッキリしなくなる。
オシャレ横町
(国立学院予備校があった春日部駅前「おしゃれ横丁」。うーん)

 電話は「合格実績は?」と聞いてくる。「予備校」とは言っても高校入試が中心の塾だから、地元の有名高校にたくさんの合格実績がなければ信用されないのだ。しかし何しろ東京の多摩地区で育った塾なのだから、埼玉県とか春日部周辺とか、そのあたりの高校への合格実績は皆無である。
「浦和高校には、何人ぐらい合格してるの?」
「春日部高校とか、不動岡高校とか、越谷北高校は?」
「浦和一女とか、浦和明の星とかには、全然合格してないじゃないの」
うーん、確かにその通り。新人講師にして正社員の今井君は、完全に答えに詰まるのだ。不動岡高校、越谷北高校、春日部高校と立て続けに聞かれたって、「そんなこと、ここでこの私に聞かれたって、ワカるワケないじゃないですか」と、イラク戦争当時の小泉純一郎首相みたいな返答しか出来ない。
 そもそも今井君は「高校生や大学受験生に英語でも教えて、暢気にしばらく食いつないで行こう」という気軽な発想でこの会社に入った。正社員になったのも、「アルバイトとか時間講師でいるよりもオカネがたくさんもらえるだろう」というだけのことだ。
 春日部とか越谷とかの高校入試のことなんか興味は全くないし、電話番や雑用係を地道にこなして過ごすマジメな人生を始める気持ちも、まだゼロであった。「明日から春日部に行ってくれ」「新校舎だ、よろしくお願いする」と急遽言い渡されて、地元の事情を研究するヒマもなかったのである(明日に続く)。

1E(Cd) Rampal:VIVALDI/THE FLUTE CONCERTOS 2/2
2E(Cd) Anne-Sophie Mutter:VIVALDI/DIE VIER JAHRESZEITEN
3E(Cd) Krause:BACH/DIE LAUTENWERKE・PRELUDES&FUGEN 1/2
4E(Cd) Krause:BACH/DIE LAUTENWERKE・PRELUDES&FUGEN 2/2
5E(Cd) Karajan & Berliner:BACH/MATTHÄUS-PASSION 1/3
total m44 y659 d6624