Sat 110625 難易度のギャップが大きすぎるんじゃないか 過去の問題の哀れな残骸たち | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 110625 難易度のギャップが大きすぎるんじゃないか 過去の問題の哀れな残骸たち

 早稲田大学法学部の問題を解説していて最も腹立たしいのは、問題どうしの難易度のギャップの大きさである。難問は、あまりにも難問で「こんなの30分で解ききれる受験生がいるの?」。平易な問題は、あまりにも平易で「こんなの出来ないヒトが、早大法を受けるか?」なのだ。

 こんな難問を涼しい顔で解く受験生に、なぜこれほど平易な問題も解かせなければならないのか。また正反対に、この平易な問題に四苦八苦する受験生に、これほどの難問を与えていったい何になるのか。若者コトバで言えば「意味ワカンネェ!!」「意味ナグネ?」だ。

 具体的に見ていこう。ズラリと並んだ7問のうち、第3問から第6問の計4問はカンタン過ぎ。今井君も「意味ワカンネ」だ。ハッキリ記念受験のヒトビト以外は、まあ全員が満点なんじゃないか。

 第3問「次の4つのうち、間違っているものを1つ選びなさい」が、カンタン過ぎの最たるものである。例えば
「後ろに2つの目的語があるから第4文型の動詞でなければならない → sayが間違い」
と判断させる問題。これは高校1年1学期の中間試験レベル。あるいは、
「reachは他動詞なのに、後ろに前置詞toがくっついているから、間違い
「makeの後の不定詞にtoがくっついているから、間違い
と判断させる問題。これらは完全に高校入試レベルだ。
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 第6問の条件英作文は
(1)何時の待ち合わせか、彼女はわかっているんですか?
(2)彼女が時間通りに来ることはほとんどありません。
(3)コンサートが始まるまでには、きっと来ますよ。
の3題。この程度なら、早大学院や早大本庄みたいな早大の付属高校でも実際に出されるんじゃないか。付属高校入試レベルの問題を、なぜ学部入試に出題するのか。クマどんはフシギでならない。

 このタイプの条件英作文は、1970年代から80年代にかけて、実は早大法学部入試の花形であった。
「ほぉ、早大法が志望か。なら条件英作文対策だな!!」
と高校の先生がコックリうなずく感じ。当時は、今とは比較にならない意地悪なハイレベル問題が7つも8つもズラリと並び、まさに偉容を誇ったものである。「早大法学部対策」と称し、条件英作文の過去問を20年分も30年分も並べて、「どうだ!! スゴいだろ?」「驚いた?」と自慢するような予備校テキストもあった。

 要するに、これはあの頃の残骸なのだ。すっかり形骸化して、出題形式だけが問題用紙の片隅に残ったのである。
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 第5問「適切な前置詞を入れなさい」も状況は同じである。上から順番に、
aim at「…をターゲットにする」
be keen on「…したいと熱望している」
have difficulty in …ing「…に苦労する」
keep O from …「Oさんが…するのを妨げる」
free of charge「無料で」。
の5問。こりゃ、カンタンすぎんじゃね? 超基本的な表現さえ知っていれば瞬間的に解ける問題ばかりで、もう何だか「参加賞」の様相を呈している。「よく早稲田を受験してくれました。参加賞として5問ぶん、無料で得点をプレゼントします」に過ぎない。それで最後がfree of chargeなのかね。

 実は、これも形骸化した「過去の残骸」なのだ。80年代から90年代にかけて、同じ形式の前置詞補充問題が早大法の花形だったことがあった。やっぱり「ほぉ、早大法が志望か。なら前置詞補充問題だな!!」と塾の先生がコックリうなずく感じ。

 しかしあの頃の難易度ははるかに高く、予備校生たちは「ああいう問題を解くにはどうしたらいいんですか?」と、真剣な表情で講師の周囲に集まったものだ。

「解くにはどうするも何も、勉強するしかないだろう」
「辞書を丹念に読み込むしかないな」
などというヘタな返答しかできない他の講師を尻目に、「口から生まれた口太郎」である今井君は、前置詞についての楽しく血湧き肉踊る説明を日々大研究。「今井君、予備校界に大進出」のキッカケにもなった。大いに懐かしい問題である。それだけに、過去の残骸に堕した姿を見るのは悲しい。
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 第4問、文法語法の正誤判定問題となると、形骸化&残骸化が最も顕著である。やっぱり&やっぱり「ほぉ、早大法が志望か。ならTOEICタイプの正誤問題だな!!」と予備校講師がニンマリうなずく感じ。確かに、あの形式でズラリとハイレベル問題が20問近く並んだ偉容は、生半可な受験生を圧倒する迫力があった。

 やっぱり&やっぱり「ああいう問題を解くにはどうしたらいいんですか?」と真剣な表情の受験生が講師の周囲に集まっても、講師の中には
「まあ、無理だ。あきらめるしかない。1/3とれたら御の字だ」
と驚きのおコトバを吐き出すヒトさえ存在した、まさに合否のカギを握るような問題だったのだ。

 それが、今やたったの3問。「ならば、思い切って全部なくしちゃえばいいじゃん。何でこの形式を残してあるの?」という疑問が湧き上がるが、どうもその疑問こそ、問題の核心をついているのかもしれない。
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 まあクマどんの幼稚な想像に過ぎないのだろうが、「形骸化しても、形式だけは生き残らせてあげたい」と切望するノスタルジックな出題者が、出題者集団の中に少数派として生き残っているんじゃないか。

 21世紀に入って急激に長文化が進み、有名予備校講師どうしでも複数の問題で模範解答が食い違うほど難しくなった早大法の英語入試について、
「こんなに難度の高い問題ばかりでは、早稲田らしくない」
「ほら、あんまり難しくするから、志望者が減って、競争率はどんどん下がっていくじゃないか」
「実際、2009年が7.7倍、2010年が6.6倍、2011年は5倍台まで低下。ほんの20年前には20倍だの30倍だの言ってたのに」
「地方のバンカラな天才タイプが早稲田からどんどん消えて、英語ばかり得意な都会のオボッチャマ&オジョーサマばかり。早稲田らしさがなくなっちゃったじゃないか。これじゃ慶応とちっとも変わらないじゃないか」
「ほーら、早稲田の司法試験合格者が激減。昔は東大よりたくさん合格したこともあったんだぞ。今の英語入試は、早稲田の自殺行為なんじゃないか」
と考える少数派の教授の存在。今井君は、形骸化した残骸問題を解説しながら、彼ら少数派のうめきが聞こえるように思った。

 しかも、クマ蔵が考えるに、少数派の意見にも傾聴に値する部分も少なくない。決して消え行く者のノスタルジーと一蹴して済む問題ではない。いたずらに長文読解問題を難問化させた結果として、早稲田キャンパスは「英語はネイティブハダシだけれども、日本語読解能力に疑問符」という学生が増えた。

 上智みたいなオシャレな雰囲気は悪くないが、今ひとつ活力を感じない。サラサラであって、ドロドロもネバネバもないのは、現代日本人の好みにピッタリ合致するけれども、だからこそ日本の活力は減退したのだ。ネバネバファン・今井君は、早稲田にこそドロドロとネバネバを期待するのである。
鹿児島到着
(無事、鹿児島に到着しました)

 なお、それではその第1問&第2問、長文読解問題はどうなのか。それについては、また日を改めて書くことにしたい。

1E(Cd) Norah Jones:COME AWAY WITH ME
2E(Cd) Gregory Hines:GREGORY HINES
3E(Cd) Jennifer Lopez:J TO THA L-O! THE REMIXES
4E(Cd) Myrra:MYRRA
5E(Cd) Hayley Westenra:PURE
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