Mon 110620 エスカーと、無視されたレータ 「遊覧亭」で磯料理実現 〆のカレーは銀座 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 110620 エスカーと、無視されたレータ 「遊覧亭」で磯料理実現 〆のカレーは銀座

 以上のようなことがあったからこその、22日のリベンジ大作戦である(スミマセン、昨日の続きです)。何でもいいから、本格的に磯臭いモノを食いたい。とにかく磯臭けりゃいい。切実な思いを胸に、今井君は再び江ノ島へ。海を渡り、坂を登り、エスカーに乗ると、エスカーは一気に江ノ島頂上までクマどんを運んでくれた。
 エスカーとは、驚くなかれ、エスカレーター4基の総称である。エスカレーターだから、それを全部言わずに「エスカ」まで発音し、「レータ」は無視して、最後の「ー」だけ後ろにくっつける。たいへん横着であり、かつ律儀でもある、要するにヤケッパチの命名だ。無視されたレータの立場が大いに心配である。
江ノ島のネコ1
(江ノ島のネコ 1)

 この命名が、どれほど多くの家族を悲惨な口論に陥れたことだろう。この日も、家族連れで訪れていたママが、園児ぐらいの子供に「ユウキくん、電車に乗る?」と甘い声をかけていた。ユウキ君は嬉しそうに「うん、乗る♡」と声を弾ませる。
 しかし、1名350円、家族3人で1050円ものオカネを払って乗ってみれば、ビルの4階までエスカレーターで上がるのと同じに過ぎない。350円をバカバカしいと思うかどうかは、どれほど早く磯臭い料理に顔を埋めたいと願っているかで決まるのである。
 園児のユウキ君は、磯料理なんかでダマされたりはしない。エスカーを降りた先に、必ず何か楽しい乗り物が待っているはずだ。彼の幼い心は、ビッグサンダーとかスペースマウンテンとか、せめて上野動物園のオサルの電車でもいい、何でもいいから、血湧き肉踊る遊園地の乗り物を求めて、激しく動揺するに違いない。
 「ママがウソをついた」「パパがウソをついた」、そうは思いたくないのである。「電車に乗る、確かにそう言ったのに、エスカレーターに4回乗っただけだった」、彼の幼い心は深く傷つき、沈み、「どこまで歩いても、ママはどうせボクの気持ちをわかってくれない」という悲しみは、ユウキ君の歩みを鈍らせる。
江ノ島のネコ2
(江ノ島のネコ 2)

 「いつもはあんなに素直なユウキが、今日はアタシの言うことをきかない」という焦りが、今度はママを苛立たせる。
「さっきタコ煎餅を買ってあげたばかりなのに」
「ユウキは反抗期にはいったのだ。ここで甘やかすのはユウキの将来のためにならない」
「ここで厳しい顔を見せることこそ、母親の使命だ」
「反抗期初期には、父親の役割が重要。パパの子育て参加を促さなきゃ」
と考える。だって、「たまごクラブ&ひよこクラブ」にそう書いてあった記憶がある。
 そこでママはパパに向かって
「あなた、ユウキ君に厳しく言ってよ。タコ煎餅もチャンと買ってあげたのに、何だかムクれて、言うこと聞かないじゃない」
と目配せする。ワガママで、疲れきっていて、二日酔いの抜けないパパは、もうそれだけでムカついて
「ユウキ、何ムクれてるんだ。早く歩け。歩かないと、もう何も買ってあげないぞ」
「だいたいママ、オマエが普段から甘やかすからいけないんだ。エスカーなんか乗らないで、坂道をチャンと歩かせればいいんだ」
こういうふうに、ユウキ君だけでなくママに向かっても、二日酔いのムカつきを爆発させる。
あげいん
(態度の悪いネコAGAIN)

 こうなると、一番ミジメな思いに沈むのは園児・ユウキ君である。なかなか「嵐を呼ぶ園児」みたいな勇ましいものは存在しないので、ユウキ君でもサクラちゃんでも、ダイキ君でもヒナちゃんでも、汗ばんだ手に握りしめたタコ煎餅は、涙の味でますます塩辛くなっていく。
 いや、「5歳6歳にもなって、もうおっきなお兄ちゃん(お姉ちゃん)なのに、タコ煎餅をもたされていること」自体が、とても子供っぽく、ミジメに感じられる。ねじり鉢巻のタコがこっちを睨んでいるパッケージが、自分の人生の悲惨を象徴しているみたいじゃないか。「もう、タコ煎餅なんかいらない」。彼or彼女はそう言い放ち、ママとパパを恐慌に陥れる。
 こうして、せっかく家族で出かけた楽しい江ノ島は、人生航路の困難を3人に思い知らせる厳しく苦い教材となるのだ。すべては、エスカーというヤケッパチの命名のなせるワザであって、空しく無視された「レータ」の悲しみは、初夏の爽やかな海風にも和らぐことはない。
磯料理1
(ついにたどり着いた磯臭い磯料理)

 さて、今井君がレータの悲劇を忘れるために入ったのは、江ノ島頂上からしばらく山を下ったところにある「遊覧亭」である。実は先週、「高級イタリアンにするか、磯料理にするか」でユウキ君以上に深く悩みながら、この店の前を2度も行きつ戻りつした。
 店のオカーサンはその今井君の懊悩の姿を記憶していて「確か、先週もいらっしゃいましたよね」と声をかけてくれた。昭和中期から営業していると思われる、古色蒼然とした店である。午後2時、すでに客の姿はない。
 後から入ってきた中年女性客2名は、「すみません、今日は生シラス終わっちゃたんですよ」というオカーサンの一言で、サッサと席を立って帰ってしまった。何とも冷たい、愛想のないお客もいたものである。
湘南の海
(遊覧亭からの風景、藤沢市街方向。ウッスラと丹沢が見えた)

 というワケで、江ノ島なのに今日の「遊覧亭」には生シラスがないが、まあ生シラスも釜揚げシラスも、本来クマ蔵が求めていたものではないから、別に構わない。焼きハマグリにサザエのつぼ焼きに生ビールを注文して、「ついに注文したぞ」「1週間前の恨みを晴らしたぞ」と大きな達成感を胸にいだけば、満足の汗が全身に滲み、吹き渡る初夏の海風が心地よい。
 右には、相模湾。その向こうにウッスラと丹沢や箱根の山々。トンビが舞い、相模湾をジェットスキーが走り、強い南風に山の深い緑が一斉に揺れて、まさに平和そのものである。
 1時間店に座って、焼きハマグリ2皿、サザエのつぼ焼き2皿、サザエの丸焼き2個、ワカメを練り込んだ「ザル磯そば」1皿。生ビール2杯。日本酒コップ2杯。瓶のビールも1本。午後3時過ぎて、なかなか他のお客が来なくて、静かで、大いにおめでたい。
 これで、先週お皿の上でバウンドしていたボヨヨン牛肉(昨日の記事参照)のリベンジはしっかり完了である。店の昭和中期の雰囲気もよかった。テーブルも椅子も、浅草合羽橋で購入したものらしい。店の前を飾る料理のサンプルも、おそらく合羽橋の製品だ。
磯料理2
(楽しい磯料理)

 「江ノ島で、一緒に店をやらないか?」と、まだ若かった先代の亭主(仮にカズヒロとしよう)がカノジョ(仮にユミコとしよう)に話しかけたのはおそらく40年前である。
 「いいわよ」と遠い水平線を見つめながら答えたユミコは、もちろんシックな湘南ガール、カズヒロは小粋な湘南ボーイ。お互いに「キャシー」「ジョー」とニックネームで呼び合う、たいへんナウな仲だったかもしれない。
 昭和というのは、そういうバカバカしくて余りにも濃厚な時代だったのである。石原裕次郎もその兄も、加山雄三も宍戸錠も、要するにそういう時代を疾風怒濤のように生き抜いたヒトビト。タコ煎餅だのイカ丸焼きだのアジのタタキだのの食べカスを奥歯に挟んだまま、湘南の海をノシ歩いたのが、彼らの熱い青春だ。余りに勇ましくて、声も出ない。
店内
(昭和ストーリーが今も漂う遊覧亭、店内)

 さて、元来なら、これでクマ蔵は代々木上原のネグラに大人しく帰るところである。しかし諸君、一つ忘れたことがある。「アルミ皿のカツカレーを、アルミのスプーンでガツガツかき込む磯臭さ(昨日の記事参照)」の実践である。
 時計は、すでに16時。腹の中はサザエとハマグリの磯臭さで飽和状態。ここでクマ蔵が思いついたのは、何と「銀座へ行こう」「東銀座、ナイルレストランのカレーを一気にかき込もう」。せっかくだから、「カレーは一流のカレーにしよう」ということである。
 江ノ島のお山を一気に駆け下りたクマさんは、片瀬江ノ島から小田急で藤沢へ、藤沢から新橋まで1時間東海道線に乗った。新橋から、猛暑の銀座を斜めに横切り、途中「松坂屋」でトイレを借りて、歌舞伎座横のナイルレストラン(詳細はブログ内検索で「ナイルレストラン」を検索してちょ)に入った。
インドビール
(東銀座ナイルレストラン、チェコ製のインドビール)

 辛いインドカレーで全身大汗をかいて、代々木上原に帰ったのはすでに19時近い。おお、今日は、何から何まで大成功。最後の〆のインドカレー作戦もよかった。「インドビール」のはずのビールは、ラベルをよく見るとチェコからインドへの輸入品。「スイカジュースを使用」の記述がある。え?スイカジュース? いや、諸君。マズそうだが、大いに爽やかな香りで、6月の猛暑を忘れさせてくれる爽快ビアであった。

1E(Cd) Jandó(p) Ligeti & Hungarius:MOZART/Complete Piano Concertos 5/11
2E(Cd) Jandó(p) Ligeti & Hungarius:MOZART/Complete Piano Concertos 5/11
3E(Cd) Jandó(p) Ligeti & Hungarius:MOZART/Complete Piano Concertos 4/11
4E(Cd) Jandó(p) Ligeti & Hungarius:MOZART/Complete Piano Concertos 4/11
5E(Cd) Jandó(p) Ligeti & Hungarius:MOZART/Complete Piano Concertos 4/11
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