2011年06月18日(土)

Mon 110613 ケルンFrühの一夜 タタール親父の激しい夕食 カリー・ブルスト購入

テーマ:ブログ
 さて、ドイツ滞在11日目、久しぶりにケルン滞在記に戻ろう。夕暮れ頃から、再び雨が激しくなった。ライトアップが始まったケルン大聖堂のそばには、雨を避けてアヤしいオジサンやオニーサンたちが集まっている。
 クマ蔵はその脇を抜けて、今日の第2の目的地、ビアホール「フリュー Früh」に向かった。雨のせいで外のテーブルは営業中止。午後7時、時間はまだ早いが、すでに店内の7割ぐらいのテーブルが埋まっている。
 The Catcher in the Rye の中で、主人公Holdenが
「雨の日に、雨の湿った匂いの中で博物館にいて、暖かくて、気持ちよくて、みんな雨に濡れてふるえているのに自分たちだけ暖かくヌクヌクしてるんだと感じるのが大好きだ」
と独白する場面があるが、この夜のFrühはまさにそういう感覚である。
 飲むのはケルシュ・ビア。Kölshとは、もちろんKölnの形容詞形であって、Kölsh Bier=ケルンのビール。東京で東京ビール、博多で博多ビール、札幌でサッポロビールというようなもので、余りの当たり前さ加減に、思わずアタマをガツンとやられたような衝撃が走らないこともない。
 そのケルシュ・ビアをたくさん金属のカゴにのっけて、むさ苦しいオジサンの店員たちが、むさ苦しい仏頂面で店内を売り歩く。200mlぐらいの細長い特徴的なグラスは、ドイツ人のデカイ手のひらにスッポリ隠れてしまいそうな小ささ。ウワバミでありクマでもある今井君としては、「こんなんじゃ、『一息で一気』にもならない」である。
雨のフリュー
(ケルン「フリュー」。雨が降り出した)

 店員がみんな何でこんなに仏頂面なのかよくわからない。しかし逆に、「むさ苦しいオジサンたちが無意味にニコニコしていたら嬉しいか」と言えば、もちろんそんなこともない。むしろ、その仏頂面こそが、Kölsh Bier(ドイツ語のスペルだとこうなる)に対する店員さんたちのホコリとプライド(まあおんなじであるが)を示していて、むしろたいへん頼もしい。
 ビア2杯飲んだところで、「お相席をお願いします」ということになって、ドイツ人の男たち3人が今井君とテーブルを分かち合うことになった。
 まさにドイツ独特、「お相席」を何とも思わない。むしろお相席であることを満面の笑みで受け入れる。「そのために大きなテーブルがあるんじゃないか」という、いかにも悠然とした態度でテーブルにつく。
 南欧やフランスだと、なかなかこういうことは起こらない。1つのテーブルにお相席という経験はまずしないし、ウェイターがものすごく気をつかって、お相席にならないように飛び回る。
 隣り合う客同士もチラチラ視線を飛ばし合って、お互い迷惑にならないようにするし、自分たちのテーブルのテリトリーに他者が入り込むことを嫌うのは、日本人の場合と同じである。
 ドイツ人は、その点ホントに鷹揚である。「お、いっしょになったな」「お、日本人か」という感じで、余裕タップリにニンマリ笑顔をつくってみせる。この夜のケルンFrühでは、60歳過ぎの太ったオヤジと、その息子でオヤジとソックリな35歳ぐらいの男、および息子の友人である。
ケルシュビール
(ケルシュ・ビア。今井君のワインと相席客のビアも見える)

 オヤジの太り具合は尋常ではない。体重100kgは優に越えている。背丈はさほど大柄ではないが、見事な太鼓腹を突き出して、全身巨大なサッカーボールのようである。席に着くやいなや破顔一笑、「どこから来たんだ?」「おお、日本か。日本人か」と話しかけてきた。
 日本人の場合、中高年になって太ると、その分みっともなく老けて見えるものであるが、このドイツ親父は、60歳過ぎて、際限なく太って、ますます元気一杯に見える。太鼓腹がマコトに頼もしい。ブヨブヨした感じはなくて、いかにも内側から充実した太り方である。
 席に着く前から、「何を注文するか」「今晩のディナーは何にするか」、3人の間ですっかり決まっていたらしくて、メニューもほとんど見ない。ウェイターも半分苦笑いで彼らに応じている。どうやら完全にこの店の常連なのである。
 息子の方が、ちょっと困った顔で「オレの親父なんだ」とアゴでしゃくってみせた。息子もそろそろ父親と同じ体型になりかけていて「小型親父」の風情。言われなくても親子であることは明白だ。
店内
(フリュー店内)

 パパはほとんどドイツ語だが、息子はほぼ完璧な英語を話す。息子の友人も英語である。どうやらドイツ人の場合、今の60歳ぐらいが分岐点で、それ以上の年齢の人はドイツ語。その息子や娘からはほぼ自由に英語を使う。「日本人も、ドイツより30年から40年遅れて、やがてこんなふうになるのかねえ」と考えると、寂しい限りである。
 クマ君は、ドイツ語やイタリア語や日本語が大好き。フランス語やスペイン語やポルトガル語も大好き。「何でもかんでも英語」だなんて、生物多様性の失われた世界とおんなじ。いろんな鳥がいるから楽しいので、「鳥がみんなスズメ」ということになったら、味もソッケもない。そんなの大キライ、英語帝国主義は大反対だ。
 パパのほうは、早速ウェイターにタルタルを注文して、日本のクマさんの方に満面の笑みを向けてみせた。この店のタルタルは、大量の生肉を包丁で叩いて、コマギレのタマネギと混ぜて作った料理。要するに焼いていないハンバーグである。
 肉だけで優に300gはあるだろうか。日本のユッケ1人前の5倍ぐらいはある。それに得体の知れないたくさんの香辛料やビネガーを混ぜ、生肉であることを辛うじて忘れ、ほとんど噛むこともせず飲み込んでしまう。甚だ豪快なゲルマン料理である。
 パパは食べながら「タタール!!」「タタール!!」と連呼し、連呼してはこちらをチラリと見て笑う。自分がタルタルを息もつかずに一気に平らげるのが、たいへんな自慢のようである。
「タタール!! しかし、これは前菜に過ぎない。タタール!! しかし、本番はこの後だ」
そう叫んで、タルタルをフォークとナイフで固め、そのデッカい生肉のカタマリを次々に飲み込んでいく。飲み込んで、またニッコリして、「タタール!!」と叫ぶ。生肉を威勢よく食べることこそ、若さと男らしさの象徴。ゲルマン民族の誇り、どうもそういう考えらしい。
雨の大聖堂
(雨のケルン大聖堂)

 息子の方ははるかに理性的であって、英語は話せるが、ちっとも面白くない。激しいタタールも食べない。友人と一緒にフライドポテトをつまんで、それが前菜のようである。時々パパのほうに目をやり、その視線をクマ蔵のほうに向け、「困った親父でスミマセンね」という表情をしてみせる。
 しかしクマ蔵としては、圧倒的にパパが好きなのだ。上手に英語を話して、冷静で、いつでも頭の中はカロリー計算とコレステロール値計算でいっぱい。そんな冷たい現代ドイツ人より、タルタルに溺れてお腹がパンパン、全身巨大サッカーボールと化した60歳パパ♨ガンガン・中世ドイツ人の方がはるかに魅力的だ。
 医師の健康診断にガンジガラメになって、食べるものも食べられず、飲むものも飲めず、英語帝国主義に巻き込まれて母国語も話さなくなった現代ドイツ人は可哀想である。近い将来、日本人もみんなこんなふうになっちゃうのが、心の底から心配だ。
 あっという間に、パパのタルタルはすべて胃袋に消えた。テーブル上に残ったのは、「どうだ、あっという間だ」「日本人なんかにマネはできないだろう」という中世ドイツ人の勝ち誇った笑顔だけである。おお、爽快だ。圧倒的な太鼓腹だ。
大聖堂ライトアップ
(ライトアップされたケルン大聖堂。ライトアップは、この程度で十分だ)

 こうして「前菜」は終了。やがて、いよいよパパの夕食本番=メトメトした重たい料理が運ばれてきた。こうなるともうパパはメシに夢中。ドイツ人の誇りで太鼓腹はますます膨張し、
「コレステロールがどうの、血圧がどうの。血糖値がどうの、そんなことばかりツベコベ言ってるから、人生がちっとも面白くないんだよ」
「食って、食って、食いまくれ。飲んで、飲んで、飲みまくれ。人生の楽しみは、要するにそれだ」
こういう乱暴きわまりない発言を、全身でしてみせるのであった。
 悔しいので、今井君はいよいよ黙りこくって酒に専念。ドイツオヤジも決して追いつけないであろうスピードでワイン1本カラッポにして、勘定を済ませてケルンの町に出た。冷たい雨はますます激しくなり、ライトアップされた大聖堂前に、観光客の姿はない。
ケルン駅
(ケルン中央駅、22時)

 ホテルに戻る直前、ふとドイツ親父の勢いが懐かしくなった。「オレも、もっと食べなきゃダメだ」「もっと食べなきゃ、男じゃない」。泣きたいような気持ちでそう考えた。
 ちょうどその時、目の前に「カリー・ブルスト」の屋台。インド系の移民がやっているカレーソーセージの店である。腹はいっぱいだったが、思い切って1パック購入。この行動のおかげで、ホテルの部屋は朝まで激しいカレー臭に満たされたのであるが、まあ、そのぐらい、いいじゃないか。

1E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 10/18
2E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 12/18
3E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 13/18
4E(Cd) K.Simizu:LISZT/SONATA IN B MINOR など
5E(Cd) 寺井尚子:THINKING OF YOU
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