Sat 110611 英語イジメ的な出題が国立大にも目立つ 気分転換の鎌倉 武蔵境で勇気 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 110611 英語イジメ的な出題が国立大にも目立つ 気分転換の鎌倉 武蔵境で勇気

 6月15日、昼過ぎからちょっと鎌倉に出かけてきた。前夜あまりに疲労していたので、気分転換が必要と判断したのである。「晩酌の最中にテーブルに突っ伏してコックリコックリ」では、クマさんとしてもさすがに疲れ過ぎだ。鎌倉なら、代々木上原から小田急線で1時間ちょっとだから、気分転換としても手頃。あじさいと海を見れば、疲労も回復するだろう。
鎌倉あじさい1
(鎌倉のあじさい 1)

 6月14日午後から吉祥寺スタジオで収録したのは、名古屋大学2011年の過去問解説である。いやはや、難しかった。解説に四苦八苦した。何で突然こんなに難しい出題に変更したんだ? 昨年までの名古屋大学は、受験生のレベルを熟知した最高の良問を出題していたのに、突如として豹変、いきなり難易度レベルを急上昇させてきたのである。
 もちろん今井君は予備校講師として既に超ベテランであるから、名古屋大学であろうと早稲田慶応であろうと東大であろうと、「自分で問題を解く」ということなら、別に困難を感じることはない。しかし、これほどの難問を生徒が100%理解できるように解説するのは、ベテランでも難しい。
 しかも一切の延長なしに、キチンと予定の時間の中で解説を終わらせなければならない。さすがに早稲田慶応の超長文なら全訳はしないが、国公立大学の解説には、生徒の理解のためにどうしても全文訳をつけてあげたい。
 正確な構文解説の上に、キチンと全文訳をして、問題の解き方も説明して、80%とか90%とかでは満足せず、絶対に100%の生徒が理解させたい。そういうレベルを達成して、しかも長文読解問題1問に60分~70分しか許されない。
鎌倉あじさい2
(鎌倉のあじさい 2)

 さらに、最終目標は「自力で出来るようにさせる」である。「先生の解説を聞いていれば何とか解るが、いざ自分でやってみると、自力では解くことが出来ない」と生徒たちが嘆く程度の指導では、チャンとした指導ではない。もしその程度だとすれば、10年前の代ゼミ時代の今井から全く進歩していないことになる。
 10年前の「今井のパラグラフリーディング」に欠点があったとすれば、間違いなくそこである。今井自身はパラグラフリーディングが出来るし、スピーディーに読めるし、その読み方で全部の問題が解ける。しかし、生徒たちが全員それで解けるようにしてあげることが出来なかった。
 今井自身は「これでいいじゃないか」と悦に入っていたが、「自分では出来ない」と嘆く生徒たちの疑問や悩みや批判を「それはキミたちの努力が足りないせいだ」と突き放していた部分があった。あれから10年以上経過して謙虚に反省してみると、出来るようにさせてあげられなかった自分の力不足が、やはり恥ずかしい。
腰越のねこ
(江の電「腰越」駅前の眠りネコどん)

 さて、名古屋大学2011年であるが、興味のある方は赤本か予備校のHPで参照していただきたい。2番の長文読解と4番の英作文問題は、受験生のレベルを考慮していない悪問と今井君は判断する。2番は入試会場で「訂正」が3カ所も発生するなど、杜撰さも目立つ。
 長文読解1番「ネアンデルタールの優しさとクロマニョンによる駆逐」は、テーマとして学部入試の定番だし、単語や構文のレベルも学部入試に相応しいもので、昨年までのこの大学の超良問を踏襲したもの。予備校講師としても、これなら生徒たちに安心して名古屋大学受験を勧められる。
海の家
(江ノ島東浜付近で。海の家の建設は着々と進行中だった)

 しかし、2番の「ラクダが家畜化されていくプロセス」の出題は、ボキャブラリーのレベルから見ても、内容面から見ても、何でこんな無理な出題にあえて踏み切ったのか、疑問をいだかざるを得ない。一般の英和辞書に記載のない表現、医学事典や百科事典にしか載っていない語彙が続出して、受験生の動揺は大きかったと思う。
 中でも小問6「なぜフタコブラクダは今もなお飼育が続けられているのか」は、本文の中に「そのものズバリ」の記述がない。各予備校の解答速報も相当な無理をして解答を導きだしている。
 無理せず本文の記述からだけの解答にしたのは駿台のみ。しかしそれでは「この程度の解答で大丈夫?」と心配になるような、幼稚な生煮えの解答にしかならない。この問題については、大学側から模範解答だけでなく
「どんな出題意図だったのか」
「今後も『そのものズバリ』の記述が本文中にない問題を出題しつづけるのか」
について、発表していただくのが望ましいと考える。
カールおじさん
(カールおじさん。吉野先生によれば、今井君はカールおじさんなのである)

 4番の英作文については、明らかに背伸びし過ぎ。福岡・西日本新聞の記事を引用して4カ所にアンダーラインを引き、「英訳せよ」という伝統的な出題であるが、英語を勉強して6年しか経過していない受験生にこの部分の和訳を求めるのは、無理があると言わざるを得ない。
 詳細を説明していると長くなるから、関心のある方はこれも各予備校HPなり赤本なりで確認していただきたい。今井君がショックなのは、昨年まであれほど受験生の実態を熟知した良問ばかりを出題していた名古屋大学が、突如として実力無視&実態無視の超・背伸び出題に踏み切ったことである。
 入試当日の問題文訂正が数カ所にのぼったことから考えても、入試問題についての学部内チェックが機能していなかったのではないかと思われる。入試当日にメモ書きが回って、試験監督者が各教室で黒板に「訂正」を板書する。そんなのは、もしも予備校の模試だったら、責任者のクビがとびかねない大失態である。
 同じように、問題文の選び方(最近はどの大学もネット上から気軽に引用して出題するようであるが)、設問の作成、採点基準の立て方などにも疑問を感じる。模範解答例を十数名の教授でチェックしてから出題に踏み切ったのかどうか。2~3人の密室作業で見切り発車したのではないのか。
コスモス
(鎌倉では、もうコスモスが咲き始めていた)

 英作文問題で「警察庁によれば」「認知症と診断された高齢者」の文字を見た受験生の心の動揺を思うと、ベテラン予備校講師クマどんは可哀想でならない。
「ごく普通の公立高校で3年間マジメに予習復習を続けてきた受験生が、試験時間を目一杯かけて真剣に取り組めば、何とか8割正解できる」
これこそ入試問題作成に携わる大学教員のガイドラインだと、クマ蔵は愚考する。
「ほーら、難しいだろ」
「ほーら、読めないだろ。ほーら、何言ってるか解らないだろ」
「ほーら、解けないだろ。ほーら、時間内に終わらないだろ」
「ほーら、だから僕らは難関大学だ。ほーら、スゴいだろ」
そんなのは、英語イジメだ。そんな幼稚なイジメっ子に、真剣な受験生を愚弄するような入試問題は作ってほしくない。
 「英語が恐ろしく難しいから一流大学」などという軽薄でバカバカしい話は、20世紀のラスト15年に慶応と上智がやって、もう終わりになったバブル話だ。しっかり重厚なホンモノの教育を続けてきた国立大学が、今になって浮き足立ってその方向に舵を切るのは、明らかに間違いだと信じる。
武蔵境2
(武蔵境での講演会 1)

 14日夜、武蔵境での講演会で少し今井君が疲労していたのは、以上のような解説授業で4時間を費やした直後だったからである。出席者70名弱。19時開始、21時終了。荻窪や武蔵小金井や国立など、近隣の校舎からも生徒が駆けつけてくれた。
 ICU高校とか、御三家高校とか、国立高校とか、英語の得意な生徒の多い優秀な地域である。授業にはもう少し難しい話を含めた方がよかったかも知れないが、90分爆笑の耐えない講演会で、疲れきったクマどんはそれこそ「勇気もらった」のであった。
武蔵境3
(武蔵境での講演会 2)


1E(Cd) Münchinger:BACH/MUSICAL OFFERING
2E(Cd) Anita Baker:RAPTURE
3E(Cd) K.Simizu:LISZT/SONATA IN B MINOR など
4E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 5/18
5E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 6/18
total m55 y520 d6485