Mon 110425 浅草大行進は続く 蕎麦でシメるか ジーチャン2名の大ナンパ作戦 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 110425 浅草大行進は続く 蕎麦でシメるか ジーチャン2名の大ナンパ作戦

 浅草のドジョウ屋に入ったら(スミマセン、昨日の続きです。まだ浅草で酔っぱらっています)、もちろんドジョウ鍋で昼飯をかき込む以外、他に何もすることはない。
 もちろん、ついでにお酒をちょっと注文してもいい。「してもいい」などとモッタイぶっているのは、まだまだ中途半端なのであって、お店としてもお酒の注文を今か今かと待ちわびている。
 それを知っているクセに、注文するような、でも注文しないような、そんな思わせぶりなシカツメらしい顔をして、マジメぶった知らんぷりを続けているのは、関西では「イケズ」と叱られる。
 もっとも、「イケズ」と言われて叱られたと落胆するのは、オトナの男女の感情の機微を知らないヤカラなので、「イケズ」と言わせてヤニ下がるのを、イキと呼ぶ人たちもいる。「悪いヒト!!」と呼ばれてニヤニヤするのも同類の話であるが、残念ながら今井君は少年のように清潔&清廉潔白なので、その辺の妙味を知らずに中年になってしまった。
招き猫とダイコン
(浅草・観音通り、招き猫とダイコンさん)

 ただし、まだ真っ昼間だから、いきなり日本酒を注文するのはお行儀が悪い。こんな中年になって、他人にお行儀を云々されるのはもってのほかである。そこで、お行儀の悪さを指摘されないように、チャンと順番を踏むことにする。
 つまり、まず「ドジョウ鍋と、生ビールください」とゴマかしておいて、ドジョウ鍋が来た頃に「あと、南部美人も1合追加♨」という陽動作戦だ。
 「南部美人」は岩手のお酒である。今井君はかれこれ10年以上もBuy Tohokuに励んでいる。南部美人、浦霞、出羽桜、あさ開、みんな東北経済活性化のキーワードである。ほら見ろ、チャンと順番を守れば「あらら、お客さん、真っ昼間から日本酒ですか」と、クマの非常識を驚きあきれられることはない。
ちょっとバー
(浅草、ちょっとバー)

 ただし、こんなに歯ごたえ十分なドジョウ/噛み応えのあるドジョウ(=骨の硬いドジョウ)を10匹も15匹も口に入れて、「日本酒たった1合でヤメろと言うんですか?」という心の反論は、当然の成り行きである。
 あっという間に「南部美人、もう1合ください」の声が続き、店のヒトも愛想よくそれに応じる。「さらに、もう1合」がその10分後に続き、店のヒトはイヤが上にも愛想よくなっていく。ふと気がつくと、いったい今日は何のために浅草までやってきたんだか、ほとんど失念しそうな勢いである。
 それでは余りにダラしないので、やっと重い腰を上げて地下鉄構内の床屋に入ったのが14時。仕事は早いが丁寧な床屋だから、すこぶるいい気持ちになって床屋を出たのが15時半だった。
 諸君、いまや、酒を嗜むにはうってつけの頃合いである。これがもしスペインなら、ランチもタケナワの頃。みんなワイン1本空けて、盛り上がり放題に盛り上がっている時間帯である。
食べかけ再び
(さっき食べたドジョウ鍋。ただし食べかけである)

「ならば、蕎麦屋で1杯やって帰るのが、マドリード紀行執筆中の日本サトイモのツトメではないか」
そんなふうに考えるのに、何の不思議もない。20世紀中期の小説風に言えば
「僕の中のイケナイ僕が、僕にそう囁いたのである」
「僕は、イケナイ僕と懸命に戦った」
「しかし僕は弱い。やがてイケナイ僕に、僕自身が屈するのを感じていた」
というところである。
 おお、メンドクセ。昔の僕たちは、牛乳1本飲むにもイケナイ僕と戦い、彼女に電話するのにもイケナイ僕と戦い、メッタヤタラに打ちのめされ、メッタヤタラに絶望して天を仰ぎ、クチビルをかみ過ぎて、クチビルは血まみれorタラコもどきになった。
 今どき漢字の「僕」が主人公の小説を読んだり書いたりして、「読むヒトも書くヒトも激しい時代錯誤を感じないか」と今井君は心配になるが、本屋の小説コーナーでペラペラ立ち読みする限りでは、なかなかそうでもないらしい。21世紀以降に書かれた小説の中でも、僕は悩み、僕は清純な少女に恋をし、僕は地平線めざして駆け抜け、僕は目を血走らせて恋人の裏切りを難じている。
 偶然出会った少女がどのぐらい純粋なのかわからないが、今もなお小説家たちは菅直人どんも顔負けの「まさに、いろいろと、全力を尽くして」その少女の純粋を懸命に説明する。読者もそういう小説を読んで、感動とか感激とか、その種のことを、そこいら中の壁だか板だかに書き込んで満足する。とかく昔からブンガクの世界は、たいへんメンドクサイものなのである。
十和田
(浅草・観音通り、ドジョウ屋の隣の「十和田」)

 さて床屋から出た後は、さっきのドジョウ屋の隣の蕎麦屋「十和田」に入ってみた。「十和田」と読んで字のごとく、青森県のヒトが経営している東北の店である。ツマミも酒もみんな東北のものなので、ここでたくさん飲食するのも、また熱烈なBuy Tohokuである。
 大いに張り切って、今度は「浦霞・禅」を注文。宮城の酒である。これを2合だか3合だか4合だか5合だか、とにかく遠慮なくグビグビやりながら、タラの芽の天ぷらに鴨肉のタタキを食した。考えてみれば、クマさんのお腹の中は、ドジョウ&鴨&タラの芽、いろんな食品を咀嚼してから揚げたカキアゲみたいな、たいへん上品な有様になった。
十和田のたぬき
(浅草・十和田で発見したタヌキどんたち)

 周囲のお客もたいへん上品である。70歳過ぎと思われるジーチャン2人組が、酔って気持ちよさそうにヤンチャをやっている。どういうヤンチャかと言うに、隣のテーブルの20歳+αの女子2名を勇敢にも激しくナンパしているのである。
 女子2名は、ジーチャン連のナンパを心ゆくまで楽しんで、まあ上機嫌に応じているが、要所要所で恐るべきキツイ罵倒を浴びせる。どんな罵倒かと言えば、PCが良識的に変換を拒む、ある動詞の命令形を連発するのである。もっとも、それでジーチャン連がヘコタレるかと見れば、むしろ罵倒を喜んで、楽しさに頬を真っ赤に染めている。
 あらま、世も末だ。「悪いヒト!!」「悪いオンナ!!」の応酬が、こんなところでも進行中なのだ。呆れて時計を見れば、すでに16時半。スペイン人だって、そろそろランチを切り上げて、店を出る時間だ。自称・今井フェルナンデス宏だって、例外ではない。これ以上粘って、店のヒトに同じ動詞の命令形を投げつけられないうち、さっさと浅草を退散するに越したことはない。

1E(Cd) Kirk Whalum:IN THIS LIFE
2E(Cd) Kirk Whalum:CACHÉ
3E(Cd) 寺井尚子:THINKING OF YOU
4E(Cd) Ono Risa:BOSSA CARIOCA
5E(Cd) 村治佳織・山下一史&新日本フィル:アランフェス交響曲
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