Wed 110420 新幹線が仙台へ コルドバ メスキータを思うとイスラム圏に行きたくなる | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 110420 新幹線が仙台へ コルドバ メスキータを思うとイスラム圏に行きたくなる

 本日4月25日、ついに東北新幹線の東京-仙台間が復旧した。先月24日に被災2週間後の仙台を訪れたときには、途中の高架橋で立ち往生している新幹線車両を目撃したものだった。あれから1ヶ月、事態は急速に好転していて、「さすが日本」であり「さすが国鉄」である。
 今井君は4月29日30日と、新幹線で仙台入りしてくる予定。先月はまだ「山形空港からタクシーで」という力ワザが必要だったことを考えると、ほとんど「隔世の感」という言葉が浮かぶほどだ。余震の連続で新幹線の復旧が遅れ、一時は仙台空港から飛行機で入ることも覚悟していたから、新幹線復旧はホントに喜ばしい出来事である。
 もっとも、こういう力強い回復ぶりをみると、「ならば、新幹線のない地域はどうすればいいんだ?」の思いも湧き上がる。東北4県のローカル線沿線、例えば気仙沼や大船渡、釜石や宮古や久慈は、せっかく新幹線が開通しても、それへのアクセスは簡単ではない。新幹線を降りてくる乗客へのインタビューが晴れやかであればあるほど、新幹線網から外された地域の苦しさを痛感してしまう。
 それは、東北4県に限ったことではない。大評判らしい九州新幹線のCM「九州は1つ」だって、「では、ホントに1つなのか?」と言えば、大分と宮崎は(実は長崎も)その「1つ」から無条件で外されてしまっている。1つにまとまったように見えて、実際にはその1つの輪からコッソリ除外されている人々の存在と苦しさを、もし我々が「1つになろう、ニッポン」と叫ぶなら、忘れてはならない。
 大震災がきて、すっかり忘れてしまったのであるが、あの震災の直前まで、我々は宮崎・新燃岳の火山灰の問題で、テレビにかじりついていたのである。「東北や山陰の大雪は春がくれば消えるけれど、この火山灰は消えてくれない」と頭を抱える人々のために、街角で義援金を集めるヒトがたくさんいたはずである。
 宮崎も都城も、「九州は1つ」のはずの九州新幹線から完全に除外され、「1つだ♡1つだ」という喜びの輪の外側で、火山灰と耕作地荒廃に頭を抱え続けなければならない。口蹄疫も鳥インフルエンザもみんな忘れて、そう簡単に1つになんかなれるはずがない。
 今井君はパーだからか、「1つになろう」「1つになろう」という掛け声がどうも好きになれない。幸福の必須条件は多様性の確保である。「1つになろう」という掛け声の輪の中に入れなかったり、入れてもらえなかったり、入る意志がなかったり、そういうヒトの存在を認識しなかったり否定したりするのは、どうも若干ファッショのニオイがしないこともない。
メスキータ1
(スペイン、コルドバのメスキータ 1)

 さて、新幹線が便利であるのは、スペインでも同じことである。マドリードからコルドバやセビージャまで日帰り旅行が可能なのは、スペイン版新幹線AVEがあるおかげ。昔のスペインのイメージからすれば、AVEの快適さは信じがたいほどである。マドリードのアトーチャ駅から、コルドバまで2時間。東京から名古屋に日帰り出張するのと同じことである。
 しかも、「1時間に2本」という運転間隔が嬉しい。フランスのTGVでもドイツのICEでも、運転間隔の長さが問題なので、日本の新幹線みたいに「とりあえずホームに出て、最初に来たのに乗っていく」みたいな暢気なことはまず出来ない。5分か10分待てば、のぞみちゃんが「乗らない?」と誘いにきてくれるなどということは、ヨーロッパで期待してはならない。AVE、1時間に2本。それだけで十分ホッとする。
メスキータ2
(スペイン、コルドバのメスキータ 2)

 ま、日本に明らかに負けているのは、座席が絶対に回転しないこと。後ろ向きの座席に座れば、2時間でも3時間でも、意地でも後ろ向きのまま目的地に運ばれる。座席も固い。ガチンガチンに固いシートは、2時間で十分腰が痛くなる。
 狭い車内で「ケータイ使い放題」「iPodの音量も上げ放題」は、ヨーロッパ共通の問題。おお、ケータイの会話のやかましさは、言語道断である。あっちでもこっちでも、まるでわざとやっているように、2時間延々とケータイをご使用になる。しかも欧米人独特の深い腹式呼吸で、豊かなバリトンにソプラノで語りまくり、語り尽くす。
 そこへiPodのシャカシャカが加わる。シャカシャカとバリトン&ソプラノの大合奏は、静かで穏やかな車内環境に慣れた日本人には、なかなか堪え難いものがある。
 車内に回ってくる車掌さんも、それを咎めたりすることは一切ない。それどころか、おそらく日本の新幹線に倣って導入したらしいアテンダントがニコニコしながらイヤフォンを配って歩く。無料配布である。
 しかも、無料で配布されるこのイヤフォンが、イヤが上にもシャカシャカ洪水を加速する。隣のオジサンや向こうのオバサンが、配布されたイヤフォンを嬉しそうに耳に当てる様子を見ながら、おとなしいクマさんは心の中で絶望の叫びをあげることになる。
メスキータ3
(スペイン、コルドバのメスキータ 3)

 アトーチャを9時頃のAVEで出て、コルドバ到着11時。AVEがなければ在来線かバスで5時間近くかかる道のりだから、今日の日帰りはあくまで新幹線あればこそ。まあ、うるさい車内に辟易しながらも、一応はありがたや&ありがたやである。
 コルドバCordobaは冒頭のCoにアクセントがあって、最後のbaに向かってデクレシェンドで発音する。日本人の常識だと、コが若干弱く、ルドバにはほぼ同じ強さで右肩上がりに発音するような気がするのだが、それは全く逆である。コだけ強くて、ルドバは母音ヌキでrdb程度の発音でいいわけだ。
メスキータ4
(スペイン、コルドバのメスキータ 4)

 まあそういう面倒くさいことをいろいろ考えながら、とにかくコルドバに着いたら、MUSTなのはメスキータ。建設開始が8世紀後半の後ウマイヤ朝だから、もちろんもともとはイスラム教のモスクである。大理石と赤煉瓦の美しいアーチは、完全にモスクのもので、おお、こりゃ2重にも3重にもエキゾティックだ。
 コルドバ自体、後ウマイヤ朝の首都である。東ローマのコンスタンチノープルに負けないほど繁栄した町だったのだから、こういうのが残っているのも当たり前。13世紀以降、レコンキスタのキリスト教徒がこれを奪ってキリスト教会に改修、現在に至る。
 メスキータから出てくる頃には、今井君はイスラム圏に旅してみたくてたまらなくなっていた。次は、モロッコ? チュニジア? シリア? 2011年のジャスミン革命以降、治安の面でちょっと尻込みしなければならなくなったが、メスキータを思い出すたびに「次こそは」の気持ちは高まらざるを得ない。

1E(Cd) Karajan&Berlin:HOLST/THE PLANETS
2E(Rc) Amadeus String Quartet:SCHUBERT/DEATH AND THE MAIDEN
3E(Rc) Solti & Chicago:BRUCKNER/SYMPHONY No.6
4E(Rc) Muti & Philadelphia:PROKOFIEV/ROMEO AND JULIET
5E(Cd) Midori & Mcdonald:ELGAR & FRANCK VIOLIN SONATAS
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