Sun 110417 風車の町コンスエグラへ バスターミナルはmoreコワい 風車はいずこ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 110417 風車の町コンスエグラへ バスターミナルはmoreコワい 風車はいずこ

 マドリード滞在6日目は、バスターミナルから一般乗合バスに乗って、風車の街コンスエグラを目指すことにした。
 ガイドブックにデカデカと掲載されるような大きな街ではないが、コラムや小さな囲み記事の中で、「もし余裕と勇気があったら行ってみな」という感じで紹介されていることがある。最近は日本人ツアーでも「大きな街は行き飽きた」というベテランなオカタのために、ちょっと立ち寄ったりすることもあるらしい。
 今井君は、ホンモノのクマさんたちに負けないぐらい短足で、クマさんに負けないぐらいの余裕とヒマと勇気を抱えて持て余し気味である。せっかくラマンチャにいるんだ。ドンキホーテとサンチョパンサが見たのと同じ、赤土の丘にたくさんの風車が立ち並んであたりを睥睨している様子を見てこようと思う。
 コンスエグラ探訪は、日本を出発する段階では予定していなかった。繰り返しになるが、とにかく首絞め強盗とニセ警官がコワくてコワくて、オッカナビックリになるあまり、もともと短い足が、もっと短く縮み上がるほどだったのである。
 鉄道も通らない田舎町に乗合バスで出かけるなんて、「おおダンナ、滅相もござりませぬ。お許しくださりませ」と畳にヒタイをすりつけて拝みたいほどだ。そんな誰もいない寂しい場所で、山賊にでも遭って身ぐるみ剥がれたら、諸君、どうしてくれるんだ。まさかクマさんと一緒に山桃をあさって、ますます短足になって日本に帰るわけにも行かないじゃないか。
こんすえぐら1
(コンスエグラの風車の群れ)

 しかし、さすがにもう滞在6日目である。「危険なので行ってはいけません」「昼間でも近寄らない方が無難です」という治安情報が、どうもただの脅かしだったらしいことを実感しつつあった。「山賊、ナニするものぞ」「風車のお化けでも何でも、襲ってくるがいいわさ」「かかってこい、サンチョ」という、甚だしくドンキホーテ的勇猛果敢の鎧が、クマどんの皮膚に自然発生していたのである。
 ただし、空港より鉄道駅がワンランク治安が悪いのと同じように、駅よりバスターミナルの治安がワンランクもツーランクも悪いのは、アメリカでもヨーロッパでも同じことである。ただでさえ「ちょいコワ」の地下鉄を、南バスターミナルのあるメンデス・アルバロの駅で降りた時から、すでに雰囲気の悪いこと夥しい。
 そういうのも、実はみんなこっちの感じ方の問題なのだが、ヒトビトの表情が暗く、歩き方がセカセカして、いかにも「日本人が珍しい」という暗い目でガンミしてくる。ガンミも、明るいガンミなら明るく対応しようもあるが、目が合うとぱっと目を伏せ、こちらが視線をそらしたスキに、再び暗い目でガンミが始まる。バスターミナルに入った瞬間から、360°暗いガンミに囲まれてしまった。
 確かに、イベリア半島にはアジア人の姿が少ない。ポルトガルではほとんどアジア人を見かけないが、ヨーロッパならどこでも溢れかえっている中国系のヒトも、イベリア半島では余り見かけない。アフリカ系のヒトもやはり珍しいようである。長く続く財政危機で、移民として入り込むことにあまり魅力がないのかもしれない。
こんすえぐら2
(コンスエグラの風車と町)

 バスターミナルで、初めてASEOSという看板に遭遇した。ASEOSとはトイレのことであるが、空港でも駅でもレストランでも、トイレの看板はSERVICIOである。今井君の乏しい知識ではASEOSとSERVICIOのニュアンスはよくわからないが、「セルヴィシオ」に比べて「アセオス」の響きは、何だかイヤな感じである。だって諸君、アセオスであるよ、何だか、男の汗臭さを感じないかね。汗オス、汗牡、何だかとってもイヤな感じじゃないかね。
 「旅行者だから英語で話してあげよう」という配慮は、ここでは期待しない方がいい。全く容赦のないスペイン語(またはポルトガル語)が、雨アラレと頭上から降り注ぐ。今井君なんかはむしろそれが嬉しいので、「ハイハイ、日本人は英語でチュネ」という甘やかされ方は、一人前のオトナとして扱ってくれていないような、バカにされているような感覚なのだ。
 しかし、バスターミナルとなると、もともと容赦のないスペイン語に、もう1段踏み段を上がったぐらい、ますます容赦がなくなる。「コンスエグラに行きたいんだが」「時刻表ください」「次のバスは何時にどこから出るか」、その程度のスペイン語なら何とか言えるにしても、問題はそれに対する向こうの反応が「一切容赦しないと決意した猛スピードのスペイン語だ」ということである。
こんすえぐら3
(丘の上から見たコンスエグラの町)

 途中の高速道路で長い事故渋滞があって、バスの到着は遅れた。確かにバスの車窓からクルマが1台ペシャンコになって転がっているのを間近に見たから、このぐらいの渋滞は当たり前である。それでも運転手さんにいろいろ親切にしてもらって、コンスエグラまで約2時間、暢気なバス旅であった。
 もともと15人ぐらいしかいなかった乗客は、高速を出て田舎道に入ったところでほとんど降りてしまって、コンスエグラで降りたヒトは4~5人。店も何も見当たらない停留所で、強い風が赤土のホコリを高く巻き上げているだけである。
 そもそも、町と呼んでいいほどの町ではなくて、広場の周囲に店が5~6軒並んでいるぐらい。飲食店、電気屋、日用品店、居酒屋、花屋、そんなところである。
 まだ午前中だが、ヒマそうなオジサンたちが、珍しいアジア人をガンミしながらコーヒーだか何だかをマズそうにすすっている。ババサマたちも、買い物なんだか集会なんだか、とにかく寄り集まって楽しいおしゃべりに熱が入る。
こんすえぐら4
(町から風車の丘を見上げる)

 風車ははるか向こうの丘の上に5つか6つ並んで立っているのが見えるが、さてどうやってたどり着けばいいものか。普通の観光地なら「みんなにくっついていけば何とかなる」という作戦をとれば、ホントにいくらでも何とかなるが、コンスエグラでは、くっついていくべき「みんな」という存在が皆無なのだ。
 さて、困った。クマ蔵は、困り果てて、またまた足が縮まり始めた。遠くの広場では、スペインオジサマ&スペインババサマたちが、いかにも怪しいものを監視するように、「こんな田舎町に闖入してきた怪しいアジアのヒョーロクダマ」ないし「すっとこどっこい」ないし「トーヘンボク」を目で追っている。
 風車は見えているが、道は見つからない。近くでイヌが盛んに吠え、人影のない侘しい教会の鐘が、侘しく鳴っている。うにゃにゃ、はたしてこのクマさんは、風車に無事たどり着けるのだろうか、というところで、明日に続く。

1E(Cd) Argerich:SCHUMANN/KINDERSZENEN
2E(Cd) Wand:SCHUBERT/SYMPHONY No.8 & N0.9 1/2
3E(Cd) Wand:SCHUBERT/SYMPHONY No.8 & N0.9 2/2
4E(Cd) Wand:SCHUBERT/SYMPHONY No.8 & N0.9 1/2
total m74 y268 d6233