Fri 110415 クマって、ホントに足が短いねぇ マドリードは豊かで安全な都市である | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 110415 クマって、ホントに足が短いねぇ マドリードは豊かで安全な都市である

 マドリードの象徴はクマだから、祭りの行列が向かったソル広場にも「クマと山桃」の銅像が建っている。おお、仲間だ仲間だ。可愛いねえ。しかしそれにしても、クマってつくづく足が短いねえ。写真を撮っているうちに、後ろ姿のクマさんがあんまり足が短いので、何だか不憫になってきた。というか、こりゃ可愛いや。
クマと山桃1
(プエルタ・デル・ソルの「クマと山桃」。短足が可愛い)

 この辺りもガイドブックによれば治安のあまり良くない地域である。ガイドブックを思い切り信じきってしまうタイプのヒトなら、マドリードの治安について不安をいだくのはむしろ当たり前。しかし実際のマドリードは、そういう先入観とは全く別物である。
 昨年秋、オリンピック開催地を決定する投票で、リオデジャネイロに最後に敗れはしたものの、マドリードは本命だったはずのシカゴや東京には快勝。「スペイン=フラメンコと闘牛」という日本人のイメージから考えて、あの健闘はたいへん意外だったのであるが、その意外さも、マドリードについての著しい誤解が原因である。
クマと山桃2
(後ろから見た「クマと山桃」。ここまで短足だと、爽快ですな)

 都心のメインストリートは、多くが広々とした片側4車線。真ん中には公園として使えるほどの歩行者専用の道が並木の下に悠々と続く。合計8車線を走るクルマはいかにもゆったりとしていて、東京の首都高速の狭苦しく暑苦しい圧迫感に慣れた目で見ると、清々しい爽快感でいっぱいである。もちろん、新興国のようなせわしない「クラクション鳴らしまくり」も全く見られない。
4車線と4車線
(4車線と4車線に挟まれた歩行者専用の並木道)

 イタリアやフランスを歩き慣れたヒトなら「歩行者の信号無視は当たり前」と思うだろうが、マドリードのヒトはみんな赤信号をしっかり守る。うっかり「クルマが来ないからいいだろう」と思って赤信号無視をやると、ヒトビトの冷ややかな視線を浴びることになる。
 ただし「冷ややかな視線」といっても、ホントに心から冷ややかなのではなくて「何だ、ダラシのないヤツだ」「あらあら、そんなに慌てちゃって、お行儀が悪いわね」「信号ぐらい、チャンと守る余裕を持ちたまえ」「慌てなくてもいいのよ」「急いだって、どうせ一緒よ」という、たいへん優しい、余裕の冷ややかさなのだ。
中央郵便局
(マドリード中央郵便局前で)

 諸君、忘れてはいけない。この国は、つい500年前まで、世界で一番豊かな国だったのだ。「40年前に世界で2位になりました」の日本や、「2011年、ついに世界で2位になりました」という中国とは、豊かさの年期が違う。
 英米人の作る映画を見ていると、スペインの豊かさに対するコンプレックスを感じることがある。ちょうど、東京人が京都文化に対して感じる、抜きがたいコンプレックスと同じ構図なのかもしれない。
 最近なら「ELIZABETH THE GOLDEN AGE」がその例である。冒頭の「当時、世界で最も強大な国は、スペインであった」の一言には、「驚いたことに」「信じられないかもしれないが」というニュアンスさえ感じられるが、映画全編を貫くのは、経済的にも宗教的にも圧倒的に豊かなスペインに、貧弱な新興国イギリスが立ち向かうという構図だ。
 むかし「成金」という言葉があったが、スペイン人の余裕は、正統派の豊かさを長い歴史を通じて奥深く身に付けた人たちのもの。最近成り上がってきた成金クンと成金さんを、「おやおや、そんなにそっくり返っちゃって、可愛いね」「あらあら、威張り方が若々しいわね」と冷やかすような、奥深い余裕である。
あるからもん
(レティーロ公園近くの「アルカラ門」)

 旅行体験記に出てくる「マドリードで危険な目に遭った」などというのは、危険な目に遭っても仕方のない危険な地域に入りこみ、しかもそこで、危険な目に遭って当然の危険な行動をとったからではないのだろうか。
 「行ってはいけません」と書かれているコロン広場なんか、いったいどこがどう危険なのかサッパリわからない。「夜はもってのほか、昼間でも危険です」の投稿があったレティーロ公園は、まさに日曜の午後の静かで穏やかなひととき。ベンチでは穏和そうな中高年のヒトビトが語らい、おそらく郊外から遊びにきた大家族がボートで池に漕ぎだし、イヌたちは口を耳まで開けて楽しそうに笑いながら走り回る。これほど平和な公園はなかなか考えられないぐらいである。
レティーロ公園
(レティーロ公園の日曜日の午後)

 ただし、危険な場所に1歩入りこめば、やっぱり危険な空気が充満している。プエルタ・デル・ソルからグランヴィアに登っていく道には、真っ昼間だというのに、明らかにそれとわかるド派手な女性たちがたくさん立っている。その用心棒と思われるコワいお兄さんたちもウロチョロしている。まあ、「バネを売ったり買ったりの現場」である。バネって? もちろん、バネ→スプリング→春、そういうことである。
 もっとも、バネの売買については、ついこの間、3月の大阪道頓堀で目撃してきたばかりであって、別にマドリードが危険な都市だという証拠にはならない。オネエサマたちの着飾り方も、用心棒のオニーサンたちのコワい外見も、午前1時の大阪は、午後4時のマドリードに決してヒケをとるものではない。要するに「勝っても何の自慢にもならない」というだけのことである。
グランヴィア
(多少の危険を感じるグランヴィア)

 20時前、時間はまだ少し早かったが、グランヴィア裏のレストラン「ラ・バラッカ」に入る。ガイドブックには「要予約」となっているが、別に予約なんかしなくても、チャンと入り込める優しいお店、パエージャの有名店である。
 日本では「パエリャ」のようだが、スペインの人の発音はパエージャ。日本ではセビリャだが、スペイン人の発音はセビージャ。スペルllaは、現代スペイン人の発音では「リャ」ではなくて「ジャ」が一般的のようである。
 この店のパエージャの味については、またそのうち書く機会があると思う。問題なのは、この店の裏あたりから先がマドリードきっての危険地帯だということである。ガイドブックには「昼間でも、地元のヒトでさえ滅多に近寄りません」「夜間にこの地区に足を踏み込むなど、もってのほかです」とある。
 おお、今井君は帰り道のことを思いながら、ワインを飲む手も震えるほどコワい。コワいワリには、やっぱりボトル2本を1時間半で空けて、22時少し前にホテルに向かった。やっぱり「ちょいコワ」の地下鉄利用だが、ガイドブックに脅かされたようなオッカナビックリ事件は、起こる気配さえなかった。

1E(Cd) Solti & Vienna:WAGNER/DIE WALKÜRE 1/4
2E(Cd) Solti & Vienna:WAGNER/DIE WALKÜRE 2/4
3E(Cd) Solti & Vienna:WAGNER/DIE WALKÜRE 3/4
4E(Cd) Solti & Vienna:WAGNER/DIE WALKÜRE 4/4
total m56 y250 d6215