Sun 110403 昨年11月「網膜剥離」以来の半年を振り返る→ホントに分水嶺を越えた(1) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 110403 昨年11月「網膜剥離」以来の半年を振り返る→ホントに分水嶺を越えた(1)

 昨年11月6日、今井君は茨城県水戸市での講演会から帰ってきて、一息つきながらブログ記事を書いた。「さあ、それでは久しぶりに旅行記を始めます」という告知をして、2008年11月のマドリード旅行についての、詳細な紀行文を書き始めようと思ったのである。
 実はその1週間前から右眼に異常があって、乏しい医学的知識の中で「どうやら網膜剥離らしい」と判断していた。しかしさすがに愚かなクマのことであるから、「何とか踏ん張っていれば、そのうち自然に治まるかもしれない」と、余りに愚かな希望的観測の中でオロオロしていたのである。
 症状は、網目状の激しい飛蚊症。右眼全体に蚊帳か網戸のような濃い網目がかかり、網にはおっきな蛾のような黒い影が2つ絡んでいる。2つの影は水中の藻のようにユラユラ揺れて、時には黒く、時には白く、不気味に光っていた。愚かなクマさんは、「剥がれたものは自然にはくっつかない」という厳然とした事実を、キチンと把握する勇気がもてずにいた。
 網戸と揺れる蛾の不気味さに耐えられなくなりつつあったのが11月6日。電車の中でも視界が濁り、照明は曇りガラスを通すように滲んで見えた。講演会の最中は夢中だから、目のこともすっかり忘れていられるが、講演が終わるや否や、いっそう症状が悪化したのがわかる。
 「あんまり話に夢中にならない方がいいんじゃないか」、そう思いながら水戸から代々木上原に帰った。11月6日、それでも「いよいよマドリード旅行記を始めます」とブログで宣言。まだまだ「我慢していれば、そのうち網目は消える」と甘い見通しに賭けていた。症状が決定的になったのはその直後、7日未明である。右眼の視界の右上方に真っ黒な穴が開き、そこだけポッカリ視力が消えていた。
 7日に入院、8日緊急手術。入院は1週間に及んだ。あれから半年が経過する。「たった半年で、これほどたくさんのことが起こりうるのか?」と、思わず頭を抱えて揺すぶってみたくなるほど、あまりにもいろいろなことが起こった。
お客さんがやってきた
(ナデシコどんのおウチに、白いお客さんがやってきました)

 手術の傷口がようやく癒えた12月、今度はニャゴロワの腎臓病が判明。「あとどのぐらい生きられるんですか?」の問いに、獣医師は「300日、いや100日かもしれない」と答え、症状の指針となる血液検査の数値が「致死的に高くなっている」と指摘した。10までしか目盛のないメーターで、9.7。正常値は2.8までというのだから、9.7は確かに致死的と言っていい。
 「ニャゴと一緒にいられるのは、あと100日」。つまり「桜が咲く時期まで生きられるかどうかわからない」。そう思うと、ペットショップに並んだペットのためのクリスマスプレゼントを眺めることも出来ずに、号泣しながら店から飛び出したりした。2010年は、ニャゴの写真ばかり撮っているうちに、いつの間にか暮れた。
ちょっとお茶菓子を
(何もないので、ちょっとお茶菓子を買ってきましょう)

 そういう状況だったから、2010年12月に予定していたポーランド旅行は当然中止になった。ワルシャワと古都クラクフで2週間の予定は脆くも崩れ去り、「厳冬期のアウシュビッツを見てこなければいかん」という決意も、「自分の右眼とニャゴロワのシッポが大事」という判断で、2012年以降に延期になった。
軒を貸して1
(ニャゴさんは、どんなお菓子が好きかしらね)

 やがて2011年春の「講演会ラッシュ」「出演ラッシュ」が始まった。それが終わる頃、大震災が襲って、仙台の実家も被災。大津波はマンションのベランダから見えそうなところまで到達。家具は全てひっくり返り、快傑ババサマの大切な文庫本が2部屋ぶん、足の踏み場もないほど散乱した。
 それがようやく片付いたと一息つく間もなく、4日前に震度6の余震がきて、文庫本の山は再び崩壊した。実家のそばでは、新幹線1編成が3月11日の緊急停車以来、すでに1ヶ月立ち往生したまま、ピクリとも動かない。
軒を貸して2
(ま、ゆっくり待っててちょうだい)

 しかし、少なくとも今井君を襲った不運の連続は、分水嶺を超えたようである。このブログで「分水嶺は越えたようだ」と書いたのは3月17日。あれは自衛隊による「決死の放水活動」に感激したあまりの早トチリだったかも知れないが、4月11日、今度こそ分水嶺を越えた。13日からは仙台空港がオープン、食料の山を引きずって山形空港からはるばる仙台に向かった日々は、そろそろ昔のことにしていいだろう。
 大きな余震のせいで1ヶ月の努力が無に帰してしまった快傑ババサマのおウチも、ありがたいことにボランティアの皆様のおかげもあって、再度復旧。一度は大きな徒労感に打ちのめされて座り込んだババサマも、ウハウハ笑いながら、難しい森鴎外などを久しぶりに紐解いていらっしゃる。
 実家のある仙台市長町駅付近は、「仙台副都心再開発地域」ということで、インフラの復旧も早かった。あの大きな余震でも、停電も断水もなかったし、ガスも先月末の復旧以来一度も止まっていない。
 マンションのすぐ下に広がる広大な空き地(再開発予定地)には、仮設住宅の建設が始まるらしい。大きな分水嶺を越えたという実感は、確かなはずである。

1E(Cd) Ashkenazy & Philharmonia:SIBELIUS/SYMPHONIES 4/4
2E(Cd) Ashkenazy & Philharmonia:SIBELIUS/SYMPHONIES 1/4
3E(Cd) Ashkenazy & Philharmonia:SIBELIUS/SYMPHONIES 2/4
4E(Cd) Münchinger:BACH/MUSICAL OFFERING
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