Sat 110402 東銀座ナイルレストラン レストラン早川 スペイン旅行記を再開します | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 110402 東銀座ナイルレストラン レストラン早川 スペイン旅行記を再開します

 4月7日、千代田線を日比谷で降り、ほとんど暑いと感じるほどの陽気の中、銀座から歌舞伎座方面に歩いた。地下鉄構内が薄暗くなっているぶん、外の明るさはまぶしいぐらい。同じように、地下鉄構内が蒸し暑いぶん、外の4月の風はいっそう爽快である。
 東京の人々の話題は、ひたすら放射能。風が吹いても雨が降っても、桜の花びらが風に舞っても、宝くじ売り場に人だかりが出来ていても、何かしら放射能に引っ掛けた話題でひそひそ顔を寄せあっている。オジサンたちもオバサンたちも、みんなおんなじである。
 今井君はそういうことについて無知だから、こんなに清々しいそよ風の吹く春の午後に、何をそんなにひそひそやっているのか、不思議である。そんなことするぐらいなら、銀座なんかに出てこないで、おウチでゆっくりお昼寝でもしていればよかったのだ。
 そこで乱暴なクマ蔵どんは、銀座三越前や和光前のひそひそオバサマ軍団を蹴散らしながら、ひたすらカレー屋に向かって前進することにした。目的地は、ナイルレストラン。一昨年春にもこのブログで取り上げたが、30年前もから通っている東銀座の有名店である。
おでかけですか
(おや、お出かけですか?)

 初めてこの店を訪れるお客なら、まず確実に店名についての疑問を口にするはずだ。
「インド料理なのに、何でナイルなの? ナイルって、エジプトじゃないの?」
というわけだ。いんにゃ、ナイル川のナイルではなくて、インド人経営者の名前が「ナイルさん」だから、ナイルレストラン。おお、銀座、恐るべし。カンタンには初心者の侵入を許さない。たいへん紛らわしく入り組んでいるのである。
 実はその2日前、4月5日火曜日に、「気分が煮詰まってきたから、ナイルさんの店に行こう」と思い立った。いったん思い立てば、どんなつまらないことでも居ても立ってもいられなくなるのがクマの愚かなところ。「シャケが食いたい」と思い立てば、近くにどんな旨いものがあっても見向きもしないで、1時間でも2時間でもシャケを求めて冷たい川の水の中に立ち尽くす。そういう生き物である。
 何故かこの4~5年、ナイルさんにはフラれることが多くて、足を向けるたびに店のシャッターが閉まっている。一度は「社員旅行でインドに出かけています」の貼り紙がしてあった。残りは、いつも「定休日」。「ナイルさん!!」と思い立つのが、何故かいつも火曜日で、閉まったシャッターに呆然とし、「なんだ、定休日か」と地団駄ふむことになる。
ポストカード
(銀座で発見したニャゴそっくりのポストカード。銀座三越から東銀座に向かって2軒目の文房具屋で売っていた。諸君、買いに走りたまえ)

 だから2日前の火曜日、一度クマどんはシャッターの前で地団駄ふんだばかりである。地団駄を踏むたびに、空腹に耐えられなくなって、近くのレストランに駆け込んでゴマカシをやる。しかしゴマカシはやはりゴマカシだから、そのたびに「ハズレ」を引いて、もう一度地団駄を踏み直すことになる。
 2日前のゴマカシは、ナイルレストランのお隣の「レストラン早川」。ここも、実はある意味で名店であって、老夫婦が長年昔のままのスタイルで切り盛りしている、いかにも「町の洋食屋さん」という感じの店。電話も重要文化財として通用しそうな「黒電話」のまま。釣り銭はボロボロの封筒に小分けしてあって、その封筒のボロボロぶりが嬉しくなるほどである。
 誤解してもらっては困るので大急ぎで言っておくが、「レストラン早川」だって、チャンとした人気店なのだ。昼食時は中高年のオバサマたちで賑わっている。テーブル4つに椅子12脚の狭い店で、メニューは30年前の田舎の駅前食堂のまま。2日前の今井君は「目玉カレー」でゴマカシたが、「今日のランチ」のトンカツ定食も悪くなさそうだった。
 しかし、ナイルレストランのムルギランチを思い描いて、ひたすら「ムルギ、ムルギ、ムルギ」と唸りながら、はるばる20分も費やして東銀座にたどり着いた短足グマにとって、レストラン早川の目玉カレーはあまりにも淡白であった。その2日後の4月7日、春うららのそよ風と陽光の中を、今井クマ蔵が再び東銀座を攻撃しに訪れたのは、もちろんリベンジのためである。
桜田門
(永田町方面から桜田門を望む。桜田門付近は地震で石垣が崩れ、立ち入り禁止になっている)

 ナイルレストラン前には、おお、行列ができている。普段なら、今井君は行列が大キライ。行列に10分並ぶぐらいなら、誰もいない不人気店がいい。「おや珍しい、ウチに客が来たよ」と店の人が呆気にとられるほどの不人気店で、久しぶりの接客に緊張して、メニューを手渡すウェイトレスの手が震えていたりすると、超有名店に大汗かいて行列を作っている人々の気が知れないほど楽しくなる。
 「久しぶりのお客だから、ちょっと親切にしてやっか!!」という歓待ぶりは、正直にうれしいものだ。バルセロナのレイアール広場にそういう店があった。お隣も、お隣のお隣も、みんなガイドブックでデカデカと紹介されている人気&有名店。日本の人に限らず、欧米人もガイドブックの有名店が好きだし、中国の人々は滅多に団体でしか旅行しないないから、無名店なんかに立ち寄るヒマは全くないのだ。
 バルセロナの店の名は、「何とかMUNDO」。今井君はわずか14日バルセロナ滞在中、7回もこの店に入り、7回ともほとんど同じ料理ばかり食べたのだが、詳細は明日からいよいよ書き始めるスペイン旅行記で読んでほしい。
国立劇場
(三宅坂、最高裁のお隣の国立劇場にて。ここの桜は開花が早い)

 さて、東銀座のナイルレストランだが、行列のハケは非常によくて、列に並んで5分もしないうちに今井君の順番がきた。こういう人気店にありがちな「おあいせき」もなくて、窮屈な思いをしなくて済んだ。おお、30年前から慣れ親しんだ、狭い店内の薄暗さが絶品である。
 テーブルについて息つく間もなく、もちろんメニューを広げるヒマなんか全くなく、名物店員のインドのオジサンに「ムルギランチですね!!」と決められた。こういうところは、決めてもらった方が気持ちいいのである。カレー屋やラーメン屋であれこれ迷っても、どうせろくなことはない。
 「ムルギランチですね!!」で決めない面倒な客には、「ムルギランチが、一番有名ですよ!!」と強烈に勧めるのだが、ここは客の方で遠慮して、いちいち迷わないことが肝要。メニューにはいろいろ面倒なことが書いてあるが、要するにムルギランチが一番旨いし、ムルギランチ以外のものを注文しようと思って頑張っても、頑張れば頑張るほどその分つまらない目に遭うだけである。
 向かいのテーブルにいた30歳過ぎのOLお姉さんは、そういう雰囲気が気に入らなかったのか、皿の上のムルギランチを半分も残したまままで、まさに憤然と帰っていった。名物店員のインド人オジサンが、悲しそうにその皿を片付け、「どうして日本人ってこんなにワガママなの?」という目線でこちらを見つめたものだった。
ポスター
(九段下「昭和館」で開催中の「ポスターに見る戦中戦後」展。諸君、無料だ。是非出かけたまえ)

 ちょうどそのときクマどんのムルギランチがきて、別の若いインド人店員さんが、チキンの骨から肉を全部外してくれた。器用なものである。名物店員さんもすぐに後ろから「混ぜてね。混ぜてね。混ぜれば混ぜるほど、どんどん美味しくなりますよ。完璧に、完全に混ぜてくださいねぇ」とダメを押してくれた。
 諸君。混ぜれば混ぜるほど、どんどん旨くなる。どんどん旨くなるばかりか、混ぜれば混ぜるほど、何故かどんどん量も増える。どんどん東銀座「ナイルレストラン」に出かけてくれたまえ。混ぜて、混ぜて、どんどん混ぜてくれたまえ。アブクが出るほど徹底的に混ぜて、2倍にも3倍にも量を増やして、日本人はあんなOLお姉さんみたいなワガママなヒトばかりではないことを、店の人たちにアピールしてくれたまえ。
 ついでだから、瓶のビールも1本飲み干し、「もうこれ以上食べられません」「お願いです、許してください、もう食べ物のことなんか言わないでください」の状況で、ホウホウの態で店を出た。銀座は、午後1時。どれ、お花見に行くかね。

1E(Cd) Krivine & Lyon:DEBUSSY/IMAGES
2E(Cd) Rogé:DEBUSSY/PIANO WORKS 1/2
3E(Cd) Rogé:DEBUSSY/PIANO WORKS 2/2
4E(Cd) Kazune Shimizu:LISZT/PIANO SONATA IN B MINOR & BRAHMS/HÄNDEL VARIATIONS
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