Sun 110327 福井ダブルヘッダー第1戦 ピノッキオ君と天狗ちゃん 参加形式の授業参観 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 110327 福井ダブルヘッダー第1戦 ピノッキオ君と天狗ちゃん 参加形式の授業参観

 3月21日、福井でのダブルヘッダー第1戦は、12時半開始、14時終了、出席者140名。会場は福井大学教育学部、対象は高校入試の発表が終わったばかりの中3生(=新高1生)とその父母である。福井も雨、それもちょっと自転車に乗るのをためらうぐらいの強めの雨であったが、出席者数は予定どおり。少々お疲れ気味の今井君も、最初から大いに張り切って始まった。
 相手は、藤島高校とか高志高校とか、福井県一番の名門校に合格したばかりの生徒たちがほとんど。県内トップの高校に合格し、本人も両親も、おじいちゃんもおばあちゃんも、まさに狂喜乱舞、天下を取ったような高揚した気分のはずである。
 親戚一同からお祝いの電話がかかり、お祝いののし袋が届き、
「きっとユウキ君は東大だね」
「萌香チャンは、女医さんかな? 国立の医学部にも入れるね」
みたいな祝福を受ける日々のはずだ。
 福井は教育県であって、小中学生時代は「学力日本一」を秋田県と争っている。その県のトップ校に合格なら、今の高いお鼻も理解できる。親戚どころか町内会のオジサンオバサンまで祝福を惜しまない。天狗も顔負けの鼻高々、ピノッキオ顔負けの鼻高々。まあ、何はともあれ、おめでたい。
福井1
(講演会 at 福井大学 1)

 しかし、今日の今井君の役割は、その高々のお鼻・約100本を、ポキッと折ってあげることである。諸君。何も「ポキッと折れる」のを2年も3年も先延ばしする必要はない。「教育県の県下一」ではあっても、大学入試の実績となると、アレマ、オヤマ。とても大威張りできるような状況ではない。
 「東大でも国立大医学部でも思いのまま&よりどりみどり」だったはずなのに、3年後にはアレマ、オヤマ。それならば、天下を取った気持ちでいる今のうちに、乱暴なクマがやってきて、その鼻をポキッと折ってあげることこそが、一番の親切なはずである。
 もちろん、高校に合格したばかりの彼らが「ボクの鼻、高すぎるんでポキッと折ってください」と言うわけがない。彼女たちだって「私の鼻は高すぎてジャマです」と思っていたりはしない。それでは変態だ。しかし、無意識ながらも、鼻が高すぎることに薄々気づいてはいるはずだ。ホントに無意識で、ウッスラと、ホノボノと、「痛くないように折ってくれる人、募集中」なのである。
 パパか、ママか、誰でもいい、この上なく優しい人が、「鼻がそのままの高さだと、近いうちに物凄く痛い目に遭う。その痛さは、取り返しのつかない痛さなのだ」と教えてあげなければならない。
 しかし、パパもママも優しすぎて、「お鼻をポキッと」は出来そうにない。誰か、関係のないオジサンがお空から降ってきて、ガハガハ明るく笑いながらお鼻をチャンと折ってあげなければ、早晩ピノッキオ君もテングちゃんも取り返しのつかないことになる。
福井2
(講演会 at 福井大学 2)

 だから今井君は、出来るだけ苦痛を感じさせずに、ピノッキオのお鼻を切り取っちゃう厳しいジェペットじいさんにならなければならない。今井君はとても優しいオジサンだから、この仕事はお得意。このオジサンの優しさの特徴は、言ってあげなければならないことを、笑いのオブラートにくるんでキチンと言ってあげる厳しさにある。
 息子や娘に付き添って参加したパパやママの期待も、まさにそこにある。
「厳しいことをキチンと言ってあげたい。しかしせっかく県下トップの高校に合格したばかりのおめでたい雰囲気の中で、父として、母として、厳しいことは言いにくい。たとえ言ったとしても、こんなおめでたい雰囲気の中では、息子も娘も聞く耳を持たないに違いない。ならば、クマだかウワバミだかクマーニーだか知らないが、山賊みたいなヒゲ男に、その仕事を託したい」
そういう思いのはずである。
福井3
(いつもより低い年齢層に戸惑いながらも、かまわず語りまくるクマ蔵)

 講演冒頭の約5分、さすがの今井君も少々戸惑った。パパとママの顔が予想以上に目立って、会場の1/3を占めている。この場合、敬語で話すべきかどうか。中3生や高1生に向かって話すような口調で喋って、失礼に当たらないか。逆に父母に遠慮して敬語で語れば、子供たちは面倒くさくて眠くなってしまじゃんか。
 この場合、今井君独特の切り抜け方があって、「ご父兄の皆様は、授業参観にいらっしゃったつもりで聞いてください」である。高校生相手の普段通りの口調で、一切遠慮なしに授業を行う。パパやママは子供たちと一緒に座って授業を参観する、ちょっと変わった授業参観のつもりで見てもらえばいい。
 小学校や中学校の授業参観も、こんなふうに子供と一緒に授業に参加する形式に変えてみたらいいんじゃないか。美容院に行ったばかりのママたちが、スリッパをパタパタさせながら教室の後ろにズラッと居並ぶ伝統的な形式は、参観というより見物である。「我が子が恥をかかないか」「我が子に恥をかかせられないか」、そればかり心配で、参観のうちの「参」の部分が消えてしまう。
福井4
(福井でも、態度の悪い今井君)

 この日の福井でも、参加の形式が大成功。子供たち以上に、まずパパたちが、続いてママたちが、顔を真っ赤にして爆笑し、机を両手でたたいて大ウケにウケまくり、涙を拭いながら熱心にうなずいて、むしろ授業の中心はパパとママになっていった。25年前、30年前、高校や予備校の教室での生徒としての経験が、ホントに久しぶりに蘇って、「こんなに楽しい日曜日は久しぶりだ」という笑顔が、福井大学の大教室に充満したのである。
 もちろん、今井君は自分に託された仕事を忘れてはいない。高い高いピノッキオのお鼻は、そこいら中でポキポキ折れていった。笑いにむせながら、パパが娘の肩をつつき、ママも息子の背中をつつき、「ほら、お前のことだぞ」「ほらほら、あなたのことを言ってるわよ」という親子の交流が、羨ましくなるほど楽しそうである。
 90分後、ほとんどの生徒たちが「よし、では、今日から徹底的に英語の音読だ」「音読、音読、ひたすら音読」という顔に変わり、「まず、英語を一気にやっちゃおう」という熱い決意に溢れて帰路についた。降り続く冷たい雨が、かえって心地よかったはずである。

1E(Cd) Ashkenazy & Philharmonia:SIBELIUS/SYMPHONIES 1/4
2E(Cd) Ashkenazy & Philharmonia:SIBELIUS/SYMPHONIES 2/4
3E(Cd) Madredeus:ANTOLOGIA
4E(Cd) Walt Dickerson:SERENDIPITY
total m60 y178 d6143