Thu 110310 大停電危機 綾瀬の講演は中止 大学の卒業式も中止 この危機が全て去ったら | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 110310 大停電危機 綾瀬の講演は中止 大学の卒業式も中止 この危機が全て去ったら

 17日夕方4時、福島原子力発電所ではなかなか「地上からの放水」が始まらない。前夜22時には「まもなく始まります」と言っていたのに、あれからもう18時間も経過している。じりじりして放水を待っていると、画面に海江田大臣が登場して「今夜、大規模停電の可能性」を告げた。
 このままでは首都圏大停電の可能性がある、いっそうの節電をお願いする、首都圏にお勤めのヒトは帰宅を急いでほしい、というのである。おお、とうとう事態はここまで切迫したのである。この呼びかけにすぐに呼応して、都心の大企業は一斉に社員に帰宅を命じたと報じられた。
それでも1
(それでもクマさんは出かけるの? 1)

 確かに、電力供給がギリギリなら、責任ある行動は「精一杯早い帰宅」である。「東芝・富士通・花王・JTなどが社員に早めの帰宅を促した」とテレビのテロップが示す。新宿や渋谷の大規模店舗も、早々に閉店して店のシャッターを下ろし始めた。鉄道各社もすぐに呼応して「運転本数を順次減らすことが可能か」を検討し始めた。
 キャスターは「暖房も切るべきだ」「被災地域の苦しみを考えれば、暖房を切って厚着して寒さを凌ぐぐらい当たり前だ」と言う。まさにその通り。もちろん、そう言っている民放のバカバカしいグルメ番組こそ電気の無駄なのであるが、今はそんな茶々を入れているヒマに1つでも2つでもスイッチを切って回るべきである。
それでも2
(それでもクマさんは出かけるの? 2)

 さて、今井君はどう対応したものだろうか。優等生的で申し訳ないが、考えなければならないのは、何よりもまず生徒の安全確保である。停電で真っ暗になった道を歩かせるわけにはいかない。大停電なら、エレベーター急停止で閉じ込められるトラブルだってあり得る。
 すでに一流企業のヒトビトは帰宅を急ぎ、企業も節電。首都圏住民も多くは不要不急の電気器具のスイッチを切って、精一杯の節電に努めている。まず止まりそうなのは、東京メトロ。実際、19時あたりから日比谷線と千代田線でダイヤに混乱が生じた。これから公開授業で目指す校舎は綾瀬。まさに今一番止まりそうな千代田線沿線である。
それでも3
(それでもクマさんは出かけるの? 3)

 16時半、それでも今井君は公開授業に向かう身支度を整えた。いつものスーツに革鞄&革靴はヤメて、厚手のジャンパーにリュックの完全武装。リュックには停電に備えて懐中電灯。チョコと水と替えのバッテリーも入れて、靴や靴下も帰宅難民化したときに大丈夫な、柔らかいものに履きかえた。
 もし綾瀬から歩いて帰ることになれば、帰宅は夜明け頃になるだろう。チョコをかじり、水を飲んで、歌でも歌いながらのんびり楽しく歩いて帰ってこよう。クツズレに備えて、バンソーコーも数枚持った。放射物質の飛散は気になるが、ジャンパーのフードを被り手袋をして、出来るだけ肌の露出を避ければいいだろう。
 政府高官が涙声で節電と早めの帰宅を訴え、首都圏住民がこぞって節電に協力している状況で、それでも講演会を実施することに強い疑問を感じる。
 しかし100名も申し込みがあって、みんな楽しみに待ってくれている講演会を、いきなり中止にするのは忍びない。教室の照明を落とし、暖房も完全に切って、節電に節電を重ねての講演会にするしかない。
大阪ねこ1
(大阪・道頓堀の野良猫、3月10日。シャム猫?)

 ジャンパーのチャックを締め、リュックを背負い、ほとんど戦闘地域に出向くような覚悟で靴を履いているところに、東進から急ぎの電話が入った。「今日の綾瀬は中止と決まりました」というのである。
 何だか、悔しくて涙が出た。生徒も職員も楽しみに待っていてくれたのに、突然の中止なのである。しかし、何だかホッと安堵して、また涙が出た。やむを得ない。生徒の安全のため、国民的節電への精一杯の協力でもある。いろいろあって、もともと涙もろいクマ蔵はますます涙もろくなっている。
 綾瀬は足立区だが、足立区の半分はこの夜の計画停電区域。区の半分が計画停電で真っ暗な中、校舎に照明と暖房をつけて公開授業をすることに、ホントに心配で、ホントに申し訳ない気持ちでいたのである。
 計画停電を免れている都内の高級住宅地なら別のこと。この夜の綾瀬の公開授業中止は、誰がどう見ても最善の策であった。
大阪ねこ2
(大阪道頓堀の野良猫2。この光る眼が、翌日から始まる日本の国難を予告していたのかもしれない)

 プロ野球セリーグが「何が何でも25日ナイターで開幕」の非常識な方針で、世論の批判を浴びている。選手会も非常識を感じて「ストライキを辞さない」とさえ言っている。今は、そういう我慢の時期である。
 今回の震災で、慶応大は、23日の卒業式を中止。早稲田大も25日26日の卒業式を中止。広報課では「卒業生だけで約1万人が集まる式典の安全確保は困難と判断」。この他、上智、学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政、首都大東京、東京理科大なども卒業式の中止を決定。東大は卒業生代表12人のみ出席で24日に実施。卒業式は人生最大のハレの舞台だが、みんな涙をのんで我慢している。今はみんなで危機を耐え忍ぶ時なのである。
 とはいえ、公開授業が突然中止になった綾瀬の皆様には、済まないことをした。ホントに申し訳ない。これで、もう綾瀬には呼んでもらえないかもしれないが、これが間違いなく最善だったと今井は確信している。
 全てが悔しくて、思うたびに胸がつまって、いったん涙がにじむと、もうどうしても涙が止められない。今回の危機がすべて去って、今回の中止についての怒りがもしも収まっていたら、その時は晴れやかな気持ちでまた呼んでくれたまえ。