Fri 110304 博多から長崎へ 進路と志望について 春雨の日曜日、博多駅前は大混雑 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 110304 博多から長崎へ 進路と志望について 春雨の日曜日、博多駅前は大混雑

 3月6日、福岡で目が覚めると、時計はすでに10時である。さすがに昨夜は飲み過ぎたようで、少し頭が重い。外は早春の冷たい雨が降り出している。天気予報ではもう何日も前から「3月6日の九州地方は雨」と断定されていて、「大荒れになる可能性も」というイヤな可能性が付属品のようにくっついていた。
 この日は午後6時半から長崎で講演会がある。雨の日の講演会はキツい。雨が降っただけで、出席者は予定×0.9ぐらいに減少してしまう。まして「大荒れ」などという事態になれば、予定×0.8とか、×0.7とか、そういうツラい状況も覚悟しなければならない。
 今日の出席予定は250人だから、×0.8なら=200。そのぐらいの計算は頭の悪いクマでも出来る。あんまり自虐的に「アタマが悪い」「数学が出来ない」と言い続けると、読者の中には正直すぎるヒトもいて「今井先生は数学が全然出来ないんだ」と信じてしまったりするから、タマには算数が得意なところも見せておかなければならない。
かもめ
(長崎ゆき「かもめ」。博多駅にて)

 スミマセンが、今井君だって、高校では理系クラスに在籍。クラスのほぼ全員が医学部志望だった。今井君も、高3の夏まで医学部志望だったのだ。チャンと数学Ⅲの微分積分もやったし、微分方程式だってやった。数ⅡBの漸化式の問題も得意だよん。
 図や絵を駆使して鮮やかに問題を解くのは苦手、整数問題もどうもダメ。その辺は文系人間だが、積分や位置ベクトルに持ち込んで力ずくで解くなら、是非このクマ蔵に任せてくれたまえ。力ずくで、ビリビリに引き裂いて、「何だかよくわからんが、とにかく解決!!」、そういうクマ的解法なら、天下に名を轟かせる自信だってある。
 ついでに、珠算検定2級を小学5年で取得。少なくとも250×0.8なら、計算機で確認しなくても、絶対に、意地でも、誰が何と言っても、200人。そのことについては、自分の短足以上に自信を持って断言できる。
かもめ2
(長崎ゆき「かもめ」。これも博多駅にて)

 では、なぜ今井君は高3の夏に医学部志望から文学部志望に変わってしまったのか。ついでに、なぜ高3の秋に再び医学部志望に戻ったり、高3の晩秋に医学部志望を再び断念して法学部志望に変わったのか。なぜその後もほぼ2~3日の割合で医学部と文学部と法学部の間を行ったり&来たり♡行ったり&来たり、際限なく行きつ戻りつしたのか。
 その問題については、まあ恥ずかしくて、いまだにブログで公開する勇気をもてない。勇気がないから徹底的にボヤかして告白すれば、目の前に3つの魅力的な対象があって、「その3つからキッパリ1つを選択する」などという勇気ある行動は、クマさんには不可能なのである。
長崎ねこ
(長崎駅のネコ1)

 ハチミツと、リンゴと、ドングリの山。3つ目の前に並べておいて「さあ、どれか一つを選びなさい」=「他の2つを放棄しなさい」などという残酷な選択を迫られても、当時18歳の今井クマ蔵にはどうしようもなかった。そういうことである。クマどんは最後まで3つの選択肢の間をウロウロし続けて、最後まで決められず、結果としておそらく自分に最も無縁な政治学科への進学を余儀なくされることになった。
 要するに、ダラしないのである。どれもみんな旨そうで、ヨダレを垂らしながらウロウロ歩き回るうちに疲労困憊し、やがて困り果てて尻餅をつき、幸せな夢を見ながら眠りこけてしまうクマさん。今井君は、おそらくその後10年ほど、そんなふうに眠りこけて過ごしたのである。
でぃーぜる
(懐かしい塗装のままのディーゼルカー。長崎発、佐世保ゆき)

 だから、どうも高校や予備校の進路指導が残酷に見えてならない。
「まず、なりたい自分を決めなさい」
→「その職業に直結する学部を選びなさい」
→「その学部がある大学から、自分にあった大学を選択しなさい」
まるで3クリックで結論が得られるPCゲームみたいな言い方で、実は「他の魅力的な選択肢を全部放棄しなさい」と命じているのである。
 この時期の講演会で、もしも憂鬱なことがあるとすれば、サイン会などで生徒から受ける進路相談である。会場の都合があるから、サイン会に100人並んでも30分程度しか時間はとれない。もしも進路に悩んで蒼ざめた顔の高校生が、「あのー、学部って、どうやって決めたらいいんですか」と質問してきても、彼または彼女に割いてあげられる時間は、せいぜい1分程度。そんな短時間では、クマ蔵なんかにマトモな答えはできないのである。
 そういうわけで、「学部を早く決めなさい」「なりたい自分を描いてみなさい」の類いのアドバイスを今井君に期待してきても、なかなか今井君はその通りのことを言ってくれない。期待した通りの答えを得られなかった受験生は、ちょっと不満そうな顔で帰っていく。
いきどまり
(長崎駅は、行き止まりである)
      
 「なりたい自分」→「それに直結する学部」というクリックの流れだと、おそらくその3年後または4年後のシューカツで、ほぼ確実にスタックする。「なりたい自分」は、人事部の若手職員によって次々と阻まれていく。それも、会社の外のコーヒーショップやホテルのカフェでの面接で、あっという間に跳ね返されてしまう。シューカツ生として本社に足を踏み入れることさえ拒まれるのだ。
 あれほどたくさんの魅力的な選択肢を、17歳か18歳にして全て排除または放棄して「これ1本」に絞ったはずなのに、ホントに残酷なメール1本くるだけなのだ。「当社とはご縁がなかったということで」「今後のご活躍をお祈りいたします」ということになる。「なりたい自分」など、そこには存在しないのである。
長崎ねこ2
(長崎駅のネコ2)

 まあ、そういうことを考えながら、ホテル日航福岡をチェックアウト。会社からは博多14時の特急のチケットをもらっていたが、チェックアウトタイムが12時、博多発が14時では、クマさんは博多駅で2時間も持て余すことになってしまう。
 最近は、出来る限り会社のくれたチケットのまま素直に行動しようと考えているのだが、ここはさすがに12時01分の長崎行「かもめ」に乗って、もう長崎に行ってしまうことに決めた。
 何しろ博多は3月3日に新しい駅ビルがオープンしたばかりである。新宿高島屋とそっくりな外観のデパートと、金沢駅前そっくりのディスプレイと、名古屋駅そっくりの駅舎と、日本全国のイイトコドリで出来た新築・博多駅に、九州のヒトがみんな押し寄せたような大繁盛&大混雑。冬眠から醒めたばかりの暢気なクマどんが、ノホホンと何にもしないでブラブラ歩き回るのには、少々賑やかすぎたのである。