Sat 110205 この時期の講演会を訪れる受験生 合格報告よりつらい現状告白が多い時期 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 110205 この時期の講演会を訪れる受験生 合格報告よりつらい現状告白が多い時期

 いよいよ合格発表がたけなわになってきて、いくらしつこく「高1&高2限定」と事前に繰り返しアナウンスしてあっても、高3生や浪人生が数人、あるいは十数人、講演会場を訪れる。

 こういう場合、ごく常識的に考えれば、
「先生、○○大学♡♡学部に合格しました」
「先生、絶対無理だとあきらめかけていた第1志望に合格できました。ありがとうございました」
の類いの報告であると、一般のヒトなら思うだろう。

 予備校で昔からよく見かける光景として、ドラマや映画でもよく描かれるシーンである。報告する生徒は、男子も女子も目を輝かせ、興奮で顔は紅潮し、すでに我を忘れている。先生だって、冷静でいられるわけはない。
「そうかぁ、やったかぁ、合格したかぁ!!」
「よかったな。あきらめかけていたのにな!!」
「だから言っただろ、あきらめなきゃ、何とかなるもんだって!!」

 こんな瞬間に、もし冷静なままで喜びも感激も表現せずにいるのは、教師として冷酷というよりむしろ未熟なのだ。意地悪な見方をすれば、自ら感動や感激を演出している教師だって少なくない。

 特に予備校講師は人気商売である。少しあくどいほど自己演出して、周囲に感動を見せつける。「情熱あふれる熱血講師」ぶりを、この感動的な場面さえも利用してせいぜいアピールしようとする、そういう講師だっているはずだ。
高山1
(岐阜県飛騨高山に来ております)

 ところが、諸君。現実は違うのだ。ドラマやマンガで描かれるほど、喜びや感激の場面は多くない。実際には、合格して先生と喜びを分かち合いにくる生徒よりも、どこもかしこもうまくいかなくて「どうしたらいいんでしょうか」という相談に訪れる生徒の方が多いのである。

 どんどんうまくいっていて、連戦連勝、受験した大学にどんどん合格できている生徒なら、予備校講師のモトを訪れる必要はない、今井君は普段からそう語っている。
「第1志望に合格したなら、講師なんかに挨拶にくるより、その先の目標に向かって、躊躇なくすぐにスタートを切るべきだ」
「うまくいったら、先に進め。合格から入学式までの1ヶ月の過ごし方で、人生が決まるとまでは言わないが、大学生活がうまく行くかどうかは半ば決まってしまう。待ったナシだ」
以上、今井君が年末から年始にかけて受験生に伝えるメッセージである。
高山2
(飛騨高山にいます。ネットにアクセスする時間がありません)

 だから、今井君のところをこの時期に訪れる受験生は、「うまくいかない」「どうしたらいいんだ?」「もうどうしようもなくなった」という相談を抱えて、暗く俯いている。クマ蔵と向かい合う前から涙ぐんでいる生徒もいるし、相談しながら感極まって泣き出す生徒もいる。

 高校の担任の先生に相談することもできず、パパやママともちょっと口喧嘩みたいになって、彼ら彼女らはやってくる。「もう今井の他に相談する大人は考えられない」という切羽詰まった精神状態で、会場の隅っことか、講師控え室のドアの脇とか、会場や校舎の外の薄暗闇の中で、ひたすら今井が一人になる瞬間を待ち受けているのである。
高山3
(飛騨高山。残った雪が凍って、滑って転びそう。油断大敵)

「第1志望が早稲田法学部だったのに、ここまで中央大学法学部にも明治大学法学部にも、全部失敗です。明日が早稲田ですが、どうしたらいいんでしょう」
「センター試験で大失敗して、国公立はその時点であきらめました。親には、『私立なら早稲田か慶応以外は行かせない、ダメなら就職だ、手に職をつけて生きていけ』と言われています」
「1浪で、模試の成績は全然ダメなんですが、やっぱり東大以外は考えられないので、無理は承知で突撃します。早稲田も受験しておけば良かったと後悔しています。おそらく2年目の浪人に突入なんですが、2浪しても、どうせうまくいかないような気がして…」
「ここまで0勝6敗です。親はずっと『結果なんか気にするな』『悔いのないように全力を尽くしさえすればいい』と言ってくれていたんですが、失敗が続いたら、ママもパパもおばあちゃんまで、態度が急に変わってしまいました」
「誰も味方がいないような気がして。『4流大学じゃ、ママは恥ずかしい』『3流大学に行かせるカネは、父さんは出さないからな』みたいに言われて、参っています。何だか妹までバカにしてるみたいな気がして」

 以上、廊下の片隅や、駅への暗い道で冷たい風に吹かれながら、今井クマ蔵が打ち明けられる彼ら彼女らの現状である。(明日に続きます)
高山4
(宿泊先のホテルアソシア高山リゾート12階からの眺望)