Mon 110110 「…と言います」大氾濫 誰がそう言ったかを明示しないのは、耳障りだ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 110110 「…と言います」大氾濫 誰がそう言ったかを明示しないのは、耳障りだ

 さて、首相と閣僚の口癖はそうとして(スミマセン、昨日の続きです。「まさに」「いろいろ」は確認してくれましたでしょうか。国会中継は、まさにそのためにあるのです)、政治の動向を伝えるメディアはどうか。
 うーん。こちらも全くアテにならない。「甘い」「あまーい」の連発と味覚表現の劣化については一昨日書いたとおりだが、今日は最近耳につく「…と言います」について指摘しておく。
 諸君、夕方5時台の民放のニュースショーをちょっと覗いてみたまえ。4局あっても5あっても、中身はどれもみんな同じ、というか、区別をつけること自体ほとんど不可能である。
 いや、すでに中身うんぬんの問題ではなくなっている。言葉遣いやカメラのアングルまでクリソツ。一昨日書いた「甘い」は氷山の一角であって、今やレポーターの語尾が「…と、言います」で溢れかえっている、そういう部分までクリソツなのである(わかっていると思うが、「クリソツ」とは「そっくり」を逆さにして発音した、ギョーカイ用語 or 昭和オジサン用語)。
カラー
(今も2日に1回の点滴を続けている。点滴は10分で終わるが、引っかいたり噛んだりされないように、このカラーをつけなくてはならない。エリザベス一世の肖像に似ているので「エリザベス・カラー」の名がある。)

 民放でなくても、朝7時台または夕方6時台のNHKでもいい。この2~3年のNHK報道は、人の生活を必要以上に悲惨な色彩でVTR構成し、「ゆきどまり感」タップリ、「せっぱつまったギリギリ感」ムンムンにして伝える手法が目立つようになった。
「いくら活動しても、全く内定がとれない、と言います」
「一日中電話を待ちますが、一流企業からの連絡は全くない、と言います」
「親は、中小企業への就職では納得してくれない、と言います」
「不安で眠ることもできない、と言います」
画面は、黒いシューカツスーツの学生が、公園のベンチでオニギリをかじりながらケータイをいじっているシーン。うーん。見ている方がつらくなってくる。
 確かに、ギリギリにせっぱつまったヒトがたくさん存在するのが今の日本の実態なのだから、報道自体は正しいことなのだが、気難しい今井クマ蔵今右衛門なんかは、「ではその悲惨な状況を、面白おかしいニュースショーの一部分に組み込んで報道するのは正しいことなのか?」という疑問でいっぱいになるのだ。
 「まちかど情報局」や「明日は、節分。豆まき以外に最近のトレンドは、恵方巻(mac君「恵方真希」って、どんな女子ですか?)」みたいなトピックス枠に、眠れないほど悲惨な生活レポートを組み込んで報道して、その姿勢が公正なものと言えるか。クマエモンは、どこまでも気難しいのである。
落ち着いた
(点滴後、すっかり落ち着いて眠るニャゴ)

 まあ、そういうニュースショーを録画して、「…と言います」の回数を記録してみると面白いだろう。学部生なら、メディア論のレポートに出来るぐらいだ。菅首相の「まさに」「いろいろと」と比較しても、頻度の点でヒケを取ることは、おそらくないと思う。
 「…と言います」とは、英語ならThey say that …であって、この場合theyとは誰なのか、誰にもわからない。明確に示したくないか、または示せないほど不明確であるか、そのどちらかである。
 「ニュースソースは絶対に明かせない」というのとは、全く別の話である。マスメディアは、発言の主体を故意に隠したり、誰の発言かを明確にできないまま、「世論はこうだ」「みんなこう言っている」のように、無責任な情報を垂れ流してはならない。マスメディアとしての矜持があれば、決してしてはいけないことである。
 ま、新聞なら「情報筋によると」と書くべき場面があって、それならそれで許されるのだ。しかし、「気難しいクマ蔵」としては、20歳代後半と思われる若いレポーターたちが、無反省に「…と言います」とコトバを濁す姿勢に、首を傾げざるを得ない。
 教育現場のレポート、パティシエの苦労話、豪雪地帯や火山灰の降り続く宮崎県からの報告、シューカツのうまく進まない学生たちの現状、どれもこれも「…と言います」の連発で、いったい誰が言ったのか、その主語を明確にしない。「もしかして、取材を怠けてメイキング?」と、ふとニヤリとするレポートだって少なくない。
見守るナデ
(点滴に興味しんしんのナデシコ)

 メイキングまでいかなくても「…ということですか?」「…ということですね?」という問いに「はい」と答えてもらっただけなのかもしれない。傷害事件などで「ムシャクシャしてやった」「遊ぶカネがほしかった」というレポートがあるが、あの類いも「ムシャクシャしてやったんですね?」「遊ぶカネがほしかったんですね」に対して、取材される側が「はい」「うん」とうなずいただけであったりすることもある、と言います。
 先輩記者たちの厳しい指導が欠如しているんじゃないか。本来なら「…とおっしゃっています」「…と明かします」「…と考えています」「…と疑念を述べます」「…と、あきらめを口にします」など、出来るかぎり明確に言うべきところ。しかしおそらく放送作家たちの中での流行で、ジッパヒトカラゲに「…と言います」にまとめられてしまっているキライがある。今井君はそう感じるのである。
 明日は、大流行中の「白熱教室」を素材に、では何故「…と言います」を報道の世界から排除すべきか、ますます気難しくその問題を考えていこうと思う。

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