Wed 110105 結論は「今を生きよ」になるのだが 「全力を尽くせ」とはどういうことか | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 110105 結論は「今を生きよ」になるのだが 「全力を尽くせ」とはどういうことか

 以上のこと(スミマセン、『昨日の続き』が延々を続いている最中です)を森鴎外「青年」ふうに言えば
「学校時代は、懸命に学校を駆け抜けようとする。職業に就けば、その職業も駆け抜けてしまおうとする。しかしそれは『その先にホントの生活がある』と誤解するからではない。学校と職業を愚直にこなすことそれ自体が、生活の本質であって、少年として居抱いた大志の実現に最も近い道だからだと、しっかり認識しているからである」
ということになる。
 もう1度、ホンモノの森鴎外「青年」を確認&比較しておこう。
「小学校の門をくぐってからというものは、一所懸命にこの学校時代を駆け抜けようとする。その先には生活があると思うのである。学校というものを離れて職業にありつくと、その職業をなし遂げてしまおうとする。その先には生活があると思うのである。そして、その先には生活はないのである。」
 このくだりをネガティブに読んで「何だ、鴎外ってずいぶんマイナス思考のヒトだな」と思うのなら、今井君は何も岩波書店の1冊平均3600円もする高価な「森鴎外全集」全38巻を買いそろえたりしなかった(スミマセン、自慢です)。
 初めて鴎外「青年」を読んだ時、今井君は「ははん、鴎外はgatekeepersのことをポジティブに考えているな」「でも、ちょっと恥ずかしかったんだな」と直観した。つまり「将来を夢見て学校を卒業しても職場を駆け抜けても、その先に真の生活なんか残っていないのだ」と暗めのトーンで話しながら、「だから今を大切に生きなさい」「Seize the day」というアドバイスを真っ向から青年に贈るのが、明治人として恥ずかしかったのである。
向上心1
(つねに向上心を失わない)

 おお、書いていて、クマ蔵どんだってやっぱり面映い。明治人ならなおさらである。恥ずかしさもそろそろ頂点に近づいたから、長く続いたこのシリーズもそろそろ潮時だ。だから、最後にもう一度イメージしてみたまえ。
 学校を懸命に駆け抜ける。ここで大勢の門番がバタバタと倒れていく。職場でも懸命に駆け抜ける。ここでも無数のgatekeepersが倒れていく。ちょうど、MATRIXで無数に増えたAgent Smithが倒れていくのと同じ光景である。そうしてその向こう側に出れば、そこには思いもかけぬ光景が開けている。「あらら、いつの間にか頂上に来ちゃっていた」、というのが真実なのだ。
 「その先に生活なんかないのだ」というのは、「だって、駆け抜けて到達したそこが、もうすでに山頂なのだから」と読みさえすればいい。そう読み替えさえすれば絶望はないのであって、あとはひたすら日々の門番と正直に対決し、対決を制し続けることが生活の本質になる、ただそれだけのことで、それを要約すれば「今を懸命に生きよ」ということになる。
書棚1
(クマ蔵の書棚、鴎外全集のあるあたり。吉田健一、林達夫、加藤周一、チェスタトン、辰野隆、ギリシャ悲劇、東洋文庫など)

 なお、これらのことは、人間と社会についての楽観論に立って述べているのである。社会が自己破壊を望まない限り、社会の財産である青年を試す門番に、ホントの悪者を立たせたりするはずがない。今井君はそう思うのだ。人間の文明5000年を通じ、青年を試し育てる門番システムは、より優れたシステムに常に改善され続けたはずだ。
「ダメな門番たちにはどんどん退場してもらおう。いま目の前に立った青年を1cmでも2cmでも前進させてやろう。1mでも2mでも向上させてやろう。それをよりシステマティックにして、青年たちの成長や、大志の実現を確実にしてやろう」
そう考えた社会は生き残り、それを考えず自己崩壊を望んだ社会は実際に崩壊し、あるいは淘汰されただろう。5000年のときを経て、5000年を勝ち抜いた社会は、間違いなくそのシステムが優れていたからこそ21世紀にまで生き残ったはずなのである。確かに欠陥は残っていても、我々が真っ只中に置かれることになった門番システムは、決して諸君を破壊したり崩壊させたりすることは望んでいない。
書棚2
(大昔、無理して買った森鴎外の個人全集)

 今日は1月29日。今年の受験生は、いよいよ私立大学入試の本番になる。1ヶ月にわたる長い戦いであるが、以上のような認識で入試に出かけることが望ましい。ヘビだらけムシだらけの門番丘陵での耐え難い困難辛苦なのではない。門をくぐらせてもらうために、耐え忍ばなければならない屈辱の日々でもない。
 今日の試験も明日の試験も、「大志を居抱け」と教えられて居抱いた大志を実現するための本質的な戦いの一部分なのである。枝葉末節の行き止まりで悪戦苦闘するのではなくて、この垣根なり岩なりを一跳躍して合格してみせるたびごとに、諸君は大志の実現に向かって大きく向上するのである。
 第4志望も大きな跳躍だし、第3志望もまた大きな跳躍である。だから、そういう意味でこそ、全ての受験会場で全力を尽くすこと。「いいか、手を抜いちゃダメだ」という忠告は、「ウリボー君、せっかく跳躍する大チャンスなのに、ここで手を抜くようでは『大志』とやらも怪しいものですね」という暖かい励ましなのである。
向上心2
(ニャゴだって、どんどん登っていく)

 高2生で「さて、そろそろ本格的に受験勉強を始めようかな」と考えている諸君は、ぜひこのシリーズをもう1度最初から読み返して(Mon 101227から。1週間分ぐらいですね)、受験勉強の本質を理解し直すべきだ。「この環境、ズルいですぅ」とか「第1志望はゆずれない」「合格するのはいつものキミだ」「フリースタイル!! 映像もナマ授業も自由自在」とか、そんな幼稚で軽薄なことでは、どうせ大したことにはならない。
 そんなことでは、せっかく一生の財産にもなりうる大学受験勉強が、たった1年限りで消えてしまう程度のものになってしまう。合格してガッツポーズをとった途端に、一切の夢も大志も見失ってしまう程度の無意味なもの、要するに5月病製造機に堕してしまうのだ。

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