Mon 101227 大志を阻む門番たち 青年の苛立ちこそが、門番の快感 門番とどう戦うか | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 101227 大志を阻む門番たち 青年の苛立ちこそが、門番の快感 門番とどう戦うか

 来年の受験生諸君に、一言どうしても言っておきたいことがある。来年の受験生とは、現高2生と、+「捲土重来」をすでに誓ってしまった浪人覚悟の諸君とである。いや、受験生だけではない。すでに大学受験を軽々と通過してしまった諸君にも、さあこれからシューカツだと暗澹たる気持ちになっている諸君にも、同じように読んでいただきたい。
 世の中には、どんな場所にもイヤらしい門番が控えている。英語で言えばgatekeeperまたはdoorkeeper。彼らは常にたいへん狡猾であって、滅多なことでは諸君の通行を許さない。通行を許さないことこそが彼らの仕事であり、彼らの利得の根源が、その狡猾さに存在するからである。
 三途の川にさえ、ダツイババという門番が存在する。脱衣婆ではなくて奪衣婆である。婆サマが脱衣♡してどうすんだ? 死者の衣を奪うから奪衣婆。衣なんか着せておくと、閻魔様の前でまたまた隠し事をしかねないから、三途の川を渡してあげる条件として、死者の衣を奪って丸裸にしてしまうのだ。京都の建仁寺に奪衣婆の像があるから、修学旅行or卒業旅行の時にでも見学しておくといい。
オイスター1
(1月20日、恵比寿でまたジンギスカンを食べました。ジンギスカンのあと、オイスターバーにも行きました。食って食って食いまくると、自信も元気も蘇ってきます)

 10年前に大流行した映画「マトリックス」の続編「リローデッド」を見たことがあるだろうか。キアヌ・リーブズがエージェント・スミスと延々と戦いを繰り広げるヤツである。完結編「リボリューションズ」は「あれま、こりゃ大失敗ですね」だったが、今井今右衛門としては「リローデッド」はオススメ。人類を救う救世主のような存在の前にも、邪悪で低俗なgatekeeperが必ず立ちはだかるものである。
 「リローデッド」は、救世主とgatekeeperの戦いに終始する。人類を救わなければならない救世主が、低俗きわまりないフランス人gatekeeperに前進を阻まれる、その苛立ちが映画のテーマ。低俗でありながら、gatekeeperの実力は決して侮れないものである。門を開けるための鍵を作ってくれるkeymakerとともに、主人公はgatekeeperの追跡を逃れ、1時間近くにわたって圧巻&荒唐無稽なカーチェイスが続く。
オイスター2
(オイスターバーの看板。ま、可愛くないこともないね)

 諸君。そんなクダラン大昔の娯楽映画の話なんかしているヒマはないのかもしれない。しかし今井君が言いたいのは、「門番は、低俗だからこそ手ゴワイいよ」ということである。諸君がいだく夢/大志/理想、どう呼んでも構わないが、その種のものが高潔で高邁であればあるほど、その前に立ちはだかる門番の要求は甚だしく低俗に見える。
 正面から立ち向かおうと思うほどの巨大な障害なら戦うカイがあるが、門番との戦いには、大志と次元も方向性も全く別のものなので「全力で戦おう」という気力が湧いてくれないのだ。そこが彼ら門番の狡猾さ。諸君が本気になれないこと、全力を尽くす気持ちにないこと、そこに彼らは付け入ってくる。
うさぎさん1
(恵比寿ガーデンプレイスで見た、ウサギさんたちの会議 1)

 まさか「マトリックス・リローデッド」を観て、制作者の若い頃の苦労を感じ取ったヒトはいないだろうが、今井クマ蔵は最初にこの映画を観たとき(自室のパソコンで観たのだが)、制作者の修業時代の辛酸を思い切り感じて、おなじみ「号泣が止まらない」をやってしまったのである。
「ははあ、この映画の制作者は、修業時代に門番たちに痛めつけられたな」
「映画学校への入学さえ拒まれたな」
「試作映画を散々にけなされて、バカにされて、『ああ、キミには才能が決定的に欠如しているね。夢も憧れも大切だが、そろそろ平凡な人生を考える時期かもしれないね』とか、まあその種のことを言われまくったな」
今井君は、映画のワンシーンをチラ見しただけで映画のタイトルが言えるほどに記憶力がいいが、同様にチラ見しただけで、制作者の少年時代や青年時代の苦い経験&辛酸の具体例がいくらでも浮かんでくる、そういう特殊能力の持ち主でもある。
うさぎさん2
(恵比寿ガーデンプレイスで見た、ウサギさんたちの会議 2)

 映画では、モーフィアスとトリニティが日本人keymakerを助け、低俗な追跡者たちを振り切るためにハイウェイを逆走&爆走する。地球と人類を破滅の運命から救うという、大志と夢と使命のための大爆走である。爆走は、超有名古文講師だけとは限らないのだ。
 しかし、強力なgatekeeperたちが彼らを追いつめる。何故追いつめるのかと言えば、別にモーフィアスたちの夢や大志や使命を阻止するためではない。門番の特徴は、相手の夢にも大志にも一切の関心を持たないことである。この映画の場合は、単に「大志と使命感をジャマされて高まっていく主人公たちの苛立ちを楽しむこと」がgatekeeperのレゾンデートルである。
 つまり、人類が破滅しようが、マシーンたちに地球が乗っ取られようが、その類いのことはどうでもいい。相手の苛立ちを楽しみ、苛立ちを舐め回し、苛立ちを栄養源に生きている。若い諸君にはまだわからないかも知れないが、実はそういう存在との戦いこそ、人間の普遍的な戦いなのだ。
うさぎさん3
(恵比寿ガーデンプレイスで見た、ウサギさんたちの会議 3)

 「キミには才能のカケラもないね。別の道はいくらでもあるんじゃないの?」と言い放つ映画学校の講師。「あなたの小説、一応読みましたが。うーん、最初の3~4行で『こりゃ売れないな』と誰でも感じるんじゃないですかね」と笑う出版社の営業担当。まあ、そんなのは珍しい話ではない。会社だって、大学だって、「自分と仲良くしないと、出世は望めませんよ」とほのめかしてハラスメント行為に及ぶオカタはいくらでもいる。今井君が、この人生すべてをかけても絶対に許せないと思うgatekeeperたちが、彼ら彼女らである。(明日に続く)

1E(Cd) Jandó:MOZART/COMPLETE PIANO CONCERTOS vol.11
2E(Cd) Eschenbach:MOZART/DIE KLAVIERSONATEN 1/5
3E(Cd) Eschenbach:MOZART/DIE KLAVIERSONATEN 2/5
4E(Cd) Eschenbach:MOZART/DIE KLAVIERSONATEN 3/5
5E(Cd) Eschenbach:MOZART/DIE KLAVIERSONATEN 4/5
total m103 y1846 d5945