Sun 101114 手術後、右眼の奥に気泡がプルプルしているということ 飛行機に乗れない | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 101114 手術後、右眼の奥に気泡がプルプルしているということ 飛行機に乗れない

 昨日書いた重く暗い不安感のうち、残り1つがいつまでも大きな問題として残っていた。ただし「メスによる手術で切開し、そのあと糸で縫ったんだから当然『抜糸』があるはずだ」などというのは、ある程度の専門知識のあるヒトにとっては、「バカバカしいにもホドがある」という類いの恐怖だったらしい。笑われることも少なくなかった。「何だ、そんなこと心配してたんですか。そんなの『溶ける糸』に決まっているじゃないですか」で、専門家には済まされてしまったのである。
 しかし、もう一つの不安の方は、なかなか解決されなかった。笑うヒトもいなかったし、笑うどころか、真剣に相談にのってもらって、やがてその相談は深刻な人生相談みたいになっていったりした。ここでもう1度、「第2の不安」と名付けたものを振り返っておく。
(不安その2)眼の中にガスを注入したからには、飛行機に乗るのはたいへんな苦痛だろう
 まず眼球というものを、少し大きめのピンポン球か、あんまり長細くない鶏卵だと考えてみたまえ。人間の肉体はたいへん脆いものなので、海老蔵どんみたいに強烈に殴られたり、今井クマ蔵どんみたいに土壁に向かって猛ダッシュして激突したりすれば、このピンポン球なり鶏卵なりには大きなダメージが発生する。ピンポン球の内側に貼り付いた薄膜がペロペロ剥がれたりするのである。それが網膜剥離で、放置すれば確実に失明につながる。
仲良し1
(写真で見るとホントに仲がよさそうだ)

 そこで11月の今井君は、日本医科大学病院に緊急入院して緊急手術という大いに仰々しい次第になった。眼球をレンズのところで切り抜いて、内側から薄膜をピンポン球に貼付ける手術を教授にお任せしたのである。
 しかし、ピンポン球の内側の薄膜は、接着剤で1回貼り付けたからと言って、素直にピッタリ貼り付いたり、大人しく定着してくれたりはしない。手術後も何らかの力で内側から圧迫し続けないと、またまたペロペロ剥がれてくる。
 そのために、ピンポン球の中に一定量のガスを注入する。それが手術の仕上げなので、膨張性の強いガスをポンプみたいなもので注入してから、眼球を縫って固定する。ガスはボイル・シャルルの法則か何かに従って網膜を眼球の内側から圧迫し続け、それが網膜の定着を早めるのである。ガスがずっと網膜を圧迫するように、患者は「1週間うつぶせ寝」という拷問のようなローテクで医師に協力しなければならない。
ママとこども
(時にはママと子ネコのように見えることもある)

 膨張性のガスは時間の経過とともに次第に体外に放出され、最終的には全て消える。しかしこれには時間がかかる。従って、退院後の患者には常にこのガスが見えている。ピンポン球の中に、半透明のスーパーボールかビー玉が入っているようなものである。手術直後の今井君が「水レンズを通して見るようだ」「夏休みのプールの底に潜ってボンヤリ校舎や空や仲間たちを眺めているような感覚だ」と書いたのは、実はこのガスを通して外界を見ていたからである。
 手術から1週間して「いよいよ退院」という晴れがましい日にも、ガスはまだタップリ眼球内に残っていて、右眼の視野の半分を覆っていた。だから、退院ではあるけれども、右眼の視力はほとんど回復しておらず、ピンポン球の中のスーパーボールの外縁がちょうど右眼の焦点のところにあって、ものを見にくいことこの上ないという状態であった。11月20日、船橋で講演会の時、今井君がずっと右眼をつぶっていたのはそのせいである。
仲良し2
(仲よし、ver.2)

 その後ガスのボールは順調に小さくなり続けて、スーパーボールからビー玉にまで縮小し、右眼の視野の下側に貼り付いている。「ガスは軽いんだから、眼球の中で上へ上へと上昇するはずだ。何で下に貼り付くの?」という疑問を持つのは、頭の中が完全に文系だという証拠である。眼球の中に見えるものはすべて上下逆になるから、上にあるはずのガスのボールは下にピッタリ貼り付いて見えるのである。
 残ったガスを立体として認識すること、つまり球やボールとして認識することは、今井君みたいな超文系人間には困難であるから、オハジキかコンタクトレンズが眼の中でプルプル震えているという状態に見える。特殊なガスなので、光の屈折の仕方が空気と微妙に違うのだろう、オハジキの周囲は黒く見え、内側に向かって黒から紫、紫から無色へと、なかなか美しいグラデーションを作る。
 しかも、このオハジキないしコンタクトレンズは実際には気泡なのであるから、頭を揺すったり、ちょっと運動したりすると、気泡はいくつにも分かれて細かいバブルの集団に変わる。
さなぎ
(さなぎ)

 だから、例えば朝起きて歯を磨くと、ハミガキという行動は1つの気泡を多数のバブルに分けるのにはもってこいの振動を伴い、要するにシェイクしたみたいになって、いわば眼球の中にキャビアを1サジ入れてかき混ぜたような、たいへん困った状態になる。キャビアなら贅沢でいいが、スジコとかイクラみたいなものが常に眼の中でユラユラしているのは不気味なものである。
 こうして、なかなか問題は解決しない。特に「飛行機に乗ったらたいへんなことになる」という危機を内包しているのであるが、そのことについては明日の記事で詳述しようと考える。

1E(Cd) Brian Mcknight:BACK AT ONE
2E(Cd) Norah Jones:COME AWAY WITH ME
3E(Cd) Gregory Hines:GREGORY HINES
4E(Cd) Myrra:MYRRA
5E(Cd) Hayley Westenra:PURE
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