Sun 101031 なお・ウワバミの速攻闘病記 手術は見事に成功&大感謝 22世紀的視点 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 101031 なお・ウワバミの速攻闘病記 手術は見事に成功&大感謝 22世紀的視点

 「外科手術で一気に」という8日早朝の決意から、まさに急転直下であった。ここからの1時間ほど苦痛にぐっと耐えれば、危機は乗り越えられる。「肉体を修理工場に任せたのだ」と覚悟を決めて、無心で耐えればいいだけのことである。
 麻酔は、15年前と同じ局部麻酔。外見だけは剛毅なクマの感じだから、医師としても大丈夫と判断するのだろうが、周囲の音は麻酔後もすべて聞こえる。医師の呼吸も、スタッフが緊張している様子も、医療機器が刻む単調な音も、麻酔の冷たい液体感覚も、眼球に触れる金属の刃の感触も、血液を吸引するチューブの引力も、すべて鮮やかに生々しく感じられるのである。
 麻酔が足りなかったらしく、すぐに麻酔が増量された。教授は「トクマ」と言った。特別のトクと麻酔のマだろう。しかしそれでも苦痛がないことはない。「力を入れるな」と言われて入らない力はないし、「眼をキョロキョロ動かすな」と言われて動かない眼球などないのである。手術時間は40分から1時間と予告されていた。
花とクマ
(手術は大成功。翌日は「花とクマ」の写真を撮る余裕も出来た)

 そこから先の描写については、余りにグロテスクだから、ブログ上も差し控えることにする。英語ではGROSS!!と言う。ムキムキの中年男を目撃して、女子高生なり女子中学生なりの集団が一斉に叫ぶのが、GROSS!! 「キモい」「ちょーキモいんじゃね?」の類い、最近はもっと短縮して「キメーんだよ」「ちょキメぐね?」がGROSSの日本語訳にピッタリだ。
 感覚としては「時計じかけのオレンジ」を参照すればわかる。医師を目指している人は、眼球の代わりにマスカットの薄い皮をカッターでスーッと切り開いてみたまえ。ブドウの皮の向こうから滲みだす果汁が血液に該当する。もしそれだけでGROSS!!と叫びたくなったら、医師になるにはまだまだ度胸が不足している。
 トム・クルーズの「MINORITY REPORT」でもいい。未完成の殺人予知システムに翻弄されるトム・クルーズが、警察の追跡を逃れるために、眼球を他人のものと取り替えるヤミの手術を受ける。ふと取り落とした眼球がゴロゴロ床を転がったりする。おお、GROSSである。もっとも、この映画は全編にシューベルト交響曲8番「未完成」が流れ、殺人予知システムが未完成であることを暗示するのが何だか情けない。
夕暮れ
(手術が終わって病室に戻る。すでに夕暮れが近づいていた)

 「時計じかけのオレンジ」や「MINORITY REPORT」を例に出せば、誤解を伴う変な印象を与えかねないので、慌てて付け加えておかなければならないが、手術は最初から終わりまで極めてスムーズに、何の遅滞もなく、苦痛もまあ鈍感クマどんなら耐えられる程度のもので、「素晴らしかった」の一言に尽きる。
 予定は1時間だったが、終わってみると1時間半近くが経過している。教授としても、再発の可能性を徹底的に押さえ込むために、ごく丁寧な手術を心がけてくれたのである。最後に、昨日の記事に添付した写真のデカイ眼帯をペタリと貼付けられた時、若い医局員たちが感動した声で「嵐のようでしたね」「何だかんだ言って、スムーズでしたよね」と囁き合い、感動のつぶやきを交わすのを耳にした。
 もちろん、手術の苦痛に耐えたばかりの患者が青息吐息で横たわっている、その鼻の先でそんな呟きや囁きを交わすあたりに、医局員の気持ちの緩みや油断を感じないこともないが、日本という国は例え国務大臣でも「遺憾でございます、誤解を与えたとしたら反省します」と言えば無罪放免にしてもらえる優しい国であるから、そんなことをいちいち咎めるとしたら、咎める方が頑固すぎるのだ。
抗生物質
(夕方から、抗生物質の投与が始まった)

 この病気の権威である教授の執刀でこの手術が受けられたことも、実はたいへんな幸運だったのである。翌日の水曜日から眼科の大きな学会があって、教授を始め眼科の主だった医師たちは病院を2~3日留守にするスケジュールになっていたのだ。今井君の決意があと1日遅れていたら、いや、あと3~4時間遅れていたら、こんなVIP扱いの手際良い手術は望むべくもなかった。21世紀初頭の最高の技術で、クマどんは肉体をしっかり修理してもらえた。感謝♡感謝♠感謝である。
 ただ、もし22世紀♡23世紀的視点で眺めたら、今日の手術にもまだまだいろいろ注文がつくはずだ。その事情は、我々が18世紀や19世紀の医療を映画やドラマで見る感覚を思い出せばわかる。18日の朝日新聞夕刊で「日本医大病院で多剤耐性菌検出」の記事を発見してビックリ、それはちょうどクマどんが入院していた数日間のことである。改善の余地はどこまでもなくならないのである。
多剤耐性菌
(多剤耐性菌検出を伝える朝日新聞夕刊。11月18日)

 病室に戻る車椅子に乗せられながら、いま医学部を目指して猛勉強中の諸君に「今の努力を遥かに上回る努力を一生継続しなければならないのだ」「22世紀的視点を忘れないで努力を続けてほしいのだ」と、相変わらず教師独特の熱誠指導を始めたくなる今井君であった。おお、すっかり元気が戻ってきたのである。

1E(Cd) Midori & McDonald:ELGAR & FRANCK/VIOLIN SONATAS
2E(Cd) 芥川也寸志&東京交響楽団:エローラ交響曲など
3E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 1/9
4E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 2/9
5E(Cd) Madredeus:ANTOLOGIA
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