Wed 101027 又・ウワバミの速攻闘病記 吉野眼科クリニック 紹介状を書いてもらう | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 101027 又・ウワバミの速攻闘病記 吉野眼科クリニック 紹介状を書いてもらう

 ただし(スミマセン、昨日の続きでございます)、いざ行動を起こす、一気に外科手術にもっていって状況の打開をはかる、そういう乱暴なことを言っても、いきなり大学病院の外来受付に並ぶというのは、さすがに愚直すぎるのである。
 大学病院の長蛇の列に並んで、その間にも網膜がだんだん剥がれ、黒い影がじわじわ拡大するのを実感しながら、じりじり焦りつつやがて昼を過ぎ、相手にされないまま医師たちが昼休みに入り、午後2時が近づき、「まだですか。朝から待っているんですが」「ああそうですか、もう少しお待ちください、順番に診察してますから」の押し問答になるのでは、ほとんどカフカ的悪夢である。
 事態が切迫している以上、大切なのは冷静さである。まず評判と愛想のいい個人医院を訪れて、事態の切迫について意識を共有してもらい、懇切丁寧な紹介状を書いてもらって、それを大学病院に持参する。または大学病院の個人的な知己に電話連絡してもらう。ここで思いついたのが下北沢駅前で眼科クリニックを開いている超々大昔の生徒であるが、うーん、ここで昔の生徒を頼るのはイマイチ情けないではないか。
いい病院
(オリコンメディカル「患者が決めた!! いい病院」)

 で、開いてみた本が「患者が決めた!! いい病院」(オリコン・メディカル)。患者9万人にアンケートして、病院をランキングした本であるが、「オレもアホだな」と思いながらも、いざという時のために5年だか6年だか前に購入しておいた。首都圏の眼科部門第1位に輝いているのが上野御徒町の「吉野眼科クリニック」。午前9時、朝のラッシュが終わった千代田線、代々木上原始発の電車の片隅に寂しくチョコンと座って、この病院を訪ねることにした。
いってらっしゃい1
(行ってらっしゃい。頑張ってね)

 湯島の駅で降りると、そこは古い古い歓楽街である。上野が首都圏第2のターミナルだった昭和中期のまま、時代に取り残された、いわゆるネオン街。昭和のネオン街の午前10時がどれほど寂れているか、想像してみたまえ。右眼を病んだクマさんの心象風景と、昭和のネオン街の残骸とがピタリと一致して、ふと寂しさに涙が流れそうになった。
 吉野眼科クリニックは、上野凮月堂ビルの6階である。寂れた雑居ビル、その6階は「上野コンタクトレンズ」と共用で、要するに予備校と本屋、塾と文房具屋、そういう関係である。今井君は考え方の古い人間であるから、普段ならここで躊躇する。「ええっ、雑居ビル?」である。ちょうど、生徒諸君が河合塾や駿台の立派なビルを見て信用し、雑居ビルの中の東進を眺めて躊躇するのと同じ心理である。
 しかしホントに事態が切迫しているときは、雑居ビルだろうが何だろうがそんなことは一切構わない。模試の成績が急降下した受験生にとって、ちゃんと指導してくれる予備校なら雑居ビルの中だろうと何だろうと構わないのと同じこと。むしろそういう場所にこそ頼りになるヒトが隠れていることが多い。「立派な設備」などというのは、ソフトが劣る者たちの隠れ蓑なのだ。何しろ「コンクリートから人へ(死語?)」の時代だ。
切迫した
(クマさんは、事態が切迫しているらしいよ)

 「飛蚊症が急激に悪化した。自己診断だが、網膜剥離ではないかと思う」と受付に伝えると、待ち時間ほとんどゼロで「第2診察室」に通された。「常連らしい患者さんたちを後回しにしてでも」という、クリニックの熱意と親切を実感、さすが「患者が選んだランキングNo.1」。クリニックの壁にも本のページが拡大コピーで掲示されていた。
 「服部」という名札を下げたヒゲの先生が、すぐに眼底を検査して「ああ、ここか!!」と呟いた。40歳ぐらいの小柄な男性である。「ああ、ここか!!」とは、要するに「ここ」が大きく剥離しているという感動の叫びなのだ。
「事態はよくありません。急を要します。手術しか方法はありませんが、とにかくすぐに大学病院に行かなければなりません」
その言葉に、今井君はむしろホッとしたのである。もともと「外科手術で、一気に状況を打開する」という方針で出かけてきたのだ。自分の肉体が激しく損傷したなら、肉体を修理工場に完全に預けて、完璧な形で修理して新しく生まれ変わればいい。確かに、肉体全体も疲労している。ピットインしてリセットということである。
いってらっしゃい2
(そうですか。私はゆっくり寝て待ってます)

「どこか、お望みの大学病院がありますか? すぐに連絡をとって、紹介状を書きますが」
服部先生の対応は機敏である。今井君の意図と気持ちをしっかり理解してくれている。やっぱり、患者の気持ちをよく理解してくれる優れた医師は、こういう小さなクリニックにいるのだ。
 まずお茶の水の日大病院に連絡してくれた。「網膜剥離の手術で定評のある」ということなら、日大病院なのだという。ところが、ここはベッドが満員でアウト。次に当たっていただいたのが文京区千駄木の日本医科大学付属病院。10分ほどジリジリする気持ちで待って、とうとうOKが出た。ホントに大粒の涙が流れ落ちるほど感謝して、繰り返し繰り返し礼を述べ、深く深くお辞儀をして、紹介状を受け取った。